第12話 裏切り

(これまでのあらすじ……)


少年が小学6年の時、おばさんの自慰行為を覗き見してしまい、また、おばさんの下着を身に付けて精通も経験しました。中学1年生になった少年は、思春期を迎えて異性を意識するようにもなりましたが、ふたりは相変わらず仲良しなのまま、いつもの週末、おばさんの部屋で留守番をしています。しかし、少年には秘め事がありました。それは、おばさんのランジェリーで下着女装をして自慰に耽ることで、この日もおばさんのベッドの上で、ひとり遊びに興じていました。しかし、それを帰ってきたおばさんから遂に見つかってしまいました。動揺を隠せないながらも、おばさんは思春期の少年を傷つけないように考えあぐねた末、自らも下着姿となって少年を優しく迎え入れてくれたのでした。そして、いつしかおばさんは自らの愛欲に負けて、未成年者への淫行という許されざる犯罪的な行為に走ってしまいました。まだ、事の深刻さが理解できない少年はおばさんへの愛情をストレートに表現し、おばさんの優しさに素直な喜びを表しているのでした。


**********


 少年はおばさんと約束をしました。もう、おばさんの下着にイタズラしてはいけない、おばさんの下着を着てはいけない、……と約束をしました。


 でも、少年はその後もおばさんのスリップがどうしても忘れられませんでした。少年自身も、もうやっちゃダメなんだ、いけないことなんだと自分に言い聞かせましたが、まだ十代前半の旺盛な性欲の前に、少年の自制心はもろくも崩れ去ってしうのでした。


 実は、以前、おばさんの洗濯物の中からおばさんのスリップを一枚だけいただいた事がありました。もちろん、おばさんと約束を交わしたあの日よりも前のことです。おばさんがいつの間にかなくなったスリップのことを知らないわけはありませんが、あの時もそのことには一切触れませんでした。


 でも、それ以上に少年が悲しかったのは、あの日以来、おばさんからの連絡がめっきり少なくなってしまったことです。


 それまでは毎週のように週末をおばさんの部屋で過ごしていた少年でしたが、それが月に1~2回となり、1ヶ月以上も行けない時もあるようになりました。それでも、少年と会った時は、今までと変わらず、いえ、今まで以上に久しぶりの出会いを楽しそうにしているおばさんでした。


 おばさんは仕事が急に忙しくなったとは言っていましたが、それでも少年はあの日のことが原因ではないかと、ずっと後悔の念を深めていました。


 しかし、それからおよそ1年後、中学2年生になった少年には、よりショッキングな出来事がありました。……それは、麗美お姉ちゃんの結婚です。


**********


 ある日の夕方、初秋の夜長が始まり、日暮れが早くなり始めた9月、まだ、午後6時を回ったばかりですが、あたりは早くも薄暗がりに包まれ、遠くに見える西の山の稜線が、赤い残照を残していました。


(カチャッ……。)


 マンションの一室、暗い部屋の玄関が開いて、一人の人物が入ってきます。そこは明かりもなく真っ暗な状態で、物音もなくシンとしている空間でした。


 その人物は手慣れたようにスイッチを探り当て明かりをつけます。その人物にとっては物心ついてからずっと暮らしてきた勝手知ったる玄関です。暗くとも手探りで容易に電気のスイッチを入れて、玄関と廊下の明かりをつけることは造作もありませんでした。


(ドックン! ……ドックン! ……ドックン! ……ドックン! ……)


 あの頃、おばさんのいない時に、おばさんの下着をイタズラするために、おばさんの部屋に入った時……、そういえばあの時もこんな感じでした。


 でも、あの時は、おばさん公認で、おばさんから頼まれて留守番をまかされていたのでした。しかし、この日、少年は初めておばさんに無断で、おばさんのマンションの部屋に自らの意思で入り込みました。


 心臓の鼓動はドキドキと鳴りっぱなしで、喉はなぜかカラカラになっています。いつも、何の気なしにやっていたことが、今日はこんなにも緊張してしまうとは、少年は自分でもとても不思議に感じました。


 今頃、おばさんは少年の両親や実家の祖父母とともに、結婚するお相手のご家族と会食の真っ最中の筈です。


 実は、少年は具合が悪いと言って、自ら留守番をかって出ました。姉弟以上に仲の良かったふたりでしたから、両親も少年の言い条に対して不思議そうにしていました。でも、大好きなお姉ちゃんがいなくなるからスネているだけだろうと、両親も無理強いはしませんでした。


 そうした中、少年はこうしておばさんの部屋にやってきたのでした。


(お姉ちゃんの匂いがする……。)


 中に入った瞬間から、大好きなおばさんの良い香りがしました。少年は靴を脱ぐと廊下を進み、左手のおばさんの部屋の扉を開けました。


 扉を僅かに開けると、その隙間からおばさんの部屋のベッドが見えます。少年は、そこにいる筈もない大好きなおばさんの姿を、無意識に探し求めていました。少年の脳裏には、2年前に覗き見た、白いスリップ姿の美しいおばさんの姿が鮮やかに甦ってきます。


(お姉ちゃん……レミねぇ……。)


 少年はおばさんの寝室に入り、後ろ手でドアを閉めました。おばさんの香りが少年の鼻腔に濃厚に感じられてきます。


 少年は深呼吸をして、おばさんの臭素を胸いっぱいに取り込みます。そうして、次は、おばさんのタンスに向かいます。


 1年前と同じく、鏡台の脇にラタンの三段チェストが置いてあります。少年は、その引き出しを震える手で開けました。そこには、白やパステル系を基調とした、清楚なランジェリーが並んでいました。


 それを飽きず眺めている内に、ふいに、少年は引き出しの中の下着の行列に顔を突っ込みました。


 少年の顔面の細胞のひとつひとつが、おばさんの下着の感触を楽しんでいます。ひんやりするツルツルしたサテン、柔らかく伸びのあるトリコット、レーヨンのヌメッとした感触、そして、綿の柔らかく温かみのある感触……、それらのすべてに洗剤や柔軟剤だけでなく、おばさんの良い香りが染み付いて、少年はうっとりとしています。


(レミねぇ……レミ……麗美……あぁぁ……麗美……)


 顔を上げた少年は、その下着の中から、白いレースのスリップと、白い刺繍のブラジャー、そして、白地に刺繍とレースのパンティを取り出しました。すべて白で合わせたのは、あの日、おばさんからしてもらったあの時のおばさんの姿をイメージしたからです。


 少年はパンティを穿き、ブラジャーを身につけ、ブラジャーのカップにパンティを入れて形を整えました。そして、いよいよスリップの番です。少年はストラップを両手でつまみ膝の高さほどに持ち上げます。そして、片足ずつ脚を入れると、ストラップを肩まで上げて両腕を通して肩に掛けました。


(はあぁぁぁ~~~。……あぁぁ、しゅるしゅるしたこの感触、麗美の香り、……あぁぁ、……麗美。。。。)


 少年は次に部屋に作りつけのクローゼットへと足を運びました。その折り戸を開けると、中には少年がよく見て知っているおばさんの清楚な洋服がたくさんかけられています。


 おばさんと一緒に食事に行った時に着ていたプリント柄のワンピース、おばさんと一緒に買い物に行った時にはいていたフレアースカート、それぞれの洋服がすべて少年とおばさんの思い出につながっています。


 少年はひとつひとつの出来事を懐かしく思いだすかのように、ひとつひとつのおばさんの洋服を抱きしめていきました。そのひとつひとつの洋服を着たおばさんの可愛い笑顔を思い出しながら。


(麗美……とても、とても、楽しかった。……でも、どうして、ぼくを待っててくれなかったの……ぼくと結婚してくれるって言ったのは、嘘だったの……。)


 そして、そのクローゼットの中、アクセサリーを入れている小引き出しを開けました。そこには、ブローチやネックレス、ピアスなどとともに、可愛いカチューシャも綺麗に並んで置かれていました。少年はそのカチューシャを取り出し、自分の頭に装着します。


(麗美、……ぼくにこのカチューシャを付けて、可愛い妹みたいだと言ってくれた。……ぼくは、麗美と一緒にいられるなら、麗美の妹になるのだって良かった。麗美とずっとずっと一緒にいられるなら。)


 少年はそのままベッドに横たわり、右足を膝立させました。そう、あの雨の日のおばさんの姿のように……。


**********


「あぁぁぁ……麗美……麗美……はぁぁん……。」


 少年はスリップに包まれた身体の上に、指を、手のひらを、ねっとりしたしつこさで這いずりまわせます。ナメクジのような粘着性を持たせつつ、ゆっくりと身体中をまさぐるのです。乳首をつまみ、一番敏感なところをつまみ、しごき、1年前におばさんから優しくしてもらった時のことを思い出します。


 あの雨の日のおばさんのように、少年は膝立させた右足を、ゆっくりとゆらゆらさせています。右足の太腿から美しいドレープを作っているスリップが、右足の動きに合わせてヒラヒラと宙に遊びます。


「麗美……見てぇ……ぼくのオナニーを見て……そして、あの時のように、ぼくのモノをしごいて、しゃぶって、……麗美……。」


 少年は、いつまで待っても決して来ることのないおばさんを待ちながら、ベッドの上でゆっくりと自慰に耽るのでした……。

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