第3話:私達、隣同士じゃなくなるの?

 プリシラは青ざめ泣きそうになり、リムの方に身をのり出し、魅力的な丸く黒い、くりくりとした目をもっと丸くして潤ませ、リムを凝視した。いつもプリシラにクールに装うリムも、その瞳にはかなわず、プリシラが気の毒に思えたし、自分も悲しくなった。


「分かんない。親の都合だし、考え中だから。でも、一応バレジアの高校はいくつか受けておくんだ。受験の時はバレジアに行ってくる」リムはあくまでも事実を淡々と話した。


「ええ・・・・・・」プリシラは信じられなくて、リムから目を反らし、うつむいて意味なく持ってきた鞄や教科書に目をうつした。


 プリシラはやがて1人になっても、リムの家が隣同士で、ずっとリムと互いに助け合って生きていくもんだと思っていた。それは、小学生のプリシラには、互いに自立して愛し合うということではなかった。


 いとこのロックと、その一家は事情でバレジアに引っ越して行ったが、リムとはずっと隣同士か、どちらかが引っ越しても、同じ村の中で、すぐ歩いて行ける所だろうと思っていたし、そうでなくてもブレジア州内だと思っていた。


 ケビィが他の村や街の学校に行ったり、大人になって遠くに就職したりすることがあっても、リムはなぜかずっと自分の隣にいるもんだと思っていた。それなのに、列車で3時間以上もかかる都会に行ってしまうなんて・・・・・・。


 リムもプリシラとの関わりは中学生になってから照れもあって、面倒になってきたとはいえ、どこか、プリシラとはずっと隣同士でいる気がしていた。嫌々ながらも、プリシラの勉強や、プリシラが就職すれば仕事のことや、分からないことはトゥオルより自分がずっと教えたいと思っていた。

 

 2人共、恋愛とか結婚とかについては、年齢もあるが、本気で考えていなかった。ただ、お互いにずっと傍にいるもんだと当たり前のように思っていた。


 プリシラは小さい頃から、よく意味は理解していないものの、“リムお兄ちゃんと結婚したい”と思っていたし、リムや周りにも言っていた。今もプリシラにとって、リムは大好きな隣の、はとこのお兄ちゃんであり、小学6年生の女の子として、少しドキ!っとする恋心のようなものを抱くような頼れる特別な思いを持つ年上の男子だった。

その辺の気持ちや考え方は、2人はまだ思春期で幼く、あやふやだった。




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