十九、屋上にて
夕焼け小焼けの駐車場
青いお空が遠のいて
可愛い色に変じていました
ピンク色
オレンジ色
白い雲
朱色の光
穏やかに棚引いて
厳かに混じり合い
優しそうに広がっていた
私は嬉しくなりました
いつだってそうなのです
夕焼けの空の美しさに
甘さに
幸福さに
酔いどれて歓喜を覚えるのです
だけどその日は特別でした
そばにあなたが居りました
あなたも夕景に喜んでいました
そこはとても広かった
たった二階建ての駐車場の
屋根のないコンクリ詰めの場所に立ち
遮るものなど幾多もある
夕空を仰ぎ見ているそれだけのことが
わたしにはとても広かった
常なら写真を撮るのです
綺麗な夕焼け空に出会ったら
写真に収めてしまうのです
ですがその日は止しました
映すべきものが他にあった
レンズ越しでは褪せてしまう
目玉の奥の水晶体に直に写し取らねばと
いずれ忘れてしまうとも
そのままを呼吸しなくてはと
わたしは懸命に空を見ていました
笑うあなたを共連れに
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