第29話 水の塔の探索

「あ!腕や胸元 怪我したの!ファリ!」レーヴは顔色を変えて 慌てて言う 

「ああ かすり傷だよ」俺は肩をすくめる


「手当てするから・・え・・血と水・・


腕の怪我から 水・・が混ざってる?これ体液なのかい?」

レーヴは手当用の簡易医療キットで

テキパキと傷口を消毒して包帯を巻く


「・・・俺達の種族は腕の部分に小さいけど 

ラクダみたいな水分をためる袋がついてる 砂漠に適応したんだろう」

手当てをうけながら 俺は答えた


「天空人に似た俺の祖母や妹は 分からないけど・・」

心配そうに見てるレーヴ


「大丈夫?」


「ああ大丈夫・・有難うな レーヴ」と俺


「ファリ 休憩した方がいいんじゃないかい?」と心配そうなレーヴ


「いや日暮れ前には目的地に到着しないと・・ レーヴは大丈夫かい?」

「僕は大丈夫」 


「そうか・・じゃあ行こうか!」

俺は笑って言った


幸い その他のモンスターやら 敵方の部族に出会うことなく

洞窟から潜り 奥にある地下遺跡の都市に向かう


小さな穴から 滑り込むように 洞窟に潜り込む

レーヴは 腕に取り付けたライトで 廻りを明るく照らす


奥に進むに従い 道幅は広くなり 円筒にくり貫かれた

地下道を進む


壁面にはレリーフが彫られて 古代の大昔の様相が見てとれた

水浴びをしている人間に 動物達

動物達の多数は 見たこともない生き物達だった


それから・・・花という植物


「これは 何の植物だろう?」

「多分 向日葵(ひまわり)じゃないかな? 花びらは黄色で中心は茶色

種類にもよるけど 大きくて 群生は見事なものだよ」

「こっちは?」

「多分 桜かアーモンドの花だと思う・・色がついていたら

分かるかな・・桜は淡いピンクで アーモンドは白いから


多分だけど


ここの環境からすると 

アーモンドの可能性が高い 原産は地球 砂漠に近い場所だから」とレーヴは

じっとレリーフを見ながら 俺に告げた


「こっちは オリーブの実みたい・・あ・・パイナップルの実

こっちは バナナだ!」


「聴いた事のない 植物の名前だ」


「そうかい?ファリ・・水が蘇ったら これらの植物も生き返るからね」

レーヴは 優しい目をして微笑んだ


「ん~そろそろ・・喉が渇かないかい?ファリ」


「俺は 身体に水袋がある種族だから まだ大丈夫だ

飲めよレーヴ」

俺は水筒をレーヴに手渡す


「・・一休みして 昼ご飯は?」とレーヴは言う


「・・・疲れたのか? いや俺を心配してるのか

大丈夫だよ・・。」

心配そうにレーヴはじっと見てる


「怪我のせいで 少し顔色が悪いよ・・そろそろ休憩した方がいい」


「了解した・・一休みして 昼飯を食べるか」

俺はレーヴに笑いかけた


昼ごはんの弁当は 干した砂魚サマクに

妹がコケのトリブルの実で作ってくれた甘いゼリーや

家畜の鳥のペースト


蒸してミルクで煮込んだサボテンのサツバール


それに こっちはレーヴが作ったチキンのサンドウッチ

ミートパイ


トマトという赤い実を使った暖かいスープ

様々な具財が入っている


スープは保温高効果のある小さな水筒のような容器に入れられていた

カップに入れられ、それを飲む


「この前の紅茶やコーヒーに

それから甘いココアも上手かったが・・これも上手い」

「レーヴは 料理が上手いな 妹が料理を習いたがっていたよ


ああ・・俺達の星では こんなに沢山の具財は手には入らないけど

何か参考にして 応用なら出来そうだ


そうだな

例えば・・


ミルクを使った料理

ホワイト・シチューとかなら 

こっちにもミルクの出るデアンカがいるから それに ミルクから作るチーズもいいな」


それから・・

ラズベリーとかいう甘いジュースを口に含んだ後で

俺は うとうとして つい寝入ってしまった・・


「ファリ? 寝てるの? うん寝てる・・。」


「すやすやと寝てると・・なんか可愛い・・子供の顔だよね・・

目つきはキツイけど・・どちらかと言えば童顔だから」

クスクスと笑うレーヴ


簡易タイプの小さな毛布をファリの身体に乗せる


「この簡易タイプの毛布 ファリの妹さんのリリーシュが作ったんだけど

綺麗な文様が織り込まれてて素敵だ

僕の分も今度 お願いしてみようか・・ふふ」


「小一時間したら起こすからね ファリ・・お休み」


まさか 自分が レーヴの守役か保護者のつもりだったファリだったが

(可愛い!)などと言われたと知れば・・微妙に気分を悪くしたかも知れない

うたた寝ているファリには知りようもなく


小一時間後 レーヴに起こされるのであった

「なかなか起きないから心配したよファリ」


こんな場所で

護衛の守役の自分が 油断して うたた寝してしまったなどと

戦士である自分が・・自分が信じられないファリは少々落ち込みながら

レーヴと一緒に歩いている


チラリとレーヴを見るファリ 


俺はきっと間抜けな顔をして レーヴの前で

寝てたんだろうか?と悩む


案外 そんなファリの気持ちは レーヴには 筒抜けで

拗ねた子供のような表情に なんとはなしに頬が赤いファリは 

きっと照れて拗ねてるのだろうな・・とも

思うレーヴ


ここは やはり そ知らぬ顔で いつも通り振舞うのが得策だろうと

考えるレーヴ


「ここは本当に水が一滴もないだね」と呟くレーヴ

「・・・・」


しばらくは黙っていたファリだったが

やがて口を開く


「ここは水がないから 東の地下都市遺跡と違って

ドラゴみたいな他の巨大なモンスターがいない分 来る分は楽な方だ

もちろん 長期の探索には こちらは水を持参しての話だけど・・」

ファリは 肩をすくめる


「水の豊富な東の水の塔やその付近に植物や生き物が群がっているから」

レーヴは 二人で 歩きながらファリの話をじっと聞いている


遺跡には無数の地上と地下を結ぶ小さな穴が開いていた


それは通気の為の換気と光を招きいれる為のものであり

遺跡の中を 所々照らしていた


やがて大きく道が開き 巨大な空洞が目の前にある

空洞には 大小の建物が沢山 あった


「こんな大きな建物は見たことがない」俺は呟く


建物の間には 規則正しく 線を思わせる窪みが無数にある


「多分 これは 地下水路かな? 本来なら川みたいに

ここを水が流れてるはずなんだ」


「記録でも 君達の村の伝承でも

西の塔は 崩れて壊れてると聴いていたけど ちゃんと形が整って残っている・・。」

レーヴは 地下遺跡を見渡しながら 驚き 俺に告げた


中心部分には 更に大きな円形の窪みがあって

中心には 巨大な建物があった


「あ・・ここかい?これが 水の塔だね

確かに水は枯れてるけど・・ん?あれ! 


ここのラインの動力が生きてる?」レーヴは驚き叫んだ


「それに 地軸の変動で 崩れたと記録にあったけど

他の連動している装置も無事だ!」


水の塔近くの大きな金属状の紐が淡く光ってる処を指差し

その紐を手の平ほどの小型の機械でモニターする


「ひょっとした まだ 生きてるかも!」


レーヴは水の塔の扉を開けて 階段を駆け上がる


「ここが動力室」彼は扉を開く


部屋の中は 荒れて塵がつもり 装置の幾つかは壊れていたが


「ここは今の僕でも応急処置で修理可能みたいだ 問題はメインの動力装置」

レーヴは中央の祭壇のような箇所に足を踏み入れる

「やっぱり 1個以外の 装置の核のジュエルが外れてるあと5個必要なんだ」


レーヴはブツブツ言いながら

自分のリュックから 装置に組み込まれた青い縦長の宝石と同じものを取り出した


「これをセットして・・それから」彼は手馴れた仕草で 

装置に青い宝石を組み込む


それから

レーヴは 縦長の黒い箱 通信装置を取り出した


「父さん そっちは?そっちの状況は?」

途切れがちの雑音ノイズの入った声が響く


「砂の渦がひどくて 移動が難しい 一旦引き上げる

南の水の塔の機械が生きているなら 南半球はテラ・ホーミング計画 

惑星改造計画が進むがね」ため息まじりの声がする


「父さん 記録から判断して 望み薄だと思っていたけど こっちは生きてたよ!

西の塔の規模は 南や東の塔に比べて小規模だけど こちらは進めるよ!」


「なんだと!これは先を越されたか・・しかし何たる幸運!よし!頑張ってくれ!」

「了解!父さん」


「ふふ・・見てて こちらの水の塔から始めるね 惑星改造の第二段階・・」

「それから・・それから」

わくわくとはしゃぐレーヴを きょっとんとして俺は見ていた


「何をはしゃいでるんだ?レーヴ」


「先人達 つまり君と僕らの先祖達の夢の続きさ」

彼レーヴは笑う


「一度は この惑星改造計画は 第二段階まで進んだんだ!」

レーヴは興奮して叫んだ


「ナツメヤシを食べたことある? ファリ?

あれは砂漠の食べ物さ 

それからイチジクに葡萄 オレンジに苺(いちご)もいい」


「トウモロコシだろう それからトマト・・バナナにパイナップル

そうだ 麦!小麦粉!パンとかケーキも作れるようになる」


「君が好きだって言った 飲み物の種だってある

コーヒー豆にココアの原料 カカオも!」


「ああ・・僕らの船に保存しているけど 

食べ物とかは・・

これから君達の惑星でも飽きるほど食べれるから 

それらの種(シード)が入ってる」

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