第6話森の魔女
どれだけ進んだろうか。
曲がりくねった道をくねくねしながら暗闇の中を歩いていく。
時間の感覚がどんどん分からなくなってくる。
道中、巨大な蜘蛛や大蛇に襲われたが、【探知】により把握済みで焦る事もなく、即時に発動させる【
ようやくして暗闇を抜けると、大きな川にぶつかった。
川の向こうはやはり森だが坂になっている道があり、抜けた先には洋館の様な建物が見える。
ここからではよく見えないな。
川を渡ろうと周囲を見渡してみるが橋などは見当たらない。
【土魔法】で足場を創るか?
それとも【風魔法】で飛ぶか?
いや待てよ?確か【転移】てあったよな?
【転移】
一瞬で対岸に移動した。
まさに瞬間移動だ。
魔法って凄い!
これを戦闘に組み込めばめちゃくちゃ強いんじゃないか?
意気揚々と坂を駆け上がっていく。
洋館には誰か住んでいるのだろうか?
橋も架かってないし、既に廃墟なのかもしれない。
坂も半ばといったところで突如何もない空間がピリついた。
放電か。
バチバチと電気を発生させながら、黒い闇が円を描いて、ヴヴヴ……と広がっていく。
闇から現れたのは、透き通る程の真っ白い肌に、腰まではある長い銀髪、スラリとしたスタイルに黒い衣を纏う、真っ赤な目が印象的なお姉さんだった。
吊り目がちな鋭い眼でこちらを睨んでいる。
敵なのか?
「ふぅ、眠っておったのに。
ここより先はわらわの棲み家ゆえ、通すことは罷り成らぬ。
わらわは眠い、帰るがよい」
館の主人は俺になんの興味もなく眠そうにしている。
そうだよな、人ん家勝手に入ったら駄目だよな。
空中に浮いているお姉さんの回りがまたピリ付き再び黒円が広がったと思ったら、
「ん?
わらわの花や小鬼共の反応が……
そうか、貴様じゃな?」
「え?いや、突然襲われたというか」
「償うが良い」
会話できる状態にない!
お姉さんの目がブゥンと赤く光った刹那、巨大な鎌の様な風刃が、首筋を狙って襲いかかる!
あっぶねっ!
間一髪【転移】で距離をとる。
急ぎ【
「今のを避けるとはやるようじゃの」
お姉さんがぶつぶつと何かしら呟くと、左右の木々から多数の枝が伸びてくる。
【
しかし、数本の枝が火の壁をもろともせず突き抜けてきた!
「え?そんなっ!」
手足に巻き付きもがいていると、お姉さんの周りにいつの間にか複数の黒い穴が空いている。
その黒穴から鋭い槍が次々と飛び出す。
「【
このままじゃマズイ!
【
強い!このお姉さん!
時間を戻さなければ死んでいた。
戦闘が始まる直前に時を戻し、次はこっちから先に仕掛けてやる。
「償うが良い」
「お姉さんごめんなさい!」
【
お姉さんの使った魔法を真似して発射してみる。
これは躱せないだろう。
ズドドドドッ!
直撃かと思ったら、霧がモヤモヤと漂っている。
霧になって無効化?
そんなんアリか?
霧が集まり、再びお姉さんの姿形に戻る。
「【
既にお姉さんの【闇魔法】が発動していたようだ。
黒い鎖環が俺の両手両足を、きつく縛り上げる。
「グググ……」
付与魔法でガードしてる筈なのになんでこんな簡単に食らう?
魔法の力量差?
【
お姉さんの影から悪魔の様な黒い影が現れた。
それは凄まじいスピードで俺に向かって襲いかかってきた。
【転移】発動、間一髪避ける。
が、お姉さんはすでにこちらに向けて魔法を発動していた。
「【
黒い弾丸が【転移】を繰り返す俺に軌道を変え無限に追ってくる。
【
どうしたら?あ、しまった!
召喚された影に後ろから羽交い締めにされ追跡する弾丸が迫る!
【
結局、時間を戻してしまう。これではいつまで経ってもお姉さんを攻略できない。
何か対抗手段はないか?
【闇系魔法】を多用する相手には、【光魔法】か!
【
「償うが……」
台詞中に申し訳無いが先制攻撃だ!
お姉さんに光の矢が突き刺さるが、またもや霧となり回避される。それでも、もう実体化するタイミングは分かっているんだ。
お姉さんの背後に【転移】し、光の壁を創り出し実体化した瞬間に閉じ込めた。
咄嗟に振り返るお姉さんの顔は驚愕に満ちている。
更に魔法陣を発動し追撃!
「【
ズドドドドドッ!!
回避不能の衝撃がお姉さんを何度も何度も貫き小爆発を繰り返す。
お姉さんは頭をがっくりと下げて動かない。終わったか?というか、死んでないか?
「ふふふ、森の魔女にこれだけのダメージを与えるとはやるではないか」
話終えるや否や、ムクッと顔を上げて目を見開き俺の目をジッと見る。
【闇の
【
今のは魅了状態にされる魔法だ。
危ないとこだった。
状態異常系にはもう正直掛かりたくはない。
先に仕掛けてやる!
「ふふふ、森の魔女に、む?貴様!?」
【闇の
「何!?
先に魅了を……かけるとは……」
「魔女に魅了が効くわけが……ない……」
効かないのか?辛そうに見えるが。
「くう……貴様、もしや時間干渉しておるな?」
お姉さんは魅了を耐えながら、話掛けてくる。
「え?」
どうして分かったんだ?そもそも分かるものなのか?
「やはりそうか。
ええい、負けじゃ負けじゃ、わらわの負けじゃ!
好きにいたせ!」
え?負けを認めるの?全然勝った気しないんだけど。
お姉さんの目がとろんとしている。魅了状態になったのかな?
「貴様……名は?」
魅了状態なのに貴様呼びなんだ!
「テツオです。ワタライテツオ」
俺はこの世界で初めて自己紹介をした。
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