第45話:世界間格差

「配祀神様、身勝手は重々承知しておりますが、どうしてもお聞き届け願いたいことがございます」


 俺の異世界妻になっている巫女頭のライラが畏まって願い出てきた。

 その後ろには全巫女と氏子衆の重鎮が神妙な顔で控えている。

 さっき中古の毛布やタオルケットを見てもらった時の言動と態度で、なんとなく何を言いたのか分かってしまったが、こちらから言って違ったら困る。

 ちゃんと聞いた方がいいと思うので、お願いを聞いてみた。


「何なりと申し出るがよい」


 偉そうな態度をとる自分に嫌悪感が湧きでる。

 だがこれは今後の事を考えると仕方がない事だ。

 元々の氏子衆には俺の弱い所を見られているが、新たに集まった奴隷希望者には、女神と俺が本当の神だと思わせなければいけない。


 いや、まあ、女神は本当の神だし、俺も多くの配祀神から力を分け与えられているから、神と言ってもおかしくはないのだ。

 だが、氏子衆に言わせれば、もっと尊大な態度を取らないと神らしくないという。

 奴隷希望者たちの中にいるスパイから、それぞれの主人にこの村には神が味方に付いていると伝えさせることで、余計な争いを防ぐことができれば一番なのだ。


「はい、配祀神様が奴隷希望者達に与えると言われた毛布や綿布は、我ら氏子衆が使っている毛布や綿布よりも品質が良くとても高価な物です。

 いや、古着も我ら氏子衆が使っている物よりも品質が良くとても高価な物です。

 それどころかこの世界にない物も数多く含まれております。

 何卒最初に我らに賜りますように伏して願い奉ります。

 その代わりと言っては何ですが、我ら氏子衆が使っている寝具と衣服を奴隷希望者達に与えさせていただきます」


 俺の予想通りの言葉だったので正直安心した。

 確かに古毛布、特に二重毛布はこの世界では最高級品と言っていい。

 服に関しても、俺にはファションの事は全く分からないが、色といい素材といい、この世界の女性でもおしゃれに関心があるなら垂涎の品だろう。

 防寒用のジャケットやフリースなんて、これからの季節に向けてどうしても欲しい気持ちになって当然だ。


「分かった、俺が持ち込んだ物は全部一度氏子衆が選んだ後で、不要と思った物を奴隷希望者に与えてくれて構わない。

 ただし、奴隷希望者に上下の衣服と寝具が必ず行き渡るようにしてくれ。

 奴隷希望者だけでなく、村外新集落も者達にもだ」


「「「「「はい」」」」」


 全員が満面の笑みを浮かべて嬉しそうに返事をしている。

 俺は境内にブルーシートを何枚も敷いて、その上に山のように古着とリサイクルウエスを積み上げたのだが、女性達が歓声をあげて殺到した。

 色鮮やかな古着に殺到するのは分かったが、何故か下着にも殺到していた。

 男性用女性用関係なく、絹製品の争奪戦が勃発していた。

 絹製の下着がそんなに欲しモノなのだろうか。

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