第4話
「わたしが言うのもなんだけどさー。本当にいいの?」
その言葉の意味は簡単だ。
キミだけこのままの状況でいいのかって話だ。
別段俺の役目はクラスにはない。そもそも俺がいてもいなくても何も変わらない。それならわざわざ手伝う必要もないし、協力体制が崩れて足手まといになるだけだ。
何よりも今更現れて何をやるんだって話だ。
「キミ。今のままなら何も変わらないよ」
「それは担任からも言われてますよ。遅刻欠席は減らせって。でも学生時代に休めるだけ休むのがいいと思うんですよねー。大人になったら働くのが当たり前じゃないですかー」
「…………まぁ、それはそうだね。休める間に休んでおくのはたしかに効率のいい話だと思う。タイムイズマネーと言うし」
「そうなんですよ。つまり、俺は変わる必要がない!!」
そうだ。俺は間違っていない。
効率のいい人生を歩んでいる俺の方が正しいのだ。
大人になれば、どちらにせよ働かなければならない。
毎日毎日汗水垂らして働き続けるのだ。なのに、子供のうちから勉学に励み、友達と和気藹々と過ごす——と言うのは、どこまでも残酷な日常になるだろうか。
上下関係がある部活動に入ったら、尚更地獄だ。
「変わる必要はないと思うけど、いつでも変われる準備はしておいたほうがいいんじゃないかな?」
「変われる準備って?」
「言葉通りの意味だよ。Cくんは子供だから変わらなくていいと思ってる。自分が大人になれば働くのが当たり前。それなら大人になるまで働くのはおかしいって思うわけでしょ?」
「はい。そうですね。働くって言うか、面倒なことはやらなくていい主義なんですよ。学生って面倒なことが多いじゃないですか。無駄にイベントごととか多いし。教師の絶対君主ですし、女の子たちにはモテないし」
「最後の方は自分の問題だよ……努力しなさい」
それを言うなら、と彼女は付け足して。
「会社だって絶対君主だよ。上司には逆らえないよ」
「そ、それは……」
「だからさ、変われる準備だけはしておきなさい!」
お姉さんは少し強めの口調でそう言った。
「大人と子供の線引きなんて、あってないようなものだからさ、今から少しずつでも良いから社会に馴染むべきだよ」
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