第10話 心理テスト

「今度こそ心理テストをします!」

「またかよ」


 マヤちゃんが言うとナギトくんがボソッとつぶやいた。


「だって、この前は心理テストしてないじゃん! リベンジ!」

「まあまあ、いいじゃないですか、ナギトさん。楽しそうですよ」


 リサちゃんが仲裁に入る。


「そうよ。付き合ってあげなさいよ」


 アカリちゃんも加勢する。


「それで、どんな心理テストなの、マヤちゃん?」

「ではでは一問目! 『あなたの目の前にはコップが一つあります。そのコップには水が入っています。入っている水はどれくらい?』 はい、シンキングターイム! ちなみに私も答え見てないからねー」


 うーん、どれくらいだろう……?


「はい終了ー。私はこぼれる寸前! 表面張力ギリギリのやつ!」

「ぼくは普通かな? 8割くらい」

「わたしは少しですね。一口分くらいです」

「俺は半分くらいだな」

「私は3割くらいね」


 へー。人によって全然違うんだなぁ。


「それで結果はどうなんだよ?」

「あんまり乗り気じゃなかったくせに、興味津々じゃん」

「いいだろ別に」

「まあいいや。えーと、答えは『入っている水の量があなたの欲望の大きさを表します』だって」

「――ってことは、お前の心は欲望で溢れているってことだな」


 さっきのお返しと言わんばかりにナギトくんがニヤリとする。


「あふれてないもん! 表面張力ギリギリだもん!」


 マヤちゃん、怒るとこそこじゃないと思う……。


「ヒカリは8割だったわね」

「うん、そうだよ」

「そうそう、なんか意外だったー! ヒカリちゃんて案外、野心家だったりしてー」

「お前が言うか」

「もー! うるさい! どっちつかずの中途半端!」

「そこまで言わなくてもいいだろ……」


 あーあ。ナギトくんがいじけちゃった。


「それに比べて、リサちゃんとアカリちゃんは少なかったね」

「欲しいものとかもそんなに無いから」

「わたしはみなさんが笑顔で幸せなら、それで十分ですから」


 そう言ってリサちゃんは微笑む。リサちゃん、いい子すぎない?


「じゃあ、二問目いくよー。ほら、ナギトもやる!」


 ナギトくん、まだいじけてたんだ……。


「『あなたが道を歩いていると、後ろからあなたを呼ぶ声がします。あなたを呼んでいるのは誰?』さあ、誰でしょー?」

「うーん……、ぼくはナギトくんかな」

「あ、私もナギトだったー! おそろいだね、ヒカリちゃん」

「モテモテですね、ナギトさん。わたしはアカリさんでした」

「そんなのじゃねえよ。俺はマヤだったな。心理テストでも鬱陶しいな」

「カンケーないでしょ! で、アカリは誰だった?」

「リサだったわ」

「よし、じゃあ答えいくよー。『声の主は、あなたの憧れている人』……だって」

「それなら、わたしとアカリさんは相思相愛ってことですね。あ、マヤさんとナギトさんもですね」

「な、なに言ってんの、リサ、そんなんじゃないって」

「こいつが鬱陶しく絡んでくるだけだしな」

「言い方ってものがあるでしょ!」

「いや、事実だし――って、なんか顔赤くないか? 大丈夫か?」

「大丈夫!」


 マヤちゃんがぷいっと顔をそらす。

 確かにちょっと赤いかも。風邪とかじゃないといいけど。


「ところで、ヒカリはともかく、お前はなんで俺が浮かんだんだ? リサとかアカリじゃないのか?」


 ナギトくんが不思議そうな顔をする。

「仕方ないでしょ、直感なんだから」

「それもそうか」


 マヤちゃんの顔がさらに赤くなる。本当に大丈夫かな?


「(この鈍感野郎)」

「(ほんと鈍感ですね)」

「アカリちゃん、リサちゃん、どうかした?」

「別に」

「いいえ、何も」

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