一年目 七月中旬 社会学者・笠原隆太郎

「すいません、警察の者です。この近所で窃盗が有りまして、聞き込みをやっています」

「は……はぁ……」

 いくら警察でも、こんな時間に何を考えている? そう思って笠原は玄関のドアを開けた。

 次の瞬間……。

「うわっ⁉」

「午後一一時三二分、暴行の現行犯で確保」

「え……?」

 何が起きたか理解出来ない。

 目に写っているのは……突然、自分の手にかけられた手錠。

 しかし、何故、そんな事が起きたのか……笠原の脳は理解を拒んだ。

 次の瞬間……。

 ボゴォっ‼

「ぐ……ぐえ……っ」

「ちょ……ちょっと待って……何……こ……これ?」

 警官を名乗る2人組の片方が、突如として、もう片方を撲った。

 夜の闇の中でも……血が飛び散っているのが判る。

「おい、偉い大学の先生が、善良な警官に暴行か……。弁護士は国選でいいよな?」

「へっ?」

「弁護士は俺達が選んだ奴にしねえと、一生、留置所から出られねえと思え」

「ちょ……ちょっと待って下さい……。そう言えば……警察手帳」

「うるせえッ‼」

「ぶひぃッ‼」

 笠原の腹にパンチが叩き込まれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る