新人の研修日誌  2013年6月

職場では、いつも、新人職員に「研修日誌」なるものを書いてもらっています。


ある日の日記より。


認知症はありませんが、おっしゃる言葉が不明瞭なことの多いMさんという方がいらっしゃいます。


新人職員「Mさんとの会話で、いつも「聞き取れなかったらどうしよう」という気持ちで、不安な表情で接していたのですが、今日Mさんとゆっくりお話することができました。Mさんが病気の話やプライベートなこと、たくさんお話をしてくださったのですが、その時は、「聞き取れなかったらどうしよう」という不安な気持ちより「Mさんの話を聴きたい」という気持ちが大きかったことに気づきました。今回のことから、「聞きとれる」「聞き取れない」ということよりも「この方の話を聞きたい」という気持ちを大切にすると、自然と聞き取れるのかなと感じました」


これを読んだ時、私は素直に感動し、新人職員が、このような気持ちを持ってくれることが、ほんとうに嬉しかったです。


新人くんが、Mさんの部屋に行ったっきり、なかなか帰ってこないなぁと思ってたんですが、こんな幸せな時間がすごせていたのだと知って、私まで、幸せな気持ちになりました。私も、同じ経験をしましたし。最初、ちょっと怖い人なのかなって思える感じの方なので・・・(^^;


日誌の記事に対して、指導担当としてコメント。


私「私もMさんと出会った頃は、言われることが分からないと申し訳ないなと思い、正直お話しするのに不安がありましたが、Mさんの人となりに触れ、こちらがちゃんと聞こう、分かろうと真摯な態度で接すれば、Mさんも気分を害されたりせず、一生懸命お話ししてくださることが分かってからは、Mさんとの会話がとても楽しくなりました。「やり方」や「技術」を得ようとするのではなく、その方と寄り添おうという気持ちがあれば、信頼関係を築くことができて、気持ちを通じ合うことができるようになると思います。今日のその気持ちをこれからも絶対に忘れないで下さい。とてもすばらしい気づきだと思います。」



福祉の仕事のやりがいとは、こういう、日常のなにげない喜びなのではないかと思います。人を相手にする仕事である以上、辛いことも多いですが、こちらの気持ちしだいでは、その何倍も素晴らしいこと、嬉しいことがいっぱいあると思います。


この日は、とても疲れた後でしたが、此の日誌を見て、幸せな気持ちになりました。

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