第96話 騎士団長の息子は初夜に挑む
「それではごゆっくり」
定例の言葉を言ってから部屋から出ていく侍女。結婚式も終わり、身を清めてからアリスは薄着になって恥ずかしそうにベッドでもじもじしていた。これから何をするのかをしっかりと理解しているのだろう。
可愛い反応を見せるアリスの隣に座ると初々しく目をぎゅっと瞑ったので俺は優しく頭を撫でてから出来るだけ優しい声音を意識して言った。
「そんなに怖がらなくて大丈夫だよ。緊張するのはわかるけどね」
「……エクスは緊張しないのですか?」
「凄くしてるよ。だってこれは俺にとっても初めての経験になるからね」
そう微笑むとアリスは少しだけ肩の力が抜けたようなので少しだけ話をすることにする。
「今日は色々あったよね。アリスのウェディングドレス姿綺麗だったよ」
「そ、そうですか?私はエクスのタキシードが素敵だと思いました」
「それは嬉しいよ。ありがとう」
正直俺のタキシード姿なんて皆そこまで注目はしてなかったが、本日の主役は花嫁であるアリスだ。そんなアリスを嫁に出来たのだから俺は幸せ者だろう。
「皆さん凄く祝ってくださいました。リンス殿下やシンシアさんには凄く祝福されたのでいつかお返しがしたいです」
「まあ、二人の結婚式でそれはしようか」
リンスと王女様の結婚式は俺達の新婚旅行が終わってから、半年くらいしてから、リンスに王位を譲ると同時に行われるそうだ。えらく大々的なものになってしまうのが残念と言っていたが、まあ、そりゃそうなるわな。俺とは違い王族の結婚というのは大変だろうからね。
「お義父様凄く喜んでくださいましたね」
「まあ、そうだね。母上もだけど祝ってくれたね」
えらく今日は涙を流して喜んでくれた父上。キャラが分かりにくくなるが、まあ祝ってくれたのはありがたいことだ。明日の任命式が終われば上司に、そしてやがて騎士団長の座を受けとることになるのだろう。まあ、それがいつになるかは未定だが、そんなに遠くないことは確かだ。
「お義母様とミスティ公爵にはまた今度お礼を言いにいくよ」
「お父様もエクスのこと嫌いではないと思うのですが……」
「大丈夫だよ。わかってるから」
男親とはそういうものだ。特に娘を渡すとなればそんな反応になるのも当然だろう。とりあえず孫を見せるまでにはそこそこ仲良くなりたいものだ。まあ、その子供を作るのが今から行うことなのだが……アリスは今までの会話で少しだけ普通に戻りつつあるので、徐々に雰囲気を作ろう。
「そういえば、エクスの教え子さんたち可愛かったです」
「それは良かった。また今度連れてくるよ」
ガリバー、ライア、マナカの三人も嬉しそうに祝ってくれた。ライアとマナカは花嫁姿のアリスを見て目を輝かせていたので、結婚というものを教えることは成功だろう。ガリバーはまだ子供だからかそこまででもなかったが、純粋に祝ってくれたのでよしとしよう。
「でも……私本当にエクスのお嫁さんになったんですね」
左手の薬指にはまった結婚指輪を見ながらそう呟くアリス。そんなアリスの肩を抱きながら俺は頷いて言った。
「ああ、もう絶対にアリスを離さない。これからはずっと一緒だよアリス」
「はい。エクス……私もずっとエクスの側にいたいです」
こちらに頭を預けてくるアリス。そんなアリスを抱きしめながら俺は言った。
「ようやくだ……ようやくアリスと夫婦になれた。夢が叶ったよ」
「夢ですか?」
「ああ。アリスをお嫁さんにする。それが俺の夢だったからね」
「エクスも私と同じ……」
「そうなるね」
嬉しそうに微笑むアリス。そんなアリスの可愛さに悶えつつ俺はアリスと顎をくいっとする。すると意図を汲み取ったアリスが目を瞑ったのでゆっくとキスをする。最初は軽い口づけ程度に。やがて少しずつ深くしていく。アリスの全てを支配していくような甘い感覚に脳が痺れる。
「エクス……もっと……」
甘えるようにおねだりをするアリスに微笑んでから俺はさらにキスをする。何度も何度も互いを確かめるようにキスを交わしていくと、やがてどちらからともなくベッドに雪崩れ込むようにして絡み合う。俺がアリスのマウントを取るとキスにて上気した頬を赤くしながらアリスは俺の頭に手を回すと切なそうに言った。
「エクス……全部ください……私にエクスの全部を」
「なら、アリスは俺にアリスの全てをくれるのかな?」
「うん……だから、お願いエクス……」
そうしておねだりされては断れない。まあ、元より断る選択肢はないが、それにしてもそうか、もう我慢する必要はないのか。俺はアリスのことを本気で愛でてもいいんだ。だって夫婦になったのだから。これからはアリスとずっと一緒にいられる。こんなに幸せなことはない。だから、最後に確認なんてせずに俺は一言だけ言った。
「愛してるよ。アリス」
「私も……大好きですエクス」
そうしてそこからは言葉はいらなかった。互いにキスを交わしてから俺達はこの日一線を越えるのだった。ただ一つ言えるのは……アリスが凄く可愛かったということだけだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます