手伝い

 翌日の放課後。

 ホームルームにて。


「えー、昨日言ったように文化祭の実行委員を決めたいが、立候補する者はいないか?」


 担任がクラス全体を見渡し、そう言うが誰かの手が上がることはなかった。

 まぁ、おれやる!みたいな熱血漢はいないよな。


「そうか……まぁこうなるだろうとは思ってたが、仕方ない。それじゃ、あみだくじで実行委員をきめるぞ、まずは男子からだ」


 そうして、自作のあみだくじに出席番号順に名前を書いていく。

 そして、何人かの男子がランダムで線を書き終え、それを広げていく。


「まじかよ……」


 実行委員はなんとおれ……ではなく、別の男子だった。はぁとため息をついている。

 うん、まぁがんばってくれ。

 心の中で応援しておくから。


「それじゃ、次は女子な」


 そう言って、男子同様にあみだくじを使い、実行委員を決めていった。


 こうして、男女共に実行委員が決まり、ホームルームは終わりとなり、放課後となるのだった。


「よし」


 放課後になった瞬間、おれはカバンを掴んだ。


「あ、あのさ……」


 と、そのタイミングで声をかけられる。

 声をかけてきたのは田村だった。


「ん、どうした?」


「あ、あの、実はお願いがあって……」


 少し言いづらそうにしている。

 なんだよ、トイレなら早く行けよ。

 ってそんなわけないよな。


「お願い?」


 一体なんだろうか。


「もうすぐ文化祭でしょ?で、その中で新聞部っていつも文化祭の記事を書いて、それを掲示したり配ったりするんだけど、今年は私が任されてたの」


「へー、そりゃすごい」


 前にエースだとか言ってたけど、本当だったみたいだな。


「あ、ありがとう……でもね、この前の事故でさ、部長にものすごく怒られちゃって……それで名誉挽回というか汚名返上というか、とにかく立派な記事を作りたくて。でも、私だけじゃ、各クラスの様子とかの撮影を回りきれないかなって思っててさ……」


「それでおれに手伝うってほしいってこと……?」


「うん……」


 田村はゆっくりと頷いた。


「話は分かったけど、そういうのって部外者がやっていいものなのか?」


「それは大丈夫。部長にも許可は取ってあるし、あくまで手伝う程度ならって言われてるから」


「そうか……」


 まぁ手伝う範囲がどれくらいなのか、わからないが、写真を撮るくらいでいいってことかな。


「わかったよ。でもなんでおれなんだ?他にも手伝ってくれそうな奴はいる……」


 そこまで言って、おれは口を止めた。

 あー、なるほどね。

 まぁ手伝うってもらうなら、暇なやつに声かけるのが一番だよな。

 完全に理解した。


「まぁいいや。どうせ暇だし、やるよ。と言っても、大したことはできないと思うけど」


「本当!?よかった!ありがとう!助かる!じゃあ、早速で悪いんだけど、明日一緒に部室まで来てくれないかな?」


「明日ね、了解」


 それじゃ、美香にもきちんと言っておかないとな。


「本当にありがとう!じゃあね!」


 ものすごく笑顔になりながら、田村はおれの前から去っていった。

 なんかすげー元気になったけど、そんなに嬉しいのかな……

 まぁあれか、絶対に成功させたい記事ってことだろうし、気合いも入るわな。

 おれも足を引っ張らないようにしないと。

 おれは心の中で少し気合いを入れるのだった。

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