第51話 新しき世界の胎動~オリオンの帰還
「オスカーさま、大変です!」
マルデク情報省長官オスカーは、ここ数日、秘密の基地で新技術の開発に取り組んでいたのだが、忠実な部下アルフォンソの声にただならぬ気配を感じ、研究室の入り口に目をやった。
するとそこには地球にいるはずのオリオンの姿があり、オリオンは全身、血だらけのまま壁に体を預けて、やっとの思いで立っていた。
オリオンは、オスカーの顔を見て安心したのか、そのまま転がるように倒れ込み
意識を失った。
オリオンは驚くべき早さで、瀕死の重傷から話せるまでに回復したのだが、それでも数日かかった。
オスカーはアメリアがマルデクへ帰って来たことは風の便りで聞いていたが、エルフィンを拉致し、マルデクへ連れてきて総統へ献上していたことまでは知らなかった。
「ハンネスと私、そしてシャンバラ最後の導師ジャドさまの3人で、地球からマルデクへ、エルフィン救出のために来たのです」
いきさつをオリオンはオスカーに手短に話した。
「オスカーさまに助けを請うべきだと、私は進言したのですが、ハンネスは聞く耳を持ちませんでした」
「そうだな。いつも理性的なハンネスも、ことエルフィンのことになると、感情的なることが多かった」
とオスカーもうなずいた。
「暴走しようとするハンネスを結局、止めることが出来ず、十分な準備も出来ないまま、私もジャド師も、ハンネスと一緒に総統の宮殿へ侵入せざるを得なかったのです」
予想できなかった事態の成り行きに、オスカーは驚くばかりだった。
「ハンネスは自分の実力を過信していました。
長らく実戦から遠ざかっていたのですから、それは仕方がないことなのですが、総統の親衛隊の実力を過小評価していました。
ジャド師もこの宇宙一の医官ではあっても武官ではありません。
私も訳あって、本来の力の半分しか戦闘では使えず、少数で多勢の宮殿へ乗り込んだ結果は、惨憺たるものでした。
私はたまたまかつての部下が親衛隊にいたおかげで宮殿から逃げ出すことが出来ましたが、ハンネスとジャド師は総統の親衛隊と宮殿を守る軍隊に捕らえられ、獄につながれてしまったのです。
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