学園ランキング最強はチートで無双する～能力はゴミだが、異世界転生で得たチート能力で最強～

超重の制圧者

第22話 王の帰還

学園屋上のヘリポートに向かって、一台の大型ヘリが近づいてくる。

プロペラの起こす風に巻かれ、屋上の空気が強く波打つ。

そんな中、黒い制服に身を包んだ4人の生徒達は平然とそれを受け流し、自らの主の帰還をじっと待っていた。

やがてヘリが着陸し、サイドの扉がスライドする。

そこから姿を現したのは、黒いゴスロリ服を身に纏う少女だった。

彼女の名は荒木（あらき）真央（まお）。

超重の制圧者（グラビトン・エンド）。

ギフテッド学園最強。

生徒会長。

この3つの肩書を持つ彼女を、学園内において知らない者はいない。

更にはその出自も傑出した物であり、政界にも強い影響力を持つ世界有数企業、真央グループ当主一族の血を彼女は引いていた。

その圧倒的な血筋と実力から、荒木真央はこの学園の実質的な支配者となっている。

「帰ったぞ」

大型のヘリであるため地上部分とはかなりの落差があるのだが、タラップを出す事なく彼女はそこから飛び降りた。

まるで「ふわり」と擬音が聞こえて来る様な、重力を無視した緩やかな落下で、小さな少女の体は屋上へと舞い降りる。

「お帰りなさいませ」

待ち構えていた4人の生徒達が膝を付き、首を垂れた。

それはまるで、王侯貴族に対する騎士の如き礼節。

実際、彼女達は生徒会のメンバーであると同時に、荒木真央の忠実なる下僕でもある。

「四条はどうじゃった？」

「彼は、真央様の温情を理解できなかった様です」

副会長である茨城恵子が顔を上げ、荒木真央の質問に答える。

その口調は淡々とした物だ。

だがその実、一見平静に見えて、真央から貰ったチャンスを棒に振った四条に対する怒りが彼女の中では渦巻いていた。

「四条は本当に救いのない、愚か者じゃのう」

「報告を宜しいでしょうか」

「なんじゃ？」

「四条王喜が問題を起こした相手。それがくしくも、例の鏡竜也という人物でした」

「ほう。話題の人物と後の無い問題児か。偶然にしては面白いの。勝敗の方は、まあ聞くまでも無いか」

荒木真央は愉快気に口の端を歪めて「くっくっ」と笑う。

その表情は、子供とは思えない程妖艶な物だった。

「それと、これはまだ確かな確認は取れていないのですが。女生徒達の話では、どうやら金剛劔ともひと悶着あった様です」

「ほう……編入早々、もう四天王のうち三人とのう。確か氷部の報告では、人格面に問題はないという事だったが。いわゆる巻き込まれ体質という奴か」

「生徒会に召喚されますか？」

「ふむ……いや、そのままでよい。今度時間を作って、妾自ら会いに行くとしよう」

茨城に伺（うかが）われ、荒木真央はしばしの逡巡の後、彼女に不要と返事を返す。

有能なら配下に取り込むつもりでいる為、呼び出すよりも自身が出向いた方がイメージが良いと考えたからだ。

彼女はまだ12という若さではあるが、その思考は年齢にそぐわぬ狡猾さを持ち合わせていた。

「では久方ぶりに、執務室（わがや）に帰るとしようか」

荒木真央が歩き出す。

その姿は小柄ながらも威風堂々としており、跪いていた4人は急いで立ち上がってその後に続いた。

「どんな男か、会うのが楽しみじゃ 」

彼女は目元を歪め、上機嫌にそう呟いた。