第17話 ミーアと冒険者ギルドに行きます

スタイロンさんの店を出て、大通りを10分くらい歩くと、『ドラゴンの上に剣と槍が重なっている』看板に到着した。そう、冒険者ギルドだ。


今朝来て冒険者登録したばかりで、すぐにラスク亭の専属になった。


そして、夕暮れ時となる今、ミーアの登録をしようと再び冒険者ギルドを訪れたのだ。


入口から中に入ると、今朝とは違い冒険者達で賑わっていた。


早朝に依頼を受けたフリー冒険者の皆さんがこの時間に依頼の達成報告にやってくるのだ。


朝は少し遅い時間だったからよく分からなかったけど、さすがは王都の冒険者ギルド、多くの人で賑わっている。


受付で並んでいる人、治療を受けようと礼拝堂に並ぶ人、奥のバーに陣取り、パーティーで呑んで盛り上がっている人達等、全くラノベの世界そのままの光景に俺は感動していた。


「どうしたの?」


ミーアが心配そうに俺を見ている。


「いやあ、すごい人だなあと思って。」


「本当だね。僕の国にも軍人達が集まる場所があるけど、こんなに多くはいないよ。人間の街ってすごいね。」


ミーアも雰囲気に呑まれそうになってたんだなあと思うと無性に愛おしくなり、また抱きしめてしまった。


「もお。」


周りから感じる生ぬるい視線に気付いた俺達は、恥ずかしさから人波を避けるように端の方に移動した。


「あら、ヒロシさんじゃない。」


聞き覚えのある声に振り向くと受付のミルクさんが立っていた。


「ミルクさんこんにちは。」


「はい、こんにちは。早速報告に来てくれたの?」


「ええ、それもあるんですが、実はここにいるミーアの冒険者登録をお願いしようと思いまして。」


「あら、可愛いお嬢さんね。冒険者になるようには見えないけど。大丈夫?」


「そうですね。結構強いんじゃないかと思うのですが、俺も皆さんの実力を知らないので何とも言えないですが。」


「そうかヒロシさんは、実力測定しないままにラスクさんとこの専属になったんだったわね。


どう、その娘の実力診断も兼ねて実力測定を受けてみない?


実はね、ラスクさんがあなたのことを専属指名したから、ウチのギルマスが興味を持っちゃったのよ。


実力測定の時に紹介するわね。」


「よろしくお願いします。」


ギルマスと言えばスタイロンさんから紹介状を貰っていたっけ。ちょうど良いや。


ミルクさんに連れられて受付の中を通り過ぎ、裏庭に移動する。


そこには広大な敷地と様々な武器や的が設置されていた。


「ちょっとギルマス呼んでくるからここで身体でもほぐしておいて。」


ミルクさんが足早に建物に入っていったので、俺達は軽く体を動かしながら武器なんかを見て回る。


へー、いろんな武器があるもんだ。


時代劇でよく見る刀や槍、薙刀、鎖鎌などを始め、香港映画に出てくる牛刀、ヌンチャク、三節根みたいなものもある。


向こう側には中世ヨーロッパで使われていた武器もあるみたいだ。


しばらくそれらの武器を見ていると、ミルクさんとガタイの良い中年の男性がやってきた。


「ヒロシさんお待たせ。こちらが冒険者ギルドギルドマスターのホールドさんよ。」


「やあ、君がヒロシ君か。あのラスクが実力も見ないで専属に即決したって言うから興味津々でね。


おっと、挨拶がまだだったね、初めまして、私がここのギルマスのホールドだ。」


「ヒロシです。よろしくお願いします。」


「よろしく。うん? そこのお嬢さんは?」


ホールドさんのミーアを見る目が少し鋭い。


「この娘はミーアって言います。あっそうだ、スタイロンさんから紹介状があります。」


俺はスタイロンさんからの招待状をホールドさんに手渡す。


「スタイロンが?」


首をかしげながら俺の手から紹介状を受け取るとすぐに開いて読み出す。


「......うーん。やっぱりそうか。スタイロンの奴が言うんだから間違いないんだろう。


ヒロシ君、君もスタイロンからだいぶ買われているみたいだね。


こりゃ、面白いことになりそうだ。よし、早速実力測定を始めよう。私が測定するよ。


ミルク君、ちょっとこの訓練場にいる冒険者達を外に出して、完全封鎖しておいてくれるかい。


音も、振動も聞こえないように結界も忘れずにね。」


ホールドさんがミルクさんに指示を出し、ミルクさんが他の職員に声を掛けて動き出す。


10分くらいで広い訓練場は僕達だけになった。


「ギルマス、結界張り終えました。」


「ご苦労様。よし、これで気兼ねなくやれるな。


一応ミルク君も見ておくかい。但しここで今から起こることは他言無用だよ。いいね。」


頷くミルクさんを見て確認すると、ホールドさんはこちらを見て話し出す。


「よし、まずは2人の実力を見せてもらいたい。2人で模擬戦をやってくれるかい。

武器、神通力も使って構わない。


もし怪我をしても、ミルク君は回復の神通力が使えるからね。


じゃあ、訓練所の中心に行って、......準備はいいかい。始め!」


30メートルくらい離れて俺とミーアが向かい合い、ホールドさんの合図とともに動き出す。


2人とも素手だ。


ミーアは森の中同様、すごいスピードで走ってくる。


俺も高速演算を使って、ミーアの繰り出す拳を避ける。森の時は直線的な動きが多かったけど、結構回り込んだり、上下を使っての攻撃が増えているので、対応するのが大変だ。


それでも、動きに目が慣れてくると、こちらから攻撃できるようになってきた。


すると、ミーアも一度俺から離れて、今度は魔法を使ってくる。


炎を竜の形にして放ってくるヤツ。ラノベの定番でカッコいいヤツだ。


じゃあ俺は虎っと。虎をイメージして、火魔法中級を放つと、俺達のちょうど真ん中あたりで竜と虎はぶつかり、大きな衝撃と共に霧散する。


「そこまで!」


ホールドさんの声で、俺達は模擬戦を中断した。


ミルクさんは茫然としており、口からよだれを垂らしていることにも気付いていないみたいだ。


「スタイロンが想像していたよりも凄まじいかも知れんな。そっちのミーア君は魔人だからとしても、ヒロシ君については説明がつかん。


いったい君は何者なんだ?」











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