第41話 攻略課2日目3
「うおおぉ!!たぁのもぉう!!」
雄叫びと共に、定食屋の力強く扉が開く。
「ほら、シンお兄ちゃんが来たわよ。これでニアのふざけた嘘もここまで。まったく、私だけならまだしも、他の人に迷惑をかけるのはもう止める事ね。…シンお兄ちゃ~ん!こっちこっち~!」
変わり身早いなー、このエセロリ娘。
使いこなしてるって感じ。
「ハッ!エセロリが!真実の我を知ってビックリ仰天するがいいと思うぞ!」
何その変な台詞、謎の対抗意識かなんか?
とっさに使えないなら、中二病なんて辞めちゃいなさいよ。
シン兄さんが対面の席に座る。
これで女の争いに男1人で巻き込まれて、肩身の狭い思いをしなくてもよくなりそうだ。
「…なぁ、コウ。特に変わった感じはしないんだが」
シン兄さんが顔を近づけて、小声で話しかけてくる。
若干酒臭い、さては軽く二日酔いだなこの人。
そりゃあんだけ昨日ストロングしてればなぁ…。
「多分これから変わると思いますよ…」
真実の我を知ってビックリ仰天すると思うんで。
「ねぇ、シンお兄ちゃん!この痛いお姉ちゃんは、なんで黒制服の真似っこなんてしてるのかな~?へっぽこなのに痛いよね~」
「ん?痛いお姉ちゃんとは、アヤネさんの事か?駄目だぞメルルたん、そんな事言ったら。それに真似っこじゃなくて、本物だぞ」
メルルちゃん、ニコニコ笑顔のままフリーズ。
「アヤネさん、黒制服も似合っているな。今日からよろしく頼むぞ」
「うひひ!ハイ!今日から攻略課の一員として頑張る系なので、ヨロです!」
立ち上がり、敬礼をするニアたん。
テンション高いなー。
ドヤ顔でメルルちゃんを見下ろしてますよ。
対するメルルちゃんはまだフリーズ中。
「あ、そだ。シンさんからもコウはあたしの使徒だって、エセロ…メルルに言ってくれません?信じてくれなくて悲しみが深い的な?」
「ふむ、信じられないのも無理はないだろうな。メルルたん、詳しい事は省くがそこの男はれっきとしたアヤネさんの使徒だ。俺が保証しよう」
「…シンさんが保証すると言うなら、信じてはあげます。でも納得はできませんね。そこのへっぽこは、何故急に成り上がったんですか?」
冷たい声と共に、メルルちゃんの顔から表情が抜け落ちていく。
ほら、お待ちかねのクールロリがご登場だ。
ジト目で見つめられて良かったね、シン兄さん。
「メルルたん!どうしたの!?ぽんぽん痛くなっちゃった!?親父さんに伝えなければっ!赤飯の準備を…」
急なロリチェンジに慌てるロリコン。
「落ち着け変態ロリコン兄さん!!メルルちゃんは30過ぎてるんだし、初潮はとっくに迎えてるはずです!ちゃんとナプキンくらいしてますよ!」
立ち上がり、厨房に向かおうとするシン兄さんの腰にしがみついて引き留める。
「何を言う!メルルちゃんは永遠の9歳なんだ!初めての事に戸惑っているに違いない!あんな目で俺を見た事なんて…ハァ…ハァ…良いぞぉ…」
「ヒッ…!?」
お巡りさんコイツです。
幼女が変態に怯えています。
神界の全幼女の為に、いち早く捕まえておいてください。
「落ち着けし、変態共」
『なっ…!』
変態ロリコンと共に、ニアの手から伸びる鎖に拘束される変態紳士の俺。
なんか力が抜けていく気がするんだけど。
というか、何故に俺まで拘束されたのか?
解せぬ。
「何故ニアがそんなスキルをっ…!?」
ビックリ仰天な幼女、最初からスキル見せてれば良かったんじゃね?
「詳しくは話せない感じ、とりあえず最上神様から神託受けて成り上がったみたいな?それで納得しといて」
「最上神様から神託…なるほど、とりあえず、今は納得はしておきます」
「うん、そうしといて。ねぇ、ビックリした?」
「ビックリするに決まってます!…ハァ、父さんがこっち気にしてますし、そろそろお客様も集まる頃なので仕事に戻ります。後でできる限りの説明はしてもらいますからね!まったくもう!」
イタズラが成功した子供の様な笑顔のニアたんと、ムスッとしながらもしょーがないなー的な雰囲気のメルルちゃん。
尊い。
百合プレイがマンネリ化したら、いつでも俺を使ってください。
全身が動く、棒付きオモチャだと思ってくれればいいから。
「うひひ!りょーかい!仕事ガンバ!あ、あたし唐揚げ定食で」
「唐揚げ定食ね、了解……そこの変態不審者さん達は、お赤飯が食べたいんだよね!ウチには無いから、ショップで買って食べるといいよ!じゃあねー!」
『えっ!?』
この後、変態不審者らしく少し嬉しそうしているシン兄さんと一緒に土下座をして、なんとか普通に注文できた。
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