★ごった煮ショートショート集【第二倉庫】(エロ強め)(シビア・社会派・悲話)(恐怖っぽい)(バイオレンス)(ダーク)
楠本恵士
〝ざまぁ〟の対価3〔異世界ダークファンタジー〕
〝ざまぁ〟の対価3【チートな時間停止能力】
【チートな対価の代償】
その男は異世界に転移した、現世が嫌になって「別の世界に行きたい」と願っただけで、安易な願いは叶って異世界に転移した。
そして、男が異世界転移で手に入れたのは【時間停止】能力──チート過ぎる力に男は歓喜する。
「おぉ、すげぇ? 本当に思っただけで異世界の時間を止められる、こいつぁすげぇ!」
なぜ、そんなチートな力がしょーもない男に宿ったのか?
神の気まぐれとしか思えなかった。
男は【時間停止】の力を使って、異世界で好き放題に無双した。
時間を止められた人間や魔物が、気づいた時には剣で首を落とされて死んでいる。
「こいつぁいい、オレ無双! オレつえぇぇぇ! ざまぁ!」
時間を止めた世界で、男は好き放題に行動した。
腹が減ったら停止した世界で食べ物を奪い。
誰からも
抵抗ができない生き物を好きなだけ、なぶって惨殺して。
時には異世界の女性に、口では言えない性的なイタズラも繰り返した。
「オレ、最強! この世界はオレのモノだ! みんなまとめて、オレをバカにしていた奴ら、ざまぁぁ!」
しかし、男のそんな悪行に天罰が下る日がやってきた。
その日、男の前に現れたのは諸国を巡って武者修行をしている女騎士だった。
「噂は聞き及んでいる、百戦百勝の勇者で……魔物を一瞬で倒すほどの猛者とのこと……ぜひ、一度剣の手合わせをしたい」
男は美人騎士の申し出を承諾した。
「いざ、勝負!」
女性騎士が剣で構えたところで、男は時間を止めた。
(そこで、ストップ!)
薄笑いを浮かべながら、停止した女性騎士に近づく男。
「バーカ、誰が真面目に勝負なんてするかよ……さて、また楽しむかな」
握っていた剣を奪って防具を外そうと近づいた男の耳に、女性騎士の声が聞こえてきた。
「やっぱり、クズな男だったな」
驚き、女性騎士から離れた男が、女性騎士に震える声で言った。
「おまえ、動けるのか?」
「あたり前だ、おまえに【時間停止】の力を与えた女神だからな」
剣を鞘に収める女性騎士。
「異世界に転移してきた者に、気まぐれで【時間停止】の力を与えてみたらどうなるかと思ったが……最低の結果になったな」
女性騎士の女神は、厳しい視線で男を睨む。
「チートな時間停止の力を、善き方向に使うなら見逃してやるコトもできたが……おまえは、自分自身の欲望を満たすためのみに、与えた力を悪しき方向に使った」
「それがどうした! こんな便利な力があったら、誰だって自分の欲望のために使うだろう」
「時間を止められて、ワケもわからないままに死んだ生物や。羞恥のあまり命を絶った娘もいるんだぞ」
「そんなの、オレには関係ねぇよ……ざまぁぁ」
「やはり──おまえには罰が必要なようだ」
女神は男を指差して言った。
「今度は、おまえの時間が止まる……永遠に」
次の瞬間、男の時間がピタッと止まった。
女神の女騎士は、時間が停止した異世界を見回してから停止している、男に向かって言った。
「おまえが、繰り返して時の流れを長時間停止したために、この世界の自然の摂理が崩れた。
これは、女神でもどうにもならない。この世界は崩壊する」
女神の姿が消え、時の止まった世界に静寂が訪れた。
すべてが停止した世界は、気が遠くなるほど停止した状態が続いていた。
ある日──時計の針が思い出したように動き出した……カチッ。
同時に止まっていた時間の流れが、一気に異世界に流れた。
建造物が崩れ風化して、生き物が恐ろしいスピードで成長して、老化して死んでいく。
「???」
「???」
何が起こっているのか理解できないまま、罪を懺悔する間もなく、親しき者に別れを告げる間もなく。
朽ちた死体が、腐敗して、乾燥して土へと還っていく。
砂漠化していく大地の中で唯一、変わらないモノは女神から時間停止の罰を受けている男の体だけだった。
衣服が風化して、全裸になった男の体が大地に倒れても、男の時間停止は続く。
砂漠と化した異世界で、彫像のように停止したまま砂に半身が埋もれた男の姿だけが。
崩壊した異世界に残った。
~おわり~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます