ダンジョンが発生した現実世界で、俺は自由(?)に生きていく

新手の革命家

プロローグ

第1話 プロローグ1

 パソコンの画面を閉じ、軽く背伸びをしてから外出の準備を始める。別に誰かと会うわけではないので服装は適当に選び、靴を履いてドアを開けた。


 天気はどんよりとした曇り空。念のため傘を持っていこうかな……








 俺、小鳥遊 無名たかなし むめいは人間不信である。

 誰かを信じるという事がどうにも難しく、友達や友人はできたことがない。

 

 そして、俺には親戚もいない。家族は俺が物心つく前に父親が蒸発し、稼ぎの無い母親は俺を道端に捨てたらしい。


 俺が生きているのはたまたま通りかかった警察官が保護したためであり、その警察官もさすがに俺を育てることはできなかったらしく、俺を児童養護施設へ預けた。


 預け先の保母さんは優しいと評判で、子供たちにも大層好かれていだが、俺には優しくなかった。原因は俺が不気味だったからだそうだ。常に人を睨みつけ、一度も笑わなかったという。



 ここまで聞くと俺に問題があるように思われるが、実はこれには理由がある。



 突然だが、前世の記憶というものを信じられるだろうか。世間一般からしたら世迷言だと軽くあしらわれるだろうが、俺には本当に前世の記憶が残っている。


 といっても全部が全部覚えているわけではなく、しっかりとした記憶もあれば、夢の内容のようにぼんやりと覚えているものと様々だ。


 これのせいで俺の脳は混乱し、不愛想だったり子供らしくなかったりしたのである。





 まぁ、幼少期こそ性格に影響が出たりしたが、今では割り切って生活が出来ている。保母さんとも義務的な会話なら普通にできるし、他人ともある程度話せる。前世の記憶に振り回される時期は過ぎ、思考も落ち着いているのだ。


 だが、どうしても譲れないところがある。


 それは人間に裏切られたという事実。




 絶対に揺るぐことのない、前世の記憶の感情だ――俺は人間を信用できない。






 人間不信ではあるが、このご時世、誰かを頼らずして生きてはいけない。人間一人でできる事には限りがある、それは分かり切っていることだ。


 俺は人間不信という性格で、役にも立たない前世の記憶を抱えて、不安定に生きていくんだろうな……



 そう思っていたんだ、あの時までは。


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