3話 とりあえず泳ごう、サバイバルはそれからだ


 あんまりにも海が透き通っていて綺麗だったから。


「泳ぎたい!」


 ルーナは荷物を砂浜に下ろした。


「あたしも!」


 リリアンも荷物を下ろした。


(美少女の水着姿!? これはまだ帰れないわ! てゆーか無人島だし、襲ってもいいんじゃないのかしら?)


 魔女はゴクリと唾を飲み込んだ。


「よぉし! 少しだけ! 少しだけ泳ごうリリちゃん!」

「いいぜ! こんな綺麗な海、泳がないと損だし!」


 2人はあっという間に服を全部脱ぎ捨てて全裸になった。

 どうせここは無人島。他に誰もいないのだから全裸で何の問題もない。


(あ、リリちゃんの裸、綺麗だなぁ。引き締まって素敵。てゆーか、魔女さんもう帰っていいのになぁ)

(う、ルーナの裸とか、輝きすぎてあたしの目が潰れそうだぜ。てか、魔女さんもう帰れよ。あたしらの冒険なんだから)

(美少女たちがぁああ!! 南の島でぇぇ!! 全裸!! これが噂のヌーディストビーチ!! 父さん母さん、わたしを産んでくれてありがとう!)


 魔女はあまりの嬉しさに少しフラついた。

 ルーナとリリアンは準備運動をしてから、海にダッシュ。

 それからキャッキャと楽しそうに水を掛け合ったり潜ったりしている。

 魔女はそんな2人を眺め続けた。この光景を目に焼き付けて、家に戻ったら自分で自分を慰めるのだ。


(本当は襲いたいけど、ペロペロしたいけど! 無人島だからバレないけど! でも! 2人に嫌われたくもないのよね!)


 美少女大好き。ならば当然、美少女にも好かれたいと思うものだ。


「2人とも! わたしはそろそろ戻るわね!」


 魔女が大きな声で呼びかけた。

 これ以上は本当に襲ってしまいそうだし、2人の裸を忘れる前に帰りたい。


「はぁい! ありがとう魔女さん! 5日後にまたー!」

「ありがとな魔女さん! ちゃんと迎えに来てくれよー!」


 ルーナとリリアンが笑顔で手を振った。

 魔女も手を振って、「ああ、美少女最高」と呟いてから魔法を使って家に帰った。

 それからしばらく、ルーナとリリアンは海ではしゃいでいた。

 少し疲れた頃に、砂浜に戻って荷物を森の入り口に運ぶ。木々が生い茂っているので日陰になっているのだ。


「身体が乾いたら、水源探さないとね」


 草の上に座りながら、ルーナが言った。まだ全裸なので、土と草の感触がダイレクトに尻に伝わる。

 サバイバルにおいて、もっとも大切なのが水の確保だ。冗談抜きで命に関わる。だから最初に必ず水を探す。全てはそれからだ。

 ぶっちゃけた話、5日ぐらいなら食べなくても平気だ。死にはしない、という意味。だが水分はそうもいかない。

 気温が高いので、熱中症で死ぬ可能性だってある。


「池とかあったら、そっちでも泳いで塩分落としたいぜ」


 リリアンはルーナの隣に座った。

 2人は寄り添って、肌と肌が触れ合っている。

 ルーナはスッと顔をリリアンの耳元に動かして言う。


「気持ちよかったね」

「う、うん! 超、気持ちよかったし!」


 リリアンはボンッと赤くなって、ちょっといつもより高い声で言った。


(リリちゃん可愛いなぁ)


 ルーナはニヤニヤと心の中で笑った。


「あ、そうだ。ミニコンの試し撃ちもしないとね」

「そうだな。あたしら、弓は使えるけどこの弓は初めてだし」


「じゃあ、水の確保、基地の確保、火の確保、食料の確保が終わって時間があったら、練習しよっか」

「だな。まずは生き残ることを念頭において、そっから余った時間で練習がベスト。さすがルーナ」

「えへへ。抱き合ったら早く乾くかなぁ? 抱き合ってみる?」

「ふえぇ!?」


 突然ルーナが話を変えたので、リリアンは酷く驚いた。


「ほら、リリちゃん早く!」


 ルーナが両手を広げた。


「は、はい! それではリリアン12歳! 抱き合います!」


 なぜか丁寧な言葉で自己紹介してから、リリアンはルーナを抱き締めた。

 お互いの肌の感触をお互いが楽しみ、そして照れた。

 誘ったはずのルーナも酷く照れている。


(あわわ、あわわ、なんだかすごく、気持ちいいよ。でも同時に恥ずかしいよぉ)


「な、なんかあたし変。ルーナが悪いんだからな?」


 言いながら、リリアンはルーナを押し倒して脚も絡めた。

 ルーナは驚いたが抵抗はしなかった。


「こ、こうした方が、全身早く乾くかなって……。思ってさ」


 ルーナが驚いたことを悟ったリリアンが、言い訳のように言った。


「リリちゃん、変にしてごめんね? 私もなんだか少し変」


「い、いいよ。あたしも、責めるみたいに言ってごめん。やっぱりルーナは悪くない。何しても、ルーナは悪くない(あたしに何をしても、いい。ルーナが何をしても、ルーナは悪くないし、あたしは受け入れるし!)」


 それから2人はしばらく抱き合っていたが、特に動きはなかった。


「あ、何か昆虫」


 ルーナの上に乗っているリリアンが近くの木にくっついている虫を見つけた。

 そしてルーナから離れて虫を捕まえた。


「何虫!? 何虫!? 食べれる!?」


 ルーナも昆虫が気になったので、すぐに起き上がった。


「カブトムシ」リリアンが捕まえたカブトムシを見せる。「食べられるけど、土臭くてまずいやつだ。一応確保しとく?」


「まずいけど、見た目カッコいいよね!」

「見た目はすごぉくカッコいいぜ! あたし大好き!」

「まぁ木に戻してあげよ? 森だから食材は豊富みたいだし、海には貝もあったしね」

「そーだな」


 リリアンがカブトムシを木に戻した。

 今回の冒険はレベル1なので、食料の確保はあまり難しくないはずだ。


「身体も乾いたし、服着て水源探しに行こう?」

「おう。行こう行こう」


 ルーナとリリアンは服を着てリュックを背負った。それから手を繋ぐ。繋いでない方の手には弓を持っている。

 2人は森の中をずんずんと進む。


「そういえばね」ルーナが言う。「さっき抱き合った時、変って言ったでしょ?」


「うん」とリリアンが頷く。


「私その正体分かったかも」

「さすがルーナ! 教えてくれー!」

「まずちょっとした恥ずかしさと照れがあったのね。私たちもう12歳だし、どうやって子供ができるかも知ってるし」

「いつかあたしは絶対、ルーナの子供産むぞぉ!」


 リリアンは冗談ではなく本気でそう思っている。世界で一番ルーナが好きなのだから。


「そういう感情とね、あとはリリちゃん大好きだからくっついてるのは幸せ、って気持ちが混ざり合って、なんだか変な感じになったんだと思うの」

「なるほど。さすがルーナ! 絶対それだし! あたしも恥ずかしさと照れが混じってて、だけど幸せなポカポカ温かい感じもしてたもんな!」

「あ、子供で思い出したんだけどね?」


 ルーナは楽しそうに笑った。

 リリアンも「なになに?」と楽しそう。


「魔女さんってさ、大人なのにまだコウノトリが子供を運んでくるって思ってたよね!」

「あー! そうそう! あれはビックリしたけど、笑っちゃ悪いと思って、話合わせたよな!」

「ねー! どうすればあんな純粋な大人になれるのかなぁ?」

「世間知らずなだけじゃねー?」


 2人は知らない。

 魔女が本当は真性のロリコンだということを。まったくもって不純な大人であることを。

 それから2人は色々な話をしながら水源を探して歩き回った。

 しかしなかなか見つからない。

 やっとの思いで崖から流れ出る湧き水を見つけた時には、もうお昼の時間だった。


「ちょ、ちょっと予想外に疲れちゃったね」とルーナ。

「うん。あたしら、そういや全力で泳いだあとだったか……」


 てへへ、とリリアンが笑った。

 3メートル程度の崖から流れ出る湧き水が地面に溜まって、小さな池のようになっている。

 その崖には苔や蔦植物が多く、とっても幻想的で綺麗だった。


「綺麗だねー」


 言いながら、ルーナが座る

 手を繋いでるリリアンも、同じように座った。


「ルーナの方が綺麗だし(本当、マジで綺麗な風景だな)」

「ありがと(心の声が出ちゃったのかな? リリちゃん本当可愛い)」


「とととと、とりあえず、の、飲み水として水筒に詰めたら、詰めたら、えっと、髪洗おう!(きゃーー! あたしまた心の声が出ちゃったぜぇぇ!! うっかり出ちゃうぅぅ!! 出ちゃうのどうにかしたいぃぃ!)」


「そしてお昼ご飯の確保と基地作りだね(あわあわっ! ってなってるリリちゃん本当可愛い! ずっとあわあわってさせたい!)」

 

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