第94話 騎士団長の息子は婚約者と結婚式をする
「おはようございます、父上、母上」
結婚式当日の朝、早くに朝食を取りにいくと、珍しく二人もいたのでそう挨拶をすると父上が元気に言った。
「おはよう、エクス。今日だな」
「ええ。いよいよです」
待ちにまったアリスとの結婚。楽しみ過ぎるのが伝わったように母上は言った。
「全く、エクスくらいよ。そんなに結婚式を楽しみにするのは」
「そうでしょうか?」
「ええ、この人ったら結婚式当日に忘れて任務に行こうとしたくらいですもの」
「それは、すまなかったと何度も言ってるだろう」
父上らしいので苦笑してから食卓につくと、母上が聞いてきた。
「それにしても卒業してすぐに結婚式なんてよくやるわね」
「ええ、すぐにアリスを嫁にしたかったので」
「明後日騎士団の任命式。終わってすぐに新婚旅行っていうのも凄いけど、それにしてもエクスもこれで副団長になるのね」
結婚式から1日あけると俺はいよいよ副団長になる。まあ、ついでに別の騎士団の式もやるけど、そこはスルーで。そしてそれが終わったら新婚旅行をして新婚旅行から帰ってきたらいよいよ俺とアリスの新婚生活が始まるのだ。今から楽しみすぎてヤバい。
「あのエクスが結婚……凄く不思議だけど嬉しいわ」
「うむ、よく元気に育ってくれたものだ」
「お二人のお陰です。ありがとうございました」
「……ええ、そうね」
少しだけ寂しそうに微笑む母上に対して父上はどこか気を使ったように言った。
「孫の顔を楽しみにしているからな」
「ええ、しばらくはアリスとの新婚生活を楽しみますが早くにくるに越したことはないので」
子供は巡り合わせなので少しだけ心配だが、それでもアリスとの子供なら完全に愛してしまうだろう。男の子でも女の子でも可愛いだろうなぁ。
「まあ、爵位も近いうちに渡すことにしよう。騎士団長の座につくときにな」
「ええ、よろこんで」
まあ、しばらくは副団長だろうから爵位ももう少し先の話なのだろうとこの時の俺は思っていたのだった。
結婚式を行う教会の控え室で俺はかれこれ1時間くらい待っていた。アリスの花嫁姿を今か今かと待ちわびている俺の姿は新郎らしくタキシード姿だ。まあ、俺の姿など些細な問題だ。俺が求めているのはアリスの花嫁姿。自分で用意した最高の素材で作られたものをアリスがその身に纏うことだ。
「あら、エクス似合うわね」
そんなことを考えていたら母上が先に部屋から出てきた。その後に続いてお義母様が出て来て俺を見て微笑んだ。
「本当に格好いいわ。素敵よ」
「ありがとうございますお義母様。それでアリスは……」
「ふふ、慌てなくてもすぐに出てくるわ」
「お、お待たせしました……」
その言葉と同時にアリスが部屋から出てくるが――俺は不覚にもフリーズしてしまっていた。純白のウェディングドレスに身を包んだアリスはさながら天女のようで、素朴な美しさを存分に出していた。いつもの可愛いより少しだけ大人っぽく感じてしまい、はっきり言ってめちゃくちゃ好みだった。
そしてその反応を見たアリスが何か行動を起こす前に俺を見てぽーっとこちらを見つめているのがわかり、アリスが俺のタキシード姿に見惚れているのがわかった。まさか新郎新婦が共に互いに見惚れてしまうとは思わず少しだけ苦笑してから俺は素直な感想を言った。
「凄く似合ってる。可愛いし美しいよアリス」
「あ、ありがとうございます。エクスもその……格好いいです」
「うん、ありがとうアリス」
その光景を見ていた母上とお義母様は二人とも微笑ましそうに見ていたが、ふと、アリスの胸元を見てから言った。
「やっぱり、二人ともそれは外さないのね」
ロケットペンダントのことだろう。アリスのウェディングドレスとの組み合わせも悪くはないが、少しだけ不釣り合いなそれを見てそう聞かれたので俺は頷いて言った。
「結婚指輪と同じくらい価値がありますから」
「はい、エクスとの絆ですから」
「ふふ、ラブラブねぇ。私も羨ましくなるわ。ねえ、マキナちゃん」
「そうですね」
何やら親しげな母上とお義母様。まあ、仲が良いことは悪いことではないのでいいか。
「お二人とも準備ありがとうございました」
「いいのよ。それに私達よりマリアちゃんが頑張ったてくれたからね。お礼はあの子に言いなさい」
どうやらヒロインはちゃんと仕事をしたようだ。まあ、それならそれでいいか。アリスともうまくやれているようだし、隠しキャラも順調に落としているようなので何よりだ。
「じゃあ、行きましょうか」
その言葉で俺とアリスも歩きだすが、ヒールが馴染んでないのかこけそうになったアリスを俺はふわりと抱き止める。
「あ、ありがとうございますエクス」
「うん。じゃあいよいよ本番だけどその前に……大好きだよアリス」
「……はい、私もです」
そうして微笑みあってから俺達は会場に向かうのだった。大好きなアリスとの大切な結婚式がいよいよ始まると思うと凄く楽しみでもあり、アリスの姿を永遠に記憶に焼き付けようと思うのだった。
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