第93話 優しい王におなりなさい
ギルバート・ロト・アメリアの肉体の死を確認。【
――緊急通告――特異点の存在を確認。特異点の
――――――条件付きで成功!
ギルバート・ロト・アメリアの魂と特異点の魂を現時点から過去の一定期間内にランダムで回帰いたします。
――討伐図鑑からの通告――ギルバート・ロト・アメリアと主人、カイ・ハイネマンとの魂の連結度の上昇のため、封印中の記憶が大幅に解放されます。魂の連結度98%
――――記憶解放99%
記憶という名の大量の情報が僕の頭に入っていく。それはあの最低な男の過去。今までバラバラの断片だった記憶は一つに繋がり、過去から現在までその馬鹿な男の歩んできた一つの道を作り出していた。
そして記憶は最後のピースへと進む。
そこは絢爛豪奢な一室。その懐かしい部屋の中に美しい金髪の女性が横になっていた。その女性の顔は血色が悪く、もう幾ばくも無いことが伺えた。
「……」
女性の脈をとっていた医者と思しき禿頭の男が立ち上がると僕らに向き直り、首を左右に振る。
「母様!」
僕は必死にその右手に飛びつき、必死に声を張り上げる。ただ、優しくも暖かな母の温もりが失われる。それがとても怖かったんだと思う。
母は瞼を開けると、僕を目にして愛しそうに目を細める。そして、
「ごめんね。ギル、一緒にいてあげられなくて。でも大丈夫よ。貴方には頼りがいのある姉妹と優しい友達がいるから」
母は僕の背後にいるそばかすの少年に顔を向ける。そして――。
「テトル、ギルをお願いね」
そう懇願の言葉を叫ぶ。
「も、もちろんです!」
そばかす少年は大きく頷く。
「母様、やだよっ!」
僕はベッドの傍で母の右手を取り、必死に叫ぶ。そんな僕に、母は困ったように微笑むと、僕の頭を優しく撫でて、
「優しい王におなりなさい」
その言葉とともに瞼を固く閉じる。
そうだ。これはきっと僕にとって呪いの言葉。僕が王を目指した切っ掛けであり、王になることに固執した要因。
優しい王、母の言葉を僕はずっと誤解していた。母が本当に望んでいたのは、僕が王になることではなくて、優しい人間になることだったのだから。
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