第4話(葵衣視点)
突然、目が覚めました。時計の針は午前二時を回ったところ、ベッドの上には私一人です。
……来てない。
……詩乃さんが、来てない。
「……洗濯するだけって言ってたのに」
何故不満なのかは分かりません。でも、すごくモヤモヤして、なんか、不満です……!
拾ってくれただけでなく、お風呂にご飯、さらには住む場所まで快く提供してくださったのに、私のお願いは聞いてくれない、と!
「他の事より全然簡単じゃないですか……」
扉の奥、リビングの電気はもう消えています。なのに、詩乃さんはここに入ってこない。つまり、詩乃さんは意図してここに入ってこないようにしているということになります。
「……気を、使わせてしまっているでしょうか」
間違いなくそうだと思いますけどね。私なら気を使います。絶対。お友達でも気を使うのだから当然かもしれませんが。それに相手が異性となれば、なおさらかもしれません。
……やっぱり、迷惑でしょうか……。
生活力がない自負はあります。それに、世間一般の方からすれば、私の感覚はズレていることが多いのも。今日が大丈夫だったからと言って、明日も全てを許容して貰えるとは限りません。
「やっぱり、早めにここを出──」
「うー、寒っ!なんであんなとこで……」
「にゃん!?」
なんで!?リビングで寝てるんじゃ……?って全然目が開いてないです!?
あっ!布団取らないでくださいぃ……!
「さむぅ……!」
震えて縮こまっている私を見て、(目は全然開いてないですが)詩乃さんは一言。
「なんだ、猫か」
猫か、じゃないです私人間です……ちっちゃいですけど猫ほどじゃないです……。
布団を戻して詩乃さんが入ってきて、私の方に手を伸ばす。
「ごめんな、寒かっただろ?」
丸まった姿勢のまま、抱き寄せられてしまいました。
……えっと、これは返事をした方がいいのでしょうか?疑問文ですし、そうですよね?
「に、にゃー?」
「そうかそうか、おやすみ」
返事を返すと、満足げにそう言って詩乃さんは寝てしまいました。私を抱いたまま。
「……詩乃さーん?」
これ、離れてもらえたりは……しないですよね。
「とりあえず、足を──!?」
足を伸ばせば隙間があいて抜け出せるとか思った私が悪かったです!だから、だから……!
「離してください〜!」
逆に密着するってなんですか!?離れたいんですよ!
ぽかぽかするし、落ち着くんですけど、これは……!
「癖になったらまずい気がします……!」
根拠なんてありません。でもこの安心感に甘えたら、もっと迷惑をかけてしまう気がします。暖かくて、ずっとここにいたくなるような──
「って、早めにこの家を出るんじゃないんですか私……!」
でもやっぱり、詩乃さんと一緒にいるのはとても心地よくて、離れたくない。
うむむむ……。こういう時は自分に正直な方がいいと言われたこともありますし……。
「詩乃さん。これからたくさん、ご迷惑を掛けてしまうと思います。それでも、私をここに置いてくれますか?」
もちろん返答は返ってこない。ただ無言で私を包み込んでくれているだけ。でも、無言は肯定と言いますし?
「改めて、よろしくお願いします」
ただの自己満足ですけど、いいですよね?
詩乃さんも、お風呂上がりに『いいよ』って言ってましたし?
「私に甘える隙を与えた詩乃さんが悪いんです」
詩乃さんの首に手を回して、私からも密着する。
……もう抱き枕みたいに足も絡ませてしまいましょうか。
「ふふっ♪」
明日からは毎日こうしてもらいましょう。この胸がぽかぽかする感じはとても好きです。
「おやすみなさい、詩乃さん」
詩乃さんにそう声をかけて、私は目を閉じた。
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どうも、作者です。
ここまでのお話で補足が必要そうなところを補足していきます。自分がここまで想像していた詩乃と葵衣の姿がある方は見ないことをおすすめします。
詩乃と葵衣について
詩乃の身長は178センチ程度、葵衣は152センチ程度を想定しています。身長差20センチ、だいたい葵衣の目線が詩乃の胸元にくるぐらいですかね。詩乃は黒髪黒目で、葵衣は瞳、髪どちらも暗めの茶色です。
そして葵衣の胸はBカップ程度。身長に対しては、少し大きいぐらいでしょうか。
今回は以上になります。
一人称の作品を書くのは好きなのですが、今回は普段と意識する場所を変えているため、容姿の説明などが不十分なところが多いです。大変申し訳ない。
それでは、次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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