4-3(土)占いは戦いなのデース!
ぞろぞろと三年生のクラスがある階にやって来た。
この高校はどう言うわけか三階建ての建物で学年が上がるごとに学年の階が下がっていく。
だから三年生の教室は一階になる。
「えーと、お兄ちゃんのクラスはっと」
階段を下りて部屋二つ行った所がお兄ちゃんの教室だった。
何度も来ているから間違いは無いのだけど今日はやっぱり学園祭と言う事で教室の入り口がなんか怪しげな雰囲気になっている。
私は入り口で勧誘している人に聞いてみる。
「すみません、長澤友也の妹ですが兄はいますか?」
「ああぁ、長澤君の妹さんだね? 長澤君はさっき休憩に入って妹さんのクラスに行ったよ? すれ違いみたいだったね。あ、そう言えば君があの可愛い猫娘のメイドやってるんだよね? 後で僕も行くね!」
勧誘している人はそう言ってぐっとこぶしをにいる。
「あ、あはははは、ありがとうございます。そうですか、兄は不在ですか‥‥‥」
私は乾いた笑いをしながらお兄ちゃんがいない事に落胆する。
まあいたとしてもクラスの出し物ですぐに抜け出せるかは分からなかったけど。
「由紀恵、これなんですかデース?」
「ああリンダちゃん、これって占いだよ。いろんなのがあるみたいだね~」
「長澤先輩、僕と一緒に占いしましょうよ!」
「ふん、非科学的だが長澤の占いの結果とやらを見てやろうじゃないか?」
「新田先輩、私たちの将来について占ってもらいましょう!!」
はい、お兄ちゃん探しに行くの後回し決定。
分かっていますとも、団体行動でわがままは迷惑だものね。
私はあきらめて占いをしているこの部屋に入る。
部屋全体は暗幕をかけられていて薄暗く、壁際にいくつかのブースがある。
そして入り口を入ってすぐに案内のスタッフがパンフレットを渡してくれてどこでどんな占いをやっているか教えてくれる。
「へぇ、いろいろなのが有るんだ」
「由紀恵、あれ何ですかデース?」
パンフレットを見ながら水晶や、カード、おみくじ、インコ占い等々意外と面白そうなのがあった中、リンダはタロットカードのブースを指さす。
「あれってタロットカードじゃ無いの? ジプシーの占いのやつ」
「でもなんかちょっと違うみたいだよ~?」
「行って見るデース!!」
リンダに引きつられてその占いに行くと座っていたのは何と泉かなめだった。
「‥‥‥いらっしゃい、占う人はそこへどうぞ」
「私がやるデース!」
そう言ってリンダは泉かなめの前に座る。
そしてテーブルの上にシャッフルされたカードを置きその中から数枚をリンダに渡す。
同様に泉かなめも自分のカードを取り上げてから言い出す。
「‥‥‥深淵の闇の占いへようこそ。ここはあなた自身が運命をつかみ取る場所、未来を掴みたければこの私を倒しなさい!」
ぱんっ!
そう言いながら泉かなめは自分のカードをフィールドに叩き付ける。
「‥‥‥ドロー」
「なっ! こ、これはいきなり暗黒騎士がっ! リンダちゃん早くカードを置いて対峙しないとだめだよぉ~」
「分かったデース!」
ぱんっ!
リンダもカードを置いて山積みになっているカードの一番上を取りそれを見る。
そしてにやりと笑っているけど出しているカードはミノタウロス?
暗黒騎士より攻撃力も防御力も低いけど大丈夫なの?
「いけるデース!!」
「‥‥‥暗黒騎士に強化カード発動! ドロー!!」
泉かなめは暗黒騎士のカードに強化補正の魔法カードを並べる。
これで防御力にプラス補正が出来る。
「ふふふっ、多勢に無勢デース! もう一体ミノタウロス召喚デース!!」
ぱんっ!
「‥‥‥かかった、同一モンスターの場合呪いでどちらか一体の命を奪う暗黒魔法発動! これでまた一体のモンスターのみ」
「くっ! まさかそんな手があったとはデース!!」
こ、これはリンダに不利なのでは!?
「って、おいこら、これって占いじゃ無いの!?」
「勿論占いだよ! 『乙女召喚魔法バトル~私は幸せを掴むの!~』の最新版だよ! これに勝てば占いの的中率六十三パーセントと言われている凄いカード占いだよ~!!」
いや、知らないからそんなバトル系の占いなんてっ!!
「なかなかですね、長澤先輩。これでは次のターンの攻撃を避けられませんよ?」
「ふん、こちらも手持ちの魔法を早急に発動すればいいではないか?」
「しかし新田先輩、ドローしたカードでは‥‥‥」
って、何でみんなそんなに詳しいのよっ!?
まさか今の流行?
流行っているの!?
「しかぁ~し、ここで神聖魔法発動デース! 闇の系譜のモンスターはその数値が著しく落ちるデース!!」
「あ、リンダちゃんそれ使っちゃうと~!」
「浅はかだな、外人。ミノタウロスも闇の属性、このフィールドにいるすべてに影響の出る神聖魔法を使うとはなっ!」
「し、しまったデース!! これフィールド全部に影響あったデース!!」
どかーん!
「‥‥‥あなたの闇はまだまだの様ね。私の闇を超えられなければ未来はつかめないわ」
「も、もう一度デース!!」
なんかもう趣旨が違ってきているんじゃないの?
これって占いだよね?
カードバトルがメインじゃないよね??
「ふふふっ、そこのあなた。こちらに来て占ってみないかしら?」
私がこめかみを押さえていると私を呼ぶ声が‥‥‥
声のする方を見て私は思わずドキリとする。
頭と口元を半透明な布で隠し、大きく開いた胸元の衣装に怪しいじゃらじゃらした装飾品を身に着け水晶の前に手をかかげているいかにもと言う風な占い師、そう、高橋静恵だった!
「た、高橋先輩。どれだけおっぱいお化けなんですか?」
「なによ? 長澤君はこれ好きなのよ?」
なっ!?
お兄ちゃん、おっぱい星人だけどまさかこれガン見したり押し付けられていたりとかしていないでしょうね!?
私はキッとなって高橋静恵を睨む。
「どんな占いするか知りませんけど、おっぱいで騙されるような占いなんて当たりませんよ!」
「そう? だったら試してみる?」
「良いでしょう!」
既に売り言葉に買い言葉、私は高橋静恵の前に座るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます