第62話 - 調査隊の処遇

話を聞いていたゾフィが聖騎士たちを哀れみ始めた


「ねぇ、エーサー…せめて数日くらいは休ませてあげない?」


エーサーは横目でゾフィを睨みつける


「女たちを守るために俺はこの街を作ったんだ。口を出すな」


ゾフィは目を伏せて話し続けた


「そう…だけどさ…この人たちももう帰るところないじゃん…ここにいる女たちと一緒だよ…」


アンリが顔を上げて強く話し出す


「エーサー殿!お願いします!神に誓って彼女たちを傷つけないことを誓います!雑用でもなんでも致します!」

「黙れ、休むだけならアントガに行けばいいだろう」


ゾフィがエーサーの耳を引っ張る


「エーサーがそんな薄情だったなんて知らなかった!そんなんで女たちを守るなんてよく言えるね!」

「ぐ……」


クレマリーが涙を拭き、目を閉じて謝罪する


「エーサー殿、お話は理解しました。正式に謝罪し聖騎士の職をここで捨てます。どうか…エーサー殿のお手伝いをさせて頂けないでしょうか」


デリックが驚いて目を丸くする


「隊長…マジですか…」

「お前はどうするんだ?冒険者として生きるか?ヴァルストなら奴隷という選択もある」

「そんな…無茶な…」

「我々は異端を証明できなかった、時が過ぎれば次の聖騎士が派遣されるだろう。私はもうお前を守ってやれる力はなくなった…すまない…」

「………」


デリックも俺を見つめ頭を下げる


「すいません、エーサー殿。今までの非礼をお詫びします。女たちを守るための騎士として生まれ変わります。我々を受け入れて頂けないでしょうか…」


頭を下げる一同を見てゾフィが立ち上がる


「エーサー!男だろ!領主になるんだろ!器を見せろ!」

「………」

「お前!!……呪鎧に乗って暴れてやるからな!!」


エーサーは目を丸くした


「い”!!何言ってんだゾフィ!ここを壊す気か!」

「その程度の器の男に惚れたんじゃないんだよ!いい加減にしろ!!」

「く……少し待て…」


元は聖騎士、剣術や武器の扱いには長けている。正直な話素人の集まりである街の護衛がいないため彼女たちが居たほうが確実に自衛力はあがる

それに体力もあるし回復魔法まで使える可能性がある

医者としても有用だろう


「わかった…しばらく様子を見よう。俺の期待を裏切ればその頭を砕いてやるからな」

「「「ありがとうございます」」」


ゾフィはうんうんと頷き、外へ出ていく


「みんな!ご飯の用意をしてくれ!新しい仲間たちを紹介する」


おい、俺は様子を見ると言ったんだぞ


今も頭を下げ続ける聖騎士たちを見てエーサーは大きなため息をついた


「はぁ…顔をあげてくれ、飯にしよう」


◆ ◆ ◆


天気のいい昼だった

草原が風にそよぐ音が心地よく響き

聖騎士たちを迎えてみんなで食事をする


クレマリーはエーサーのところへ挨拶をしに来た


「あの…本当に申し訳ない…こんな事までしてもらって…」

「やったのはゾフィだ。後で礼を言っておけ」

「それはもちろん。ところで…私たちは何ができるでしょうか」

「マドロアは回復と結界が得意だったな。お前は何ができる?」

「あ、回復と結界は皆使えます。マドロアは特化しており威力はここにいる誰にも負けませんでしたね」

「そうか…3人とも戦闘は得意か?」

「はい、3人でかかればオークジェネラル1体なら倒せるでしょう」


それはすごいな

オーク100体を軽く吹き飛ばす連中だぞ

こいつらは一人で30体くらいのオークの集落も潰せるんだな


「わかった、基本は街の護衛につけ。希望する者たちがいたら魔法を教えてやってくれないか?まだ街には医者がいないんだ」


クレマリーは明るい顔をし、胸に拳をあてて返事をした


「はい!ありがとうございます!」


そういえばこいつらはどうするか…

街は俺とゾフィ以外は全ての女たちが俺の奴隷だ

彼女たちだけ違うというのはまずい、穢れた女たちが逆に目立ってしまう


「そういえば、命令が一つある。この街で暮らすための条件だ」

「はい、何なりと」

「残り2人も連れてきてくれ」

「かしこまりました」


クレマリーはデリックとアンリを連れてきて俺の前で跪き頭を垂れる

続くようにデリックとアンリも跪き頭を垂れた


穢れた女たちが囲むように俺とクレマリーたちの周りに広がっていく


「集まったな、この街はゾフィを除く全員が穢れた女たちで俺の奴隷だ。ヴァルストでは主人のいる奴隷は身の上を聞かれないので都合がいいからそうしている。お前たちだけ特別扱いすればかえって穢れた女たちが目立ち、中傷されるおそれがある。女たちを守るならお前たちも俺の奴隷として誓いを立てろ」


3人はしばらく黙っていたが声をそろえて返事をした


「「「かしこまりました」」」


こいつらが後で聖騎士たちに追われるとしてもこれで身元があちこちに広まる事もないだろう、一石二鳥だな


デリックがほっと安心したように冗談を言い始めた


「よかった…オークに穢されて来いと言われるのかと…俺の純潔は守られた…」


クレマリーとアンリは吹き出し、穢れた女たちも笑い出した

釣られて俺も笑ってしまった


「男を穢すオークがいるなら呼んでみたいものだ、話をしてみたい」

「ちょ!冗談ですって!!勘弁してください!」

「ふふ、お前たちの腕前には期待している。街の自衛力は課題だったんだ」

「それはもう、我々の知識と力は存分に街のために役立てます」


実際中傷される恐れない者たちは便利だ

今後増える可能性のある外部との取引も任せてしまおう


「よし、警備はクレマリーが仕切れ。中傷される恐れのないお前たちに外部の商団との取引も任せる。身を粉にして貢献しろ」

「「「かしこまりました」」」


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