第10話 母親

高校1年生の2学期に、性同一性障害のトモコと友人になり、馴れない家では、相変わらずぎこちない再婚相手の父親と母親と高校3年生の兄ミタカと暮らす日々。


トモコから、自分は女性が好きだと告白された時、さやかは正直驚かなかった。


そんなさやかに、トモコは驚いたと言う。さやかと友人になり、トモコはいろいろ話してくれた。



見た目は、さやかと同じ女子高生だが中身は、同じクラスにいる男子と変わらない事や、女性が好きな事、さやかを同性としては見れず、異性として見ていること、さやか以外には誰にも話していない事。



高校からの帰り道、トモコの家は近くの駅から2駅と近く、さやかはよくトモコの家に遊びに行った。


さやかがくるたびに、トモコに似たサバサバしたトモコのお母さんが「さやかちゃん、トモコと付き合ってあげてよ!トモコ、さやかちゃんの事が好きなのよ!」

とニコニコしながら、紅茶とお菓子を持って来てくれて、毎回トモコはおろおろしていたので、思わずさやかは、微笑んでいた。



「私が女の子が好きだって分かったのは、小学生の時だった。最初はそんな自分がおかしいんじゃないかと思って、怖くて、中学生の時に無理して男子と付き合って無理だった」


両親に相談したトモコは、病気だと言って激昂する父親と、トモコはトモコで良いじゃないと言う母親に挟まれる。


それを聞いたさやかは、私の実の母親にもしそんな事を言ったらされる言動は目に見えていた。


「拒絶」だ。



結局、トモコは中学生の時に父親に精神科に連れていかれ、その上、ちゃんと「性同一性障害」との診断までされたので、驚いたのはトモコの父親の方だったそうだ。



帰宅後、高校までは世間の目を気にする父親のために、女子高生でいる事、大学生からは自由に生きなさいと母親に言われたそうだ。



それなのに、さやかがトモコの家にくるたびに「トモコと付き合ってあげて!お願い!」


「お母さん、さやかは男性が好きなの知ってるでしょ!」


「そこを、なんとか、さやかちゃん!」


と漫才のような親子関係が見ることが出来てさやかは羨ましくてたまらなかった。


世の中の多くの母親は、どんな形でも娘の幸せを願うのか。


さやかは、兄ミタカの顔色ばかりを見て、さやかそっちのけの実の母親とトモコの母親が、違いすぎて、時々、悲しくなった。



トモコは、トモコのまま愛されている。

私は誰になろうが、兄ミタカにならない限り実の母親には、愛されない。


さやかは、トモコが心底、羨ましかった。


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