少女、初めての冒険 

※主人公以外の別視点のお話※



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 初めまして、ステラ・シャンプーです、5歳です。

いつも通り私は天蓋付きの大きなベッドで目覚めます、領主様のおうちよりは大きくありませんがそれでもこの街では二番目に大きなおうち、それが私のおうちです。


「お嬢様おはようございます、お食事をお持ちしました」


 部屋にメイドさんが入ってきます、私が生まれてからずっとお世話をしてくれています、普段のおでかけなんかも彼女が一緒です、名前はアリスと言います。

 お食事を持って来てくれたようなのでたべる事にします、家では家族そろってご飯を食べません、お父さんはお仕事で忙しく、お母さんも生まれたばかりの弟と、下の妹にかまってばかりで私の事を見てません……いえ、思えば生まれてから一度も私はお母さんに見られた覚えはありません。


「今日も外におでかけに?」

「うん」


 最近私はある男の子を探してます、黒髪をした私と同い年の男の子。お名前は確かティグレ君、私の髪の色と目を綺麗だと言ってくれた男の子。この街の聖堂で才能鑑定をしていたから、この街のどこかに住んでると思うから街をアリスと一緒に歩いて子供達が集まる所を探したりしてますけど、見つかりません。


 アリスが言うには、おそらくですが街の外に住んでいるのでしょうと言います。

街でも噂を聞きます。町はずれにとてもすごい冒険者にも関わらず大罪人の血が流れていると言う話のある黒髪の女性と結婚した男の人が暮らしていると。

その息子がティグレ君なんだと思います、だとしたら外に探しに行きたいですが。


「お嬢様、街の外には出てはいけませんからね」

「……うん」


 街の外、門の前には衛兵さんが入って来る人の出入りを管理しています。ここから

外に出る事はアリスが隣にいるのもあるので難しいです。仕方ないので大人しく公園など、子供が遊びに来そうな場所に行く事にします。


「…………くろいろ?」

「お嬢様? ……あれ?」


 裏路地に入っていく黒色の影が見えました、私はもしかしてティグレ君じゃないかと追いかけます、どんどん細い路地に入って行きますが、なんとか追いつきました。

 ですがそこにはティグレ君はおらず、間延びした声で鳴く猫達が陽だまりで集会をしてました、私が見た黒色はその中にいる一際大きなリーダーであろう黒猫だったようです。それに。


「どうしよう、まよっちゃった」


 私は猫集会のお邪魔にならないようにすぐに路地から出て行きますが、ここがどこだかわからない処に出て来てしまいました。アリスともはぐれてしまって、このままではお家に帰る事も出来ません、当てもなく路地裏に入ってみたり、大通りにさえ出る事が出来ればと歩いても大通りにはちっとも出れず、最後には。


「これ、じょうへき……だよね」


 一番外側まで歩いて来てしまったようです、お腹もすいて、足も疲れました、人もいないし、このまま私はここで死んじゃうのでしょうか。それは嫌です、せめて最後にティグレ君にお人形を取り戻してくれた御礼を言うまでは諦めたくないです。それに考えてみれば城壁のある一番外側に辿り着いたと言う事はこれを辿って行けば、いずれは正門につく筈です。そうでなくても大通りが見えるかもです。

 

 私はそう信じて、壁を伝って歩いて行きます、そして。


「これ……もん? でもだれもいない」


 誰もいない門に差し掛かりました、こんなところに門があったんだ、門は正門よりあまり大きくありません、半分くらいでしょうか、衛兵も立ってません、誰でもいつでも入って来れてしまいそうです、悪い人もきっと入ってきてしまうでしょう。

 でもまぁ、この街の衛兵も冒険者さんも凄く強いとアリスが言ってました、この街で何かをしでかすと言うのは、あまり得策ではありませんとも。でもこれは……


「ここからもりにはいれる?」


 衛兵もいない、アリスもいない、今ならここから外にそこにある森へ入れます。

これを逃したら街の外に出れる日が来るかわかりません。そう思った時私の足は何時の間に門を超えて森の中へと入っていました。

 少し歩くと、道が出来ていました、石や砂利で舗装されてる訳では無いですが下草が刈られているので、森の中を歩くよりも楽でした、やがて。


「おうちだ……」


 森の中に平屋建ての一軒家がありました、そしてその家の扉が開きます。

そこにいたのは探していた男の子ティグレ君と、噂で聞いた、冒険者さんと結婚した女性でしょう、顔の彫りこそ薄いですが目鼻の整った顔立ちをした白い肌の綺麗な服を着た黒髪の凄い美人な人が出て来ました。あれがティグレ君のお母さんなのでしょうか。


 ティグレ君は森の中へと走っていきます、私もそれを追い掛けます。ティグレ君の走る道は獣道ではありましたが、何度も往復してるのか、思いの外苦労なく進めますそして、少し開けた場所で私はとうとうティグレ君と会えたのでした。


「ここ、こんにちはっ!」

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