第57話冬馬君は騎馬戦で無双する

 あれから数日が過ぎ、いよいよ体育祭の日を迎えた。


 まずは開会式にて、応援団の演舞を披露するらしい。


 チアガールは、午後の運動会に披露するようだ。


 俺は長ランに着替え、準備体操をする。


 すると……。


「冬馬君!カッコいい!」


「よう、綾。綾も可愛いぞ」


 綾もすでにチアガールの格好をし、上にジャージを着ていた。


 眩しい脚線美が、俺の目を釘付けにする……。


「は、恥ずかしいよ……」


「す、すまん!あまりに綺麗なものだったから……」


 いつ見ても綺麗で、慣れることなんかない。

 ……俺って、意外と脚フェチだったのかもな。


「ふぇっ!?え、あ、ありがとぅ……さ、触ってみる……?」


 グハッ!?な、なにぃーー!!??


「え、いや、そのだな……」


「ふふ、照れてるー」


「最近、それ好きだな」


「あっ、嫌だったかな……?」


「いんや。綾が笑顔になれるなら、俺はそれでいい」


「と、冬馬君……よし!私!気合い入れて!」


「ど、どうした?急に……」


「と、冬馬君が運動会で活躍したら……脚を触ってもいいです!」


「……なんだと……?」


「と、冬馬君……?顔、怖いよ……?」


「綾、お前は今、言ってはならないことを言った」


「ご、ごめんなさい!そ、そうだよね!そんな賭けみたいなことで決めちゃダメだよね……ただ、何か口実が欲しかっただけなの……」


「いや、そうじゃない。俺は、今ならなんでもできる気がする。今なら異世界転移して、英雄や勇者にもなれるだろう」


 俺の中の闘志がメラメラと燃えている……!

 ドンドンと燃料が投下されていく……!


「はい?と、冬馬君……?何か、言動が変だよ……?」


「綾、一度だけ聞く……触っていいんだな?」


「う、うん……あ、脚だけなら……」


「もう、訂正は聞かないからな。覚悟しろ、綾。俺の本気を見せてやる……!」


「……少し、やり方間違ったかな……?」


「よし!では、行ってくる!」


 俺は応援団の元へ行く。






 そして、開会式が始まる。


 意味のない校長の話が終わり、いよいよ俺らの出番である。


 剛真が前に立ち、号令をかける。


「いくぞーー!!」


 そして、音楽が流れ始める。


「1、2、右!左!後ろ!」


 合図に合わせ、拳や脚を繰り出す。


「冬馬君ーー!!カッコいいよーー!!」


 ウォォォーーー!!!

 燃料が補給されてくぜーー!!


 俺はその後、全力で応援団の演舞をするのであった。




 そして、いよいよ競技が始まる。


 午前中は騎馬戦と、400メートルリレーに参加する。


 今まさに、騎馬戦の開始時刻となった。


 俺が上となり、下にはクラスメイトがいる。


 田中君、バスケ部の中野、陸上部の加藤の3人だ。


「田中君!君には酷な頼みかもしれない!だが、頼む!俺が男になるために協力してくれ!」


「う、うん!よくわかんないけど、僕も頑張るよ!と、友達のためだもんね!」


「中野、加藤……いいか?退くな!前へ出ろ!俺が蹴散らす!」


「へへ、熱いじゃねえか!良いぜ!吉野!やろうぜ!」


「ほんと、損したな。もっと早く知りたかったよ。そしたら、バスケもできたのに。こんなに面白い人だったなんて」


 そして、騎馬戦が始まる……!


「いけぇーー!!殺せーー!!」


「あいつだ!あいつを狙え!」


「あの野郎!俺らのマドンナとイチャイチャしやがって……!」


「あの子の笑顔のために我慢してきたが……!」


「ここなら、問答無用でやれる!清水さんの前で恥をかかせてやるーー!!」


「「「ウォォーー!!」」」


「ハッ!!いいだろう!雑兵共よ!かかってこい!蹴散らしてくれる!」


 右から左から、敵の騎馬隊が押し寄せてくる!


「とった!」


「あめぇ!」


 突き出された手を右手で弾き、左手で相手の帽子を奪う!


「隙あり!」


「隙なんかねぇよ!」


 身体だけを反転し、手を弾く!


「中野!!加藤!!田中君は無理するな!」


「おうよ!」


「はいよ!」


「うん!」


 騎馬も動き出す。


 そして……俺による蹂躙が始まる……!


「ギャーー!!」


「や、やめろーー!!」


「こ、こいつ、何者だーー!?」


 次々と帽子を奪っていく……!


「フハハ!今の俺に敵などいない!」


 だが……そんな俺の前に、最強の敵が現れた!


「ガハハ!冬馬!その感じ!懐かしいな!」


「チィッ!剛真か!だが、今の俺に勝てると思うなよ!?」


「よいな!皆の者!手を出すな!俺が相手をする!」


「おお!剛真なら!」


「やっちゃってください!」


「モテない男子のために!」


「行くぞ!剛真!」


「やるか!冬馬!」


 俺と奴の騎馬隊が激突する!


 そして、馬上で組みあいになる……!


「ぐぉぉぉーーー!!!相変わらず、馬鹿力めぇ……!」


「ガァァァーーー!!!お主こそ、その体格でその力……!」


 お互いに全く微動だにせず、膠着状態となる。


「あ、あいつ!剛真さんと互角だぞ!?」


「嘘だろ!?あの人、インターハイ準優勝した人だぞ!?」


 ……クソ!流石につえぇ!きちんと鍛え続けた奴には、やはり勝てないか……!

 こんなことなら、しっかり鍛えておくんだったな!


「ガハハ!もう疲れたか!では……」


「冬馬君ーー!!負けないでーー!!」


「吉野ーー!!今なら、綾のおっぱいも触って良いからーー!!」


「ちょっと!?愛子ーー!?」


 おっぱいだと……!?

 おっぱい、おっぱい、おっぱい……。


「う、うおおおーーー!!!」


「な、なに!?押し負ける?俺が?」


「剛真!!覚悟しろ!!今の俺に敵はいない!!」


「グッ!?お、押し返してやる!」


「今だ!!」


 押し込んだ右手を、スッと力を抜く。


「なぁ!?」


 剛真の体勢が前に出る。


 つまり……。


「とった!!」


「ま、負けたか……ガハハ!楽しくなってきたな!また、冬馬と遊べるとは!」


 そして、終了の笛が鳴る。


 俺達のクラスの勝ちだ!


 ……おっぱいと言われて、張り切ってしまった。


 まあ、冷静に考えれば、ただの冗談なんだろうけどな。


 いやはや、俺も意外と単純なんだな……。

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