第19話 話し合い1
男子寮から協会の入口付近に扉移動、支部長と世間話なんぞしながら昨日の応接室へ向かう。
協会内を歩いていると何故か視界に入る皆様が俺をガン見。
女性の職員同士でひそひそ話をしている方々も。
「やだー、昔の制服なんか着てるよあいつー、服に着られてる感がヤバいよねー、趣味で制服着てるとこ支部長に見つかって連行されたんじゃないのー、きんもー」
予想だとこんな感じかね。
というか、初めて他の職員達を見たが、思ってたのと違う。
今まで俺が出会った神はもれなく美男美女だった。
てっきり神は全員美形揃いだと思っていたのだが、割りと普通の人が多い。
そして、どう見ても残念なコスプレにしか見えない方々もいらっしゃる。
そこでひそひそ話してる、オレンジ髪の女性とか白い制服がはち切れんばかりだ。
鏡餅にしか見えないわ。
階段を上り、こちらをガン見する人達がいなくなったので支部長に尋ねる。
「支部長、なんか俺めっちゃ見られていませんでした…?」
「見られてましたねぇ、その制服が珍しいのでしょう。そのうち慣れますよ。さっ、着きましたよ」
「慣れる…?」
慣れるとはなんぞや?
さすがに新しい服を買ったらこの制服は緊急用にしか着ないと思いますけど。
などと考えていると支部長が応接室に入って行ったのでそれに続く。
部屋の中にはソファーに横になって、端末をいじっているニアがいた。
「やぁ、おはよう。ニアちゃん早いね」
「支部長おはよー」
やる気なさげに挨拶を返すニア、ダウナー系を意識してるのだろうが、ただの面倒くさがりなJKにしか見えない。
「ニア、おはよー!」
「ういー、おは……え?なんでコウが黒制服着てるのっ!?」
はい、本日1ブレ目。
そりゃ着る服が無かったからだよ。
普通に答えてもつまらないからふざけてみよう。
「実は俺も今日から協会の職員になったんだ!よろしくな!」
言ってから気づいたが俺ってさっき支部長に、今日は変なテンションじゃないからまともに話せそう、って言わなかったっけ?
これはいけない、あの時すでに変なテンションだったということか。
「え!?嘘!なんで!?コウがエリート職員なんて私聞いてないよ!黒制服なんてズルい!支部長!どういうことなの!?」
俺も聞いてない。
だって、適当にふざけただけだし。
でも、この制服がエリートな感じなのは解った。
これ在庫処分でも一般人が着ちゃいけないやつだ。
「支部長!どういうことなの!?この制服って、在庫処分で俺の着替えになったんですよね!?」
「ハハハッ!冗談だったのでしょうが、話が早くて助かりますね!その制服が在庫処分なんて有り得ないですよ。実は黒石さんには今日から、日本支部の異世界攻略課で働いていただく予定だったんです!今黒石さんが着ているのが、そこの制服なんですよ。ちなみにこの話は、レイ様からの提案です。その時言っていたのが、「ちょっと危険だけど大丈夫だよ!早く上の領域に入れるようになって、僕に会いに来てくれるんだし!」、とのことです。黒石さんなら断りませんよね?」
そっかー、レイちゃんの提案なら仕方ないな。
早くニアを上級神にして上の領域でレイちゃんに会う為に、エリートでも何でもやってやろうじゃないのよ。
「不肖、黒石幸!ロリからのお小遣いで酒やタバコを楽しむような愚か者ですが!精一杯エリートしてみようと思います!…で、異世界攻略課ってことは異世界攻略が仕事なんですかね?」
「そうなりますね。簡単に言えば色々な異世界を攻略するのが仕事です。危険な異世界も攻略しなければいけないので、優秀な神や使徒しか働けないんですよ。当然、同じ協会職員より優遇されます。例えば給料、寮の部屋ですね。黒石さんが異世界攻略課で働いてくれるのなら、昨日泊まった部屋がそのまま自室になります。ちなみに異世界攻略課の制服が黒なのは、白だと異世界で付いた汚れが目立つので変更したそうですよ。私も若い頃は、攻略課のエリートに憧れたものです」
なるほどね、危険な異世界がどんなものか想像できないけど、せっかくのエリート街道だ。
頑張ってみるか。
「ニア!俺もちゃんとお金稼げるみたいだし、これで食費の心配は…ニアさん…?」
ヤバい、目のハイライトが消えてる…まさかあのキャラが…。
「コウはエリート…私は…受付嬢なのに…エリート同士で異世界に?…私は受付なのに?なんで?…私の使徒なのに…コウも私を置いていくの?…誓いは…ううん、大丈夫…誓ったもん…うん、だよね…誓ったし…あ…そっか…そうすれば一緒に…」
見えない何かに話しかけてません?
どうやらイマジナリーフレンドが出現中の御様子。
これは包丁でグッサリいかれる日も近いかもだ。
…あえて今まで気づかないようにしてたが、やはりこれはあれだ。
キャラブレ系女神もとい、地雷系女神ですよ。
でも大丈夫!なんとなくだけど。
そう、多分大丈夫なんだよ、きっと。
とりあえずひきつった笑みを浮かべているダンディーに助けを求めよう。
「支部長ぉぉぉーっ!!なんかほら!ニ、ニアに何か言うことがあったり!?あるでしょ!?一緒に話し合いに呼んでますし!?」
「あ、ああ!勿論!…ほらほら!これ見てニアちゃん!じゃじゃーん!辞令書~!ニアちゃんも異世界攻略課に転属だよ~!良かったね~!うおっ!?…元気いいね~!よ~く読むんだよ~!」
幼い孫や子供に話しかける、爺さんのようだ。
だがニアの目に光が戻り、辞令書を爺さんから高速で奪い取ったあたり、爺さんはいい仕事をしてくれたのだろう。
「ほんとだ…。私もコウと一緒に黒制服…1人じゃない…!!エ、エリートだ!私がエリートに!!うああああっ!!ハルもアイラもケイン達もっ!全員ざまぁだ!成り上がった!!私は成り上がったんだ!!うひひゃひひゃはっ!!」
ニア…恐ろしい子!
まぁ、あれだ、一生を共に生きるって誓ったし、ちゃんとなんとかしてあげないとな。
…正直、可愛いからそんな気持ちになっているが、これが下にいた鏡餅だったら全力で逃走してるぞ俺。
「ニアちゃん、業務の引き継ぎが終わり次第転属になるからちゃんと終わらせるんだよ。寮の部屋の事も後で連絡がいくからね」
「ひゃい!うひひ…」
辞令書を抱きしめ、うひひが止まらないマイ女神。
なんかちょっと涙目だし。
「…黒石さん、これからニアちゃんをよろしくお願いしますね」
よろしくされるのはいいんだけどさ。
俺、使徒になってまだ1日も経ってないぺーぺーなのをお忘れなく。
「ええ、勿論です。なんとかやってみますよ…。支部長、ニアって昔からこんな感じなんですか?」
「…私より、メイちゃんの方が昔のニアちゃんに詳しいですけどね…。…ニアちゃんが職員になる前、裏異世界攻略へ同期の仲間に泣きながら連れて行ってくれと、頼んでいたのを見た事があります。役立たずと言われて置いていかれていた時は、さっきの暗いニアちゃんと似た感じでしたねぇ…」
メイさんが昔のニアに詳しいとな?
ニアとメイさんってどんな関係なんだろ?
それにしても、ちょっとだけ話が重いですねぇ…。
ざまぁざまぁ言ってたのもなんとなくわかったわ。
ニアを少しだけ可哀想な目で見ていると部屋の扉がノックされる。
「おっ、来たね。シン、入って大丈夫だよ」
「…失礼します」
シンとやらが扉を開けて中に入る。
すごく…大きいです…。
青くて長い髪に、彫りの深い顔。
身長は2mを余裕で超え、見るからに筋肉戦士、もしくは超兄貴といった感じのゴリゴリマッチョだ。
年齢は若くはないと思うけど、よくわからない。
ぶっちゃけおっかないっすわ。
ニアも、うひひタイムが強制終了させられたのか、はわわとか言いながらソファーの端っこに逃走しちゃったよ。
「さて、面子も揃いましたし。立ち話もなんですから座ってお話ししましょう」
ふざけたノリのまま話が進んでいったから立ちっぱなしだったよ。
ここからの話し合いはまともに頑張るぞい!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます