第38話 ライン

バイトを終え、夕食を食べてからシャワーを浴び、自室で時計を見ると21時を過ぎたところ。


『今日こそ寝る!』と思いながらベッドに入ると、スマホが点滅していた。


『陸上部?』と思いながらスマホを見ると、奏介からラインが。


胸の奥がキュンと締め付けられながらも、メッセージを見ると、そこには《愛してる》のスタンプが送られてきていた。


すぐに【死ね】のスタンプを送ると、奏介からすぐに《死なねぇよw 今何してんの?》というメッセージが。


【もう寝る】


《早くね? ちょっと話そうぜ》


【いやだ】


《んじゃ添い寝する》


【お父さんにライン見せるわ】


《ごめんなさい》


くだらない会話を続けていたんだけど、どんどん胸が締め付けられるばかり。


『なんなんだろこれ? なんか最近、絶対におかしいよな…』


そう思いながらスマホをミュートにし、無理やり目を瞑っていた。



この日から、毎日のように奏介と短いラインを繰り返していたんだけど、廊下ですれ違っても一切話さず。


相変わらず、ジムへ行くのは奏介がいない時間だけだし、バイトあるから、学校以外で顔を合わせることはほとんどなかった。



そんなある日の放課後。


試験前の部活休止期間中、帰宅しようとしていると、早苗が「今日バイト?」と聞いてきた。


「いや、今日は完全オフだよ」と答えると、早苗は嬉しそうな顔をしながら「うちで勉強しよう」と切り出してきた。


父さんにメールを送った後、そのまま早苗の家に行き、早苗の部屋で勉強をしていると、早苗が「スマホ鳴ってない?」と切り出してきた。


何も気にせず、スマホを見ると、奏介からのラインが来ていた。


早苗はそれを見て「奏介ってD組の?」と、不思議そうな顔をしてくる。


「うん。 父さんのジムに通ってるんだ」


「あ! 聞いた!! 菊沢君の憧れだったんでしょ?」


「そうみたいだね」と言いながらラインを開くと、奏介から愛してるのスタンプの後、《勉強教えて~》とのメッセージが。


【自分で何とかしろ】とメッセージを打っていると、横から覗き込んでいた早苗が「愛してるのスタンプって… 付き合ってるの?」と…


「いや、からかってるだけっしょ?」


「えー… 菊沢君、冗談でもそういう事を言う人には見えないよ? 結構、スタンプ選びながらキュンキュンしてたりして?」


「キュンキュン?」


「胸の奥がキュンって」


「不整脈?」


「違う。 好きな人を考えると、胸がキュンって。 なったことない?」


目を輝かせながらそう言ってくる早苗の言葉に、自然と自分のことと重ねていると、奏介の後ろ姿が頭に過り、胸の奥がキュンっと締め付けられた。


「ない! 絶対ない!!」


はっきりとそう言い切ると、奏介からラインで《頼む! ちゃんと聞くから教えて!! マジ愛してる!!》とのメッセージが…


そのメッセージを見た途端、またしても胸の奥がキュンっと締め付けられ、息が詰まってしまった。


早苗はそれを見て「これだけ押されたら、ダウンするのも時間の問題か…」と、呆れたように小声で呟いていた。


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