第7話 惨めな生活
「ほら立て、早く立たないか!」
山賊の1人に強く腕を掴まれ、わたしは無理矢理に立たされました。
手を荒縄でキツく縛られ強引に荒縄に付いた紐で引っ張られます。
引かれる度に荒縄が手首に食い込んで、手が千切れそうになり、悲鳴をあげてしまいます。
わたしを取り囲む山賊達は、わたしの悲鳴が上がる度に好色な目を向けてきますが、わたしはそれを冷静に見ている自分に驚いていました。
この1月ほどの間に2度もこんな目に遭っているのです。
慣れたわけじゃありませんが、覚悟のようなものはあります。
やがてわたしは小高い山の中腹にある洞窟に連れてこられました。
洞窟の中に入るにつれ、女性と思しき悲鳴が響いてきます。
それは入り口から真っ直ぐに延びる通路から横に掘られたいくつもの横穴から聞こえています。
わたしは耳を覆いたくなりますが、縛られたままの手ではどうすることも出来ませんでした。
恐らく彼女達は、わたしと同じくどこからか拐われてきたのでしょう。
わたしは一番奥の穴に連れてこられました。
そこにはラムス達数名が居ました。
「やっと来たか。待ちくたびれたぜ。
マクベスをこの手で殺し損ねたのは残念だが、アイツの女を犯すことで我慢してやるか。」
わたしを連れてきた山賊はわたしを縛っている紐をラムスに渡しました。
「ラムス、お前が終わったら俺達が頂くからな。
早く替われよ。」
「わかってるよ!
ちょうど良い具合にしておいてやるからよ。」
そう言うと、ラムスはわたしを近くの横穴に連れて行ったのです。
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その時間が長かったのか短かったのか、覚えていません。
ただラムスの体がわたしの上で動くのを、ぼんやり見ているだけです。
何も感じず、何も考えず、ひたすらにラムスの行為が終わるのを待つだけでした。
助けを期待することもありません。
あの時の状況から考えて、あの人が生きているはずが無いのですから。
おかしなもので、助けを期待することが無くなると、こんな状況でも諦めがつくものなんですね。
少なくとも最初があの人で良かった。
それだけがわたしの救いです。
これからどれだけ汚されようと、今のわたしにはそれで充分でした。
小1時間ほど経った頃でしょうか、ラムスがようやく立ち上がりました。
「全く面白くともなんとも無い女だな。
マクベスのやつ、なんでこんな女が良かったのか?
まぁ死んだやつの話しは、いらねぇや。」
ラムスはわたしを置き去りにして穴から出ていきました。
すぐに、最初ラムスと一緒にいた男が入ってきて、わたしに覆い被ってきました。
それからは何人もの男達がわたしに汚らしいものを突きつけていったのです。
あれからどれくらいの時間が経ったのでしょう。
時折持ってこられる食事を口にする以外は、絶えず誰かに抱かれています。
光の入らない洞窟の中では、食事の回数だけが、時間を計る術ですが、それすら数えるのをやめてしまいました。
洞窟の中に響いていた女達の悲鳴やすすり泣きも最近は聞くことも無くなりました。
皆諦めてしまったのか、それともどこかに連れて行かれたのか。
それすらもわたしには知る術もありませんでしたし、知りたいと思うこともありませんでした。
「おい、起きろ!」
食事を口にして少しうつらうつらとしていた時、声を掛けられました。
「これを着ろ、外に出るぞ。」
粗末なワンピースを投げつけられ、それを着るように言われました。
気怠い気持ちを無理に奮い立たせ、ワンピースを着たわたしは、男について穴を出ました。
通路を歩いて行くと、同じ格好をした女の人達があちこちの穴から通路に流れてきます。
やがて洞窟の入り口が見えてきました。
眩しい日差しに目を細めます。
しばらくして明るさに慣れてきたころ、わたし達女は手足を縛られて馬車に乗せられました。
馬車に揺られ2日目の夕刻、馬車が止まり、わたし達は降ろされました。
そこは街の外れにある大きな建物でした。
「これはこれはマール様、ようこそお越し下さいました。
本日の商品はこの馬車2台分ですかな?」
「そうだ。貴族の娘や大商人の娘もいるぞ。
高く買い取ってくれよ。」
「毎度ありがとうございます。
1人当たり金貨5枚でいかがでしょうか?
全員で金貨65枚になります。」
「もう少し何とかならんか。」
「では、次も期待しまして金貨70枚お支払い致しましょう。」
「分かった。また頼んだぞ。」
山賊達は金貨を受け取ると、山の方に帰って行きました。
どうやらここは奴隷商人の店のようです。
「さてお前達、わたしについて来なさい。」
奴隷商人は、わたし達の足の縄を解くと、わたし達に建物の中についてくるように促します。
わたし達は足を引きずりながら後について行きました。
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