30.愛憎のファルス ナツキさん作

 ナツキさん作 【愛憎のファルス】


 まず、最初に書いておくが「文字数の差」があり過ぎる作品だ。

 1話は4000字、ここはまぁ許容範囲なんだが、2話目が9000字を越えてる。この企画的に「各レビューは10000字以内で、そうじゃない場合はキリの良い数字まで読みます」という前置きをしていたので、まずここでレビューする側としては「長いな」という感想が出て来る。


 レビュー以外でも連載のWEB小説のページは大体2000~3000字くらい、長くても5000字くらいだと思うので、9000字というのはちょっと長すぎる気がした。だがさすがに1話目だけ見ても話の筋なんて掴めないので、今回は2話まで見たので13000字と結構オーバーしている。

 空欄が多い事もあり文字数の計算は困難と判断し、申し訳ないが今回はこのような中途半端な方式を取らせて貰う。


 以上を踏まえてレビューの感想としては「掴みは良い」という感想がまず出て来る。見知らぬ場所に掴まっている少女、謎のスープ、どことなくクトゥルフめいた話に人工的かそうじゃないか、どちらにせよ異質な怪物に翻弄されてグロテスクな世界観……4000字ほどで表現される掴み自体はとても自分好みだった。

 ただ情景や世界観の説明に力を入れてるのか、先ほど言った2話のほとんどが【説明】で終わっていた事は少し勿体ないと感じている。しかもその説明も少し飛ばし飛ばしでやっているせいか、場面転換がその9000字の間で何度も入る。

 シモンというボス的な扱いの男の説明、神獣に関してなど、一発で覚えられないような項目が何行も説明として入るため、2話目のテンポに関してはハッキリ書いてしまうと段取りが悪く見える。ここでは「自然と覚えて貰う手段」を取った方が良いのではと思った。


「例えばキャラクターの台詞にする時に、何行も使うのは避ける。短くコンパクトにまとめる説明が台詞で出て来ると、読者にとっては覚えやすいと思う」


 読者は「先に進む事」に快感を覚えるものだ。一歩進む度に看板があっても読みたくはないと個人的には考えてしまう。小説を書く時に、もし何か説明が必要ならそれは「最小限」かつ「自然な流れ」にした方がいい。作者的には「面倒」と感じるだろうが、読者目線に立つと「一気に詰め込み過ぎ」という感想が出て来る。

 過去の回想を何度も挟むような、「このキャラがここに来る前にこういう事がありました」という説明のやり方は自分的にオススメ出来ない。


 それと漢字の誤用(「徐に」は「徐々に」と同じ意味であり、よく見る「突然」と同じ意味ではない)も少しあるので、小説的によく見るものでも日常会話であまり使わないものの場合、一度調べてみることをお勧めする。


 総評に入るが先ほども書いた通り、グロテスクな世界観を表現する掴み自体はとてもいいと思える。それだけに2話目でのテンポを落とすような、流れを切るような話の構成が非常にもったいないと感じた。

 俺からの感想は以上になる。


       *


「あー……終わったぁ……」

 眠い目を擦って軽く伸びをし、時刻を見れば深夜の3時を過ぎている。休みの前で、仮眠も取ったのだけれど昼夜逆転しても困るので、啓馬にメールで送った後で寝よう。明日は土曜日、しかし打ち合わせの予定がある。まだ眠くはないが、布団に入ると無理矢理眠ってしまう事にした。

 思ったより疲れていたのか、頭は冴えていると思っていたのに、すぐに俺の意識は落ちて行った。



「チェック終わったぞー、今回の企画はここで終了だな」

 啓馬が俺に笑いながらそう言ったのを見て、いつの間にか安堵していた。

「えらい時間かかったなぁ、そんなに忙しかったのか?」

「まぁ、おかげさまで」

「いい事だ」

 今まで散々遅れてきたのに啓馬は特に怒る様子も無かった。

「とりあえず、お疲れさん」

「あぁ」

「そんじゃあ……なんか食べに行くか!」

 明るく言った啓馬の言葉に、そういえば最近は一緒に飲んだり食べたりしていなかったというのを思い出した。散々世話になったはずなんだが、俺は思ったより薄情だったのか。

「そういや、最近一緒に飲みに行くこと無くなったな」

「あー? 付き合いが悪いとか言い出すつもりはないぞ? そんな事を考える暇も無かったって事だろ?」

 呆気からんと言った啓馬はやはり何も気にする様子が無く、先の方を歩き始める。こうやって遊びながらも互いに社会人だ、忙しい日だってあるし、今後も遊ぶ機会は減っていくのだろう。現に俺は友人とゲームをする機会も減った。


 夏の前触れなのか、少し歩いただけなのに暑さでついシャツの首元を引っ張った。


「また企画、誘ってくれるか?」

 先を歩いていた啓馬の隣に、早足で並んでから声を掛けた。隣の男は一瞬目を丸くし、やはり快活に歯を見せた。

「いいともー!」

「もうその番組ないだろ」


 帰りに食べたラーメンはなんとなく懐かしい味がした。

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