状況開始
くれてやる。
そんな答えが貰えたので、僕はPを始めとして五人程を呼び出した。
P含めトゥースが四人、人間が一人。トゥースが重歩兵で、人間が工兵。何れもPが率いて居た賊のメンバーだった。
「君達で小隊を組め」
その僕の端的な言葉にPは面子を見まわして、溜息を吐いた。
かっての部下だ。
その能力はしっかりと把握しているのだろう。ここに集められたのが上澄みだと理解してしまったのだろう。僕の結論を察してしまったのだろう。
Pはその後、僕の目を見て、言葉を呑み込んだ。
「……何人か、若いのも居る」
だが集めた内の一人、トゥースの男が抗議する様にそんなことを言った。思わず鼻で笑う。
「元賊が聞いてあきれるな。若いのは居るかもしれないが、使えるのはコレだけだ。それとも君は何か? これまで未来ある若者の命は奪ってこなかったのか?」
――それならば僕も考慮しよう。
そう言ってしまえば彼も黙るしかない。
人類皆平等。
正直な意見を言わせて貰えるのならばあまり共感できない言葉だが、どうやら世間では素晴らしいことであるかのように語られている以上、きっとそれは良いことなのだろう。
僕はお母さんにお父さん似だと言われた。
それは容姿のことであり、内面のことでもある。
そして岡目八目とは良く言ったモノであり、自分のことは良く分からなくても横から見ると良く分かることもある。
お父さんは少しズレている。
それならばソレに似ていると評されてしまった僕も恐らく少しズレているのだろう。
そうである以上、世間で良いことと言われている事柄を真似して置くべきだ。
僕は僕の敵を撃てる。
だが――
僕はアイリを撃てない。僕はミツヒデを見逃す。僕はショウリを撃つときは足を撃つ。
そんなものだ。なので僕はトゥースマンさんの言うことの方が良く分かる。仲間だから助けて欲しい。そう言うことなのだろう。
だが残念。それはズレている僕と、道を踏み外した賊の意見だ。
きっと一般的ではない。先も言ったが、世間では平等が尊ばれているのだ。
だから僕も極力それを見習い、差別をせずに、区別をせずに、殺せる傭兵になろうと思っている。
「……」
何時の日かアイリは無理でもショウリ位なら頭を撃ち抜ける様になりたいものだ。
そんなことを思った。
部隊を貰った。だが舞台の幕は上がらない。
当たり前だ。
真性社会を形成するインセクトゥムにおいて
その損失は文字通り万の兵以上の損失だ。で、ある以上、馬鹿では無い彼等は
チェスと一緒だ。
強力なクイーンは好きに動かすと詰む。らしい。……やったことないけれども。チェス。
兎も角。我が家が将棋はあるけどチェスは無い系の家だったことは兎も角としてだ。
戦場が動くには未だ時間がかかる。
網の様に張った情報網から吸い上げたエサを元にショウリが出した予想がソレであり、僕もそれに異論は無かった。
だから僕が仕事をするのはしばらく後だ――とはいかない。生存競争にはルールも糞も無い。先手必勝と言う言葉があるが、そもそも手番が回る前に手を打つことが許されているのが戦争と言うゲームだ。寧ろ打たないと負ける。
貰った部隊の練度の確認、及びアイリから借り受けたモノズとの連携の確認。
それが僕の仕事だった。
水無月、文月、葉月の夏組に加えて如月、皐月、長月の
コレに加えてアイリのモノズ達のリーダーである睦月、それと狙撃分隊S2を担当している卯月、如月の二機も僕のことを認めてくれたらしく、今回の作戦に当り手を貸してくれることになった。
何と言うか――。
好きな子の保護者が僕を中々認めてくれなくて少し辛い。
――舞台の幕は未だ上がらないと言ったな?
――アレは嘘だ!
「……」
そんな言葉が浮かんできたので、こめかみを親指でぐりっ、として痛みで溶かす。
「……ショウリ」
『相手のが上だったな』
はっはっはー。指令室と言うか、本丸に居るショウリは呑気なモノだ。死ねばいい。いや、死ななくてもいい。回線がオープンだ。この会話は味方全員が聞くことが出来る。この状況で慌てられるよりは千倍マシだ。
感情は伝播する。パニックも、恐怖も広がるが、冷静さだってそうだ。指揮官が落ち付いて居れば兵も落ち着く。……場合もある。「……」。深呼吸。一回。二回。吸って、吐いて、吸って、吐いて、吐いて。吐いて――吸う。空にした肺に冷たい空気を入れて血を冷やす。そうしてから最後に、かりり、と頬の甲殻を掻く。良し、落ち着いた。
訓練のシフト表を思い出す。僕の部隊と、それ以外の出ている部隊を思い浮かべる。端末を弄り、マップを起こす。
「睦月。僕の部隊と他の部隊の情報をくれ」
言えば小型球体が、ピッ、と鳴いて情報が端末に表示される。マップを読んで、光点の動きを見て――混乱を読み取った。
「……アイリは?」
“NTR:我の隣で寝ている件”
「そうか。未だリハビリ中か」
睦月を介して聞いていたのだろう。霜月から届いた僕を煽るメッセージをさらりと流す。……何だ。NTRって。
「P」
『ポイントに急行中』
端末にB1が設定される。良い判断だ。破られた門の付近。細い道の合流地点だ。あそこを塞げば敵は通りやすい大通りを使ってくれるだろう。そして大通りなら防衛設備が整っているし、人も集めやすい。
だから大通りに流す為、細い道を塞ぐ。今やることはソレだ。
「ショウリ、ポイントを三つ指定した――」
――確認を。その言葉を言う前にマップに矢印。僕の師弟したB2、B3に向かう部隊と到着予想時間、それと敵の流れが反映される。
「……」
良いな。仕事が早い。何よりB4に向かう様に指示された矢印が僕であり、到着予想時間の代わりにストップウォッチが用意されている辺りが最高だ。
『
「……レディ」
『それではA、良い戦争を――
あとがき
更新再開しますのでまたお付き合い頂けレバー<m(__)m>
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