第256話:狂舞→開花→糸とくればあれだね!
突如現れたアルマジロに対処しようと振り回し振り下す無数の足は届く前に抑揚のある音楽に乗せられた斬撃に弾かれる。スピードと鋭さを増したミローディアの軌跡が引き寄せ作った道を、丸いボディを感じさせないスピードでアルマジロの着ぐるみを着たスーが駆け抜ける。
その姿を目で追うことは出来ず、足を着いた地面が足跡に抉れ青白い炎を残してく。
それでも無数の足を新たに生やし、でたらめに振り回せばスピードに関係なく捉えれる。
自身の足に走る衝撃は獲物を捕らえた手応えと細めた目が驚愕に変化するのは一瞬。体を丸め球体となったアルマジロは青白い炎を纏い地面と足を抉りながら跳ねる。
無数に生やした足の間を器用に跳ねながら進んでくる火の玉に、足を生やしたことを後悔したかは分からないが目の前で球体が開き本来の姿を見せたとき四角い瞳孔が大きく開く。
『
額に当てられた手から放たれる技の名を静かに告げられる。
青白い光が手に集まると圧縮された力が一点方向に向かって放たれる。それは光の速さでタコサシの体を駆け抜け突き抜けると地面にまで到達する。
突き抜けた傷跡は青白い炎の魔力で焼かれ続け細胞の再生を阻む。額に空いた穴に両手の鋭い爪を突き刺すと左右に向け大きく開けば三本の鋭い青い線が引かれ眼球ごと切り裂く。
『
三本の線が左右に広がったのを皮切りにアルマジロスーの爪による連撃が始まる。もちろん阻止しようと無数の足が襲うがそれらも爪の乱舞の餌食となるだけである。
打つ、刺す、切るの共演は目で追えるものではなく、タコサシは衝撃に身を委ね捌かれていく。
本日二度目の閃光がタコサシの頭を突き抜け空へと放たれると、スーの隣にエーヴァが降り立つ。
そのままミローディアの石突をスーに引っ掛け後ろへ向かって振り抜く。
「っと」
飛んできたアルマジロスーを受け止めると、スーは目を回して「あうあう」唸っている。
限界を超えた状態、いわゆる燃料切れを起こした気絶したスーのタイミングを見計らって私へと寄越してきたエーヴァが左腕の盾を取ると空中へ投げる。
「まだ曲は終わってねえぞ。『
空中に投げられ回転しながら落ちる漆黒の盾が、ミローディアと重なりその身を広げると、漆黒の桜の花を咲かせる。
弾ける音符の奏でる音の陽気さと対照的に、回転する花はただただ冷たくて残酷で美しい。
スーの鋭い斬撃とは違う、破壊をふんだんに含んだ斬撃は深く食い込みタコサシの体を豪快に切り取り解体し崩壊へと歩ませる。
「音楽に合わせて回転ノコギリ振り回すお嬢様って……なんて言うかヤバさが際立つもんだね」
目を回すスーを壁に寄りかからせながら、笑みを浮かべながら回転ノコギリを華麗に振り回しタコサシの体を深く切り刻んでいくエーヴァを見て背中に冷たいものが走る。
先端とはいえ足を斬り飛ばされ、顔面に穴を空けられ切り刻まれたあげく現在進行で傷口に沿って解体、いわゆる捌かれて身を削られいくタコサシの瞳に焦りの色が見える。ただでさえスーによって焼かれた傷は再生が困難で、さらなるエーヴァの怒涛の解体ショーに再生が間に合わないと判断したタコサシは一旦身を引くことを選び、短くなった足で地面を蹴って飛んで逃げる。
「そんなのはお見通しってねっ!」
私が手元にあるワイヤーを引くと、先端にある直尺に絡む初手で切れた電線が引っ張られそこに魔力を伝わせることで、戦闘中にあちこちに描いた『糸』の漢字に魔力が供給される。
空気の『糸』が生まれ電線と空気の糸が絡んで生まれた特大の蜘蛛の巣は、海の方へ逃げようとするタコサシを拘束する。
間髪入れず、むき出しになった電線の導体である金属に牡丹一華を絡ませ電気を流す。流れる電流に身を震わせるタコサシだが、この程度の攻撃では足止めにしかならないのは承知の上だ。
このタイミングで満を持して立ち昇る魔力と炎の柱。
爆発的に立ち昇った炎は、その中心にいる炎の犬と化したシュナイダーの口もとへと収束し圧縮され刃物の形を形成する。
それは刃物としてじっとしてはいられず、暴力的なまでの力を見せつけるかのように高速で回転する。
回転しながら火の粉を散らす刃物は現代でいうチェーンソーの形をとり、何者をも切断する強い意思を見せつけてくる。
『
この世を焼き付くす炎とか言う意味を持つ、技の名前に拘る我が家のワンちゃんが呟くと、炎は更に勢いを増して燃え盛る。
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