第22話 ミカエルとエルフィン 第2章 滅びの子

「今、我々の宇宙は、存亡の危機に直面している。 

 どうも“滅びの子”と言われる者が、生まれたらしいのだ。

 このものが生まれると、星がひとつ滅ぶと云われている。

 どうもそれがアトランティスで生まれたらしいのだ。

 それで統治神<シ>さまは、そのものを探している。


 そしてたまたま統治神<シ>の新しい花嫁に選ばれながら、拒否した娘がいた。

 その娘には恋人がいたらしく、突然、姿を消した。

 娘はどうも、異次元から来た悪魔、夢魔に取り憑かれてしまったようなのだ。


 そして夢魔の手先と成り果てた娘は、この宇宙を壊しかねない存在となり、今はこの地球に生を受け、様々な事件を引き起こしているらしい。


 それで統治神<シ>はその娘の処刑を戦士ヨハネに命じたのだが、その任務は遂行されることが無かった。それで統治神<シ>は、私にその娘の処刑をあらたに命じたのだ」

とミカエルはエルフィンに言った。


「ヨハネは大学校以来の親友なのだが、その娘はヨハネの幼なじみで、私にとっても大学時代の後輩なのだ。

 ヨハネは口には出さないが、娘のことが子供のころから好きだった。

 しかし娘が恋した相手は、ヨハネでも、もちろん私でもなく、異世界の王子だった。それも統治神<シ>の義理の弟だった。

 その義理の弟というのが、また、特別な存在で、異世界では「マイトレーイ」と呼ばれる救世主の次期有力候補だった。


 そして事件が起こり、娘は行方不となった。

 ヨハネは愛する娘を助けようとして、銀河中を探して、やっとこの星で娘の痕跡を見つけた。そして救出しようとしたのだが、娘に取り憑いた夢魔は、決して娘を離そうとはしなかったのさ」


「僕に何を、してほしいんだ?」

とエルフィンはミカエルに言った。


「ただ側にいて、助けてほしいだけさ」

と、ミカエルは言った。


「僕が判断を間違いそうなときは、言ってほしい。

 僕は正しい判断ができるかどうか、自信がなくてね」


 ミカエルにとって統治神<シ>の命令は絶対を意味していたのだが、それでもアシュラのことに関しては、そう簡単に割り切れるものではなかった。

 ミカエルは他の学友のように、アシュラに恋をすることは無かったのだが、それでもアシュラはやはり特別な存在だった。助けられるものならば、助けたかった。

 

「君は子供のころから、とても大人で、いつも冷静だった。

 本当のところ、救えるものなら、その娘を救いたいと思っているんだ。

 しかし主君には、逆らえない。


 君はすごいな。君の主人であるマルデク王に反旗をひるがえしたのだろう?

 あの残虐で有名な暗黒王に逆らうなんて、普通では、考えられない」



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