2-14 なんかすごいもの貰いました。色々。
2-14 なんかすごいもの貰いました。色々。
「ではルトナ・ナガンに全エルフを代表して『我が友』の聖号を授ける」
そう言うとエスティアーゼさんはふわりと浮きあがってルトナの額に口づけをした。
一斉に巻き起こるエルフたちの拍手。
ここにはこの町にいるほとんどのエルフが集まっているが全員が幼女だ。
男の子にみえる子もいるがやっぱり幼女でSDキャラだ。十重二十重に俺たちをチビキャラ。すごい光景ではある。現実とは思えんが…まあいい。もう納得した。
しかしこうなると別の心配が頭をもたげてくる。まさかドワーフは全員がおっさんとかじゃないだろうな? だったら嫌なのだ~
そんなことを考えながらルトナと場所を変わる。
「ではディア・ナガンそなたに『我が
同じようにエスティアーゼさんが俺のオデコに口づけをする。
俺達はまた妖精族から聖号を与えられてしまった。
ルトナはここ数日の戦いで人気者になって本当にお友達になってしまったし、更にキャノンオウルの群れがその時の影響でエルフたちの使い魔的な位置に収まってしまった。その功績をたたえての聖号賜与だ。
俺の方は魔法の伝授が原因だ。
数日間にわたる授業とつきっきりの練習でエルフの多くが飛行魔法を進化させていた。
スポンジを空間に見立ててやる定番の重力の説明から始まって、自分の周りの空間がフラットになるという感覚を理解してもらうのに大変苦労をさせられた。
彼らは俺ほどに慣性を中和できないでいるが風の精霊の助力があるために飛行能力自体は既に俺に迫る勢い。体重を消すのに空間の形を固定するという概念を理解してもらえたので魔力消費が格段に下がったとかで、ものすごい勢いでかっとぶエルフが何名か。これからエルフはさらに自由になるだろう。
なんて言われた。もともとかなりフリーダムなのにどうなるんだ?
まあ何かを伝授したものという意味で『我が師』という聖号を貰ってしまったわけだ。
「私たちエルフは友を忘れない。そして師の恩を忘れない。エルフの森の花は常に君たちのために咲いている」
これは『我が家の門はいつでも君のためにあいている』というような意味あいの言葉だ。エルフの家に門ってないからね。
また拍手が起こり授与式が終わった。あとは宴会だ。
おいしいものを食べ、おいしいものを飲む。見た目幼女なのにエルフは酒豪揃いだったりする。
酔うことは酔うようだ、だが酔っぱらうことはない。乱れることはない。どんなに飲んでもほろ酔いで幸せそうな感じでいる。
ある意味天国のようであり、ある意味地獄絵図でもある。
まあ子供の俺達はジュースだけどね。またここはジュースの種類が多いんだ。
「ではシャイガ殿、これが通商証明書じゃ。これを表に持ってきてくれれば品は受け取れるようになっておる。
おぬしたち本人でなくても可じゃが、別の奴に取りに来させるならおぬしらの誰かが一緒にきて登録はしてくれ」
「はい、このたびは多大なご配慮を頂き感謝に堪えません」
「なんのおぬしの子供たちからもらったものに比べればこのぐらいどうということもない。それに生産量からすれば大した量ではないしの」
シャイガさんの持っている証明書と言われたB五ぐらいのプレートを覗いてみる。そこには絹一五〇反、森界縮一五〇反。他にもここで作られる特産物が何種類か書き出されている。
これはナガン家がこれらかエルフの人たちと取引していく品物の種類と量。一年分になる。
最初の話よりも大幅にアップしている。
まあ今回は無い袖は振れないので最初の約束通りなのだが、次回からは量が増えることになるだろう。
これも彼らの感謝の気持ちなのだそうだ。
ぶっちゃけこれを転売するだけでも莫大な利益が上がるのだが、まあシャイガさんは。
『これでいい作品が作れる』と喜んでいる。
武術家であり職人の道をいったんは諦めた彼だったがやはり職人の血は流れているらしい。
「さて、では行こうかの」
エスティアーゼさんが俺に話しかける。俺は頷いて彼女の後に続いた。
◆・◆・◆
で、来た所というのは天樹にある『宝物庫』という名前の物置である。
「すごいですね」
「そうじゃろ、なんといっても数百年分じゃからの…あー…どこ行ったかのう…」
俺と彼女の凄いはたぶん意味が違う。
エスティアーゼさんかなりの大きさのある物置の奥の方に野を越え山越えと言った感じで分け入っていく。
「あのー、少しは片づけた方がいいのでは?」
「うーむ、そう思わなくもないのじゃがな…いつかやろうとか思っているうちに一〇〇年位経ってしまってのう…」
うん、こうなると寿命が長いのにも問題はあるな。
悠長すぎる。
そしてこのガラクタの中に昔使われた魔法書が仕舞われて…おらずに埋まっているらしい。
しかしこれ見つかるのか?
「そこらへん見てていいですか?」
「うむ、かまわん、好きに見てて良いぞ」
いやー本当にいろいろあるわ。
「これなんですか?」
「ん? それは大昔の魔法道具じゃな、古代王国のころに作られた道具じゃよ。ただ何のために使うのかはわからんのじゃ」
なんじゃそりゃ。
「ほれ、ワシらと取引したい連中がたまに発掘品を持ち込むことがあるんじゃよ。発掘品じゃからな、何に使うのかわからん。
まあたまにドワーフどもがきて調べたりしとるよ~っこいしょ」
ドンガラガッチャンと派手な音が響いた。
この人はあれだ、荷物が積まれているときにしたから荷物を引っ張り出して崩しちゃうタイプの人だ。よくいるんだよね。
こうしてみると妖精族も親しみが持てる。まあいろいろ親しみやすい人たちだけどね。
「ほれ、まず一冊目じゃ」
「あっ、ありがとうございます」
俺はさっそくその魔導書を読み込み開始した。これは二節の簡単な魔法のようだ。すぐによみ終わって元の場所・・・は崩れてしまったからつみなおすか。
がらがらがっしゃっん。
別なところでまた崩れているよ。ひょっとして俺たち埋まったりしないか?
ちょっと恐怖を感じたり…なんだ?
物を押しのけようとして左手のアームでガラクタを支えたときに反応があった。
魔力が通うような反応だ。
「エスティアーゼさーん、何か魔力を吸い取られた~」
「おっ、生きている魔道具があったのかの、魔道具というのは基本的にはスイッチを入れると勝手に
ふむふむ、つまり今魔力が流れたような感じがあったのは俺の魔力を吸って動きそうになったということかな。
つまりまだ生きている『機械』があるということだ。なんだべ。
グワッシャン!
あっ、今度は俺が崩しちった。
そして出てきたのは青く輝く…何かわからない箱。結構大きい。五〇×五〇×一〇〇㎝という所かな。
一面にターンテーブルのようなものがついていて、それに棒状の…これはマニピュレーターか? がついている。さして反対側にはぽっきり折れた太い棒…というか折れた接続金具かな。
これに触った時魔力が流れて何か反応したんだよね…
うおおっ。
触ってみたら魔力がすいだされていくような感じがあった。
結構なスピードで結構な量を吸いだしているぞこいつ。
いったい…
なんだと思ったがそれはすぐにわかった。
箱の中からするりと銀色の金属の光沢を持った、液状の何かが流れ出て形を作っていく。
「なんだっけ、映画であったよね、銀色の…流体金属」
とはいっても人型になったりはしなかった。
その流体金属が形作ったのはぶっちゃけ。
「ガトリング砲?」
すっとんきょうな声が出てしまった。
全長四メートル。三つの砲身を束ねた三砲身型というやつだ。根元に回転の機構があり、魔力の流れ方から魔法を使ってどっかから弾を装弾するらしい。
魔法自体の処理はこの箱の部分にプログラムとして刻印されていて、十分な魔力を流せば機能するようだ。
多分俺の魔導器が上位システムとしてこの魔道具を掌握していて、インターフェイスとして機能している。
込めるべき弾がないので銃としては役に立たないが、それでもシステム自体は生きていて、くるくる回転はしている。
ひょっとしてこんなのを搭載するような兵器が昔あったのかな?
四メートルもあるので俺が使えるかは論外だが、うん、これはすごいめっけものではないかな。
できれば研究したい。
あっ、それにおまけもある。
この箱の下側についているマニピュレーター。
砲身に比べると小さ目で、この箱が何かの兵器にくっついていたのだとしたらサブアームか何かに使われていたのではないかというようなマニピュレーターだ。
それはいいんだ。別にくっついていても。
問題はそのマニピュレーターが人間の手と近い構造をしているということ。
棒の先に人間の手首と同じ様な動きをする機械がくっ付いている。
「これを研究したらひょっとしてこの義手をもっと良いものにできるかも…」
「おう、なるほど、なかなか良い考えじゃな。それも使い道がないから持っていってもいいぞ」
「ほんとですか?」
いつの間にか戻ってきていたエスティアーゼさんに俺は飛びあがった。
「よいとも、ワシらには用がないしの」
まあ四メートルのガトリング砲なんか確かに使い道もないやね。
じゃあありがたく。
「それよりもほれ、約束の魔法書じゃよ」
「ありがとうございます」
「なんの、お前さんがワシらにくれたものに比べればささやかな物じゃよ」
俺はエスティアーゼさんが持ってきてくれた魔導書を受け取った。
これも読み込まないと。
きゃーっ、なんて充実した時間なんでしょう。
表の宴会とは別に俺のお祭りも進行していったのだった。
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