第30話 勝負
午前中の試合は、佐藤が勝利しただけで終わり、1勝2敗の劣勢に。
部長と菊沢、それと2年の大沢君は、午後の試合を控えていた。
部室でお昼を軽く食べた後、菊沢のバンテージを巻きながら、シャドウボクシングをしている大沢君を見ていたんだけど、相手が凌君であることに『対戦相手が悪すぎるなぁ…』と思っていた。
するとヨシ兄が、大沢君にアドバイスをし、大沢君は気合十分で試合に挑んだんだけど、開始早々、大沢君は『お見事』と言いたくなるくらいのカウンターを食らってしまい、30秒もしないうちにKOされていた。
ベンチで横になる大沢君を見ながら、みんな口々に「相手が悪い」と言う始末。
菊沢はそんなことを気にせず、リングの上に上がっていたんだけど、菊沢は以前よりも体が締まり、動きが軽快になっていた。
『前に減量云々って言ってたけど、絞ったのかな? 練習時間が増えただけ? 全盛期の光君に似てる…』
そう思いながら試合を見ていたんだけど、菊沢は開始早々手数が多く、終始優勢のまま1ラウンド目を終えていた。
インターバルに入ると同時に部長に呼ばれ、菊沢の元に行くと、菊沢は肩で息をしながら「アドバイスは?」と聞いてきた。
「全力で突っ走れ」とだけ言うと、菊沢はクスッと笑い「雑だな」と言った後、マウスピースを口に含み立ち上がる。
リングサイドで試合を見ていたんだけど、ファイトスタイルが昔の光君を思い出させ、胸の奥がギュッと締め付けられる気がしていた。
結局、菊沢は全ラウンドを終始優勢のまま判定勝ち。
次の部長の試合も、終始優勢のまま判定勝ちをしたため、3勝3敗のまま、招待試合は幕を降ろそうとしていた。
が、これに観客が大ブーイング。
「ケリつけろ!!」と言うブーイングが響く中、松坂がゆっくりと立ち上がり、「俺が出るよ」と、余裕綽々な感じで言い始めていた。
けど、こっちの選手は選抜から外れた子ばかりだし、準備もしておらず、圧倒的に格下。
『もしかして、格下相手にしか試合しない奴だったり?』
そう思いながら谷垣さんに「ヨシ兄とやらせたら?」と切り出すと、松坂が「大学生出させるとかおかしいだろ?」と、文句を言いまくり。
「こっちの選手はケガしてるから出れないんすよ」と、適当な事を言うと、松坂は私を指さし「じゃあお前でいいや。 左しか使わないし、顔には打たない。 ハンデでキックしても良いし、タックルしてきてもいいよ。 これでいいだろ?」と、ヘラヘラ笑いながら見下した感じで言ってきた。
これにカチンと来てしまい、「10分頂戴。 準備してくる」と言った後、すぐに更衣室へ向かっていた。
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