第24話清水さんは決心する~清水綾視点~

 吉野君を好きになってから、早くも2ヶ月が過ぎようとしています。


 最初に出会った頃は、避けられてばかりでした……。


 でも、少しずつ仲良くなれてきたかな?と思います。


 ……私の勘違いだったらどうしよう……。


 ううん!少なくとも、嫌われてはないはず!


 ……そう思いたいです。


 この2ヶ月は色々なことがありました。


 暴漢から助けてもらった人を好きになったり。


 その人が気になっていた吉野君で、さらに好きになったり。


 なんとか仲良くなりたいと思って、行動してみたり。


 ひょんなことからバイト先を知り、そこから仲良くなれたり。


 家に来てもらったり、メールしたり、電話まで……。


 私は、吉野君の優しい人柄や、誠実さにどんどん惹かれていきました。


 もう、自分を抑えることができないほどに……。






 そして期末テスト最終日の夜、私はドキドキしていました。


 だって吉野君から、電話するからって……。


 何かな?なんだろ?ま、まさかね……キャー!


「綾、ニヤニヤしてどうしたの?」


「べ、別に……」


「あらあら……吉野君のこと考えてたのかしら?」


「え!?……う、うん……」


「綾は、吉野君のどこに惹かれたの?暴漢から助けてもらっただけじゃ、一過性のものかも知れないわよ?それでは、相手にも失礼よ?」


「もちろん、最初はそうだけど……今は、違うよ。えっとね……まずは、誠実なところ」


「ふんふん……どんなところが?」


「……自分で言うのもアレなんだけど……私、男の人たちからやらしい目で見られること多いし……それ目的で告白されることも多いの……でも、吉野君はそんなことしないの。もちろん、それはそれで少し複雑なんだけど……」


「確かに、そこは乙女心としては複雑ね。そうね、普通貴方みたいな可愛い子に好意を寄せられたら、とりあえず付き合って……男女の関係になりたいと思う人のが多いでしょうね」


「う、うん……なんて言うのかな……中身を知ろうとしてくれてるのが、嬉しいのかな?」


「うんうん、嬉しいわね。で、後は?」


「後はね……優しいところかな。誠也にもそうだったし、私にも。言い方とかはぶっきらぼうなんだけど……押し付けない優しさ?みたいなところとか」


「そうね、それは大事ね。他には?」


「お母さん、ニヤニヤしすぎ……」


「あら、いいいじゃない。娘の初めての恋なんだから。で、どうなの?」


「……1番は、アレかな?そ、その……ドキドキするの……側にいると……」


「あら!まあ!いいわね、大事よね。それで?」


「う、うん……でも、落ち着いたりもするの。黙っていても苦にならない?」


「同じ空気感を感じてるのかしらね?でも、大事よね」


「あとは、笑顔を見ると胸が苦しくなったり……キュンとしたり……」


「そう……心配はなさそうね。綾、貴方はしっかりと吉野君を好きになっているわ」


「え?う、うん、そのつもりだけど……」


「いや、出会いが出会いだから、お母さんは心配したのよ。吊り橋効果じゃないかと思ってね」


「そんなことないよ!ちゃんと好きだよ!」


「ええ、今の話でわかったわよ。で、どうするの?夏休みは?来年は受験もあるし、遊んだりするのは、最後かもしれないわよ?」


「う、うん……実は、今日電話するって……吉野君から……」


「あら!良かったわね!」


「お母さん!お風呂出たよ!」


「あら、誠也。じゃあ、ご飯にしましょうか。綾、頑張りなさいね。あんな良い男は滅多にいないわよ?」


「……うん!」


「なんの話ー?」


「吉野君は、良い男って話よ」


「うん!冬馬さん、カッコイイよね!あんなお兄ちゃん欲しい!」


「あらあら……まあ、それは気が早いわね」





 その後、ご飯を食べて、私は部屋に戻りました。


「うー……なんだろ?」


 テスト明けで良かったぁ……何にも手につかないや……。

 部屋に戻ってから、ずっとスマホとにらめっこ状態です。

 だって嬉しい……電話してくれるの初めてだもん……。


「9時くらいって言ってたから、そろそろだと思うんだけど……うわっ!」


 スマホが光る、吉野君と表示される!

 私は、すぐにボタンを押しました!


「……も、もしもし……」


 うぅー……声が震えそう……!


「もしもし、今大丈夫か?」


 吉野君は電話越しだと、少し硬くなる印象……まさかね。

 ……吉野君も、緊張してたりするのかな?


「う、うん……この時間に電話するってメールきたから……」


「そうか……」


「よ、吉野君?」


 どうしたんだろ?何か躊躇ってる?


「あー……西武遊園地って知ってるか?」


「え?……うん、行ったことあるよ」


 この辺に住んでる人は、大体行っている遊園地のことだ。

 小さい頃は、よく行ってたなぁ……。

 でも、それがどうしたんだろ?


「……八月になると、花火を打ち上げているよな?」


「う、うん……」


 この辺に住んでる人ならよく聞く音で、夏の風物詩の一つだ。


「……良かったら、一緒に見に行かないか?」


 ……え?


「え!?え?え?今、なんて……」


 き、気のせいかな!?

 花火に誘われた気が……。

 そ、そんな幸せなこと、あるわけないよね!


「いいか……よく、聞け。俺と一緒に、花火を見に行かないか?」


「……はい、行きます……」


 ……腰が砕けるかと思ったぁ………。

 ……え!?どういうこと!?

 ……これは、誘われた……?

 花火に……?それって……デート!?


「おーい?聞いてるか?」


「にゃい!?え!?き、聞いてない!」


 あーもう!変な声出ちゃったよー!


「詳しいことは、後日な。また、連絡する」


「う、うん、わかった。ま、待ってます」


「はいよ。じゃあ、またな」


「うん、また……」


 そして電話が切れる……何が起きたの?


 ……遊園地に誘われた……花火……。


 ……やっぱり、これって……デートに誘われたのかな……?


「キャー!!どうしよう!?」


 私は、布団に潜り込んで叫びました。


「嬉しい……あれ?」


 そこで私は気づいた。


「花火が終わったら、もう夏休み会えない……?そもそも、会う理由が……」


 吉野君だって忙しいだろうし、誠也をダシに使うのは違うし……。


 私は寂しい気持ちで一杯になる。


 最近は学校でも会えるし、話せていたから……。


「どうすれば、花火以降も会えるのかな?」


 会っても不自然じゃない関係……。


 ……決めた!


 怖がってたら、前に進めない!


 私は花火の日に、吉野君に告白します!!

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