ナナの欠落した記憶とは(4)
ナナは、原西の次男たちの悪事の動かぬ証拠を掴み、これで原西の次男たちを罰することができる。問題は、どうやってここから鈴の所に行くのか、車で1時間40分かかる。逃げ出すのは簡単、ナナ専用の外への出入がある。伊藤はナナが逃げないようにしつけていた。
そこで、ナナは考えた。3日後、あの地下研究室に行く。その時、キャリーバッグから出る時の一瞬の隙を狙って逃げる。これで距離を稼ぎ、鈴の所までは車で40分の距離。
ナナは普通の猫ではない、普通の猫とは比べものにならない、なんとか自力で行ける距離。ナナは、ネットで地図を確認し、最短ルートを頭に叩き込み。いつものように日々を過ごし、体調は万全、3日が経った。
いつものように2人は車に乗り込み。ナナは、後部座席のドライブボックスに入り、作戦はきっとうまくいく、そう信じ逃げる時を待った。
ナナを乗せた車は、東京第一動物病院の駐車場に着くと、雨がぱらつき始め。伊藤は、急いで後部ドアを開け、キャリーバッグに手をかけたが、雨が気になり。
ナナは、逃げるなら今だと思い、素早い動きで車から飛び降り、一目散に逃げた。走るスピードは、普通の猫の倍のスピード。
時刻は午後4時を過ぎ、辺りは薄暗くなり、雨も降り出し。ナナは、ふと今迄のことが走馬灯のように思い出し、裏切られた悔しさや悲しさで泣きながら走っていた。そして、鈴の家の玄関先で記憶を一部なくし倒れていた。
一方、伊藤は呆然と立ち尽くし、いったい何が起きたのか、目の前にいたナナがいない。なぜいなくなったのか、訳がわからない。しばらくして、スマホのアプリでナナの位置情報を確認するが、GPSの反応がない。雨で故障したのか、防水加工はしていなかった。
このことを知った原西の次男は激怒し、呆然と立ち尽くし。10年間の苦労が水の泡と消え。この日、原西の次男はネットでLIVE配信を行い、ナナを世界に知らしめる予定だった。そして、俺をバカにした連中を見返すはずだった、なのにどうしてあいつはいなくなった、原因がわからない。もしナナが喋れば必ずネットが騒ぎ出す、その時を待つしかない。どんな手を使っても必ずナナは取り戻す。
試験中の猫は、あと2匹いるが、あと1年はかかる。問題は、ナナのような猫になるのかわからない、なんでこんなことになるんだ。
それから、3日経ってもナナはネット上に現れない。1ヶ月経ってもナナはネット上に現れない。原西の次男は、まさか、もうナナはこの世に。頭をよぎるが、ナナを諦めずにいた。
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