第13話

 如月薫が家へ帰りつくと、両親と弟の3人が、庭先に集まっていた。どうやら、薫の忠告通り家の中には、入っていない様である。


「ただいま。待たせちゃったみたいで、ごめんね」

「おかえり。よく戻ったな薫」

「おかえりなさい、薫。退院おめでとう」

「兄貴、おかえり。退院おめー」


 薫の挨拶にそれぞれが返事をして、退院した薫を温かく迎え入れる。


「そのなんだ。予約していた店が閉まっていてな」

「母さんの方もよ。戻ってくるので精一杯だったわ」

「あっ、全然問題ないから、父さんも母さんも気にしないで。それよりも、みんなが無事で安心したよ」


 両親は、申し訳なさそうな顔になり薫に謝るも、豪華な食事がダメになったことよりも、家族みんなが無事であった事に薫は心から安堵した。スマホでみんなが無事だとわかってはいても、やはり直接無事な姿を自分の目で確認したかった薫であった。


 他者には冷めている薫であるが、家族にはそれなりの情があるようだ。


 庭先で、ただ話し合っている4人家族。傍から見れば、家の中でやればと思うだろう。


 だが、現在はこれが一番安全なのだ。


「最初、兄貴のメールを見た時は、暇つぶしの悪戯かと思ったぜ」

「僕もそう思ったけど他に書きようがなかったし、3人なら信じてくれると思ったから」

「あれには父さんもびっくりしたぞ。一瞬、ゲームの世界へ入り込んだのかと思った。実際問題、これから世間はかなり深刻になりそうだがな」

「そうなりそうね。でもね、母さんはステータス画面が他の人に見えてないかビクビクしちゃった。そしたら、外が騒がしくなったもんだからバレずに済んだし、今はなんとか慣れる事が出来たけどね」


 薫の家族だけあり、状況に順応するのが早いようだ。

 薫は、自宅に帰るまでの間に見てきた光景を家族へ語る。

 もちろん、ご近所さんを助けた事も含めて。

 ダンジョンコアとダンジョン化によりモンスターが発生しているのではという憶測を伏せて。


「じゃあ、みんなの職業とスキルを教えて。父さんからお願い」

「よし。父さんの職業は、魔技侍だな。遠近両用だが、器用貧乏の半端者になるかどうかは、今後の振り方次第だろう」


 さすが父さん、僕よりもゲーム歴が長いだけある。


「母さんの番ね。職業は、尼闘兵。回復魔法と支援魔法と長物武器を使った戦闘ができるみたいよ」

「俺は魔物使いになった。魔物を調教できるっぽいけど、仲間がいないからステータス強化系のスキルをとった」


 家族からは、それぞれが就いた職業と職業スキルに加えて、新たに習得したスキルについて聞いた。

 当然、全員が新人族となっていることも確認した。


「なるほど、ステータスはどんな感じかな?」

「父さんのは、こんな感じだな」

「母さんは、これね」

「俺はこんなだ」


 薫が尋ねると、それぞれが事前に紙に書いていたようで、ステータス情報が記された紙が、庭の地面に置かれる。

 薫は、自分の情報も教えるために、ステータス画面を開いた。

 そこには、新しい項目が増えていた。


 ”適正者が複数いるため、パーティーを編成することが出来ます”と、表示されており、【パーティー】という項目があった。


「えーっと、みんな。ステータス画面を出してみて。僕のには、【パーティー】って項目が増えたんだけど」


 薫の言葉を聞いた家族は、それぞれにステータス画面を開いて行く。


「おっ、ほんとだ。パーティーが組めそうだな」

「あら、本当ね。組めばステータス情報の共有ができるかしら?」

「俺の方にも出てる。リーダーは父さんかな」

「いや、薫に任せよう。まずはパーティーを組んでみよう。頼むぞ、薫」

「わかったよ。取りあえず、4人で組めるか試してみよう」


 40代になった両親は、意外にもネトゲ世代でもあるため、会話がさくさく進む。本当に順応性が高い。


 薫は、【パーティー】をクリックした。

 画面には、【メンバー候補】キサラギ・タケヒコ(41)、キサラギ・ミク(40)、キサラギ・ハルト(14)の3人の名前が、右端に列表示された。


 薫は、父であるキサラギ・タケヒコ(41)をクリックしてみた。

 画面には、”パーティー加入要請中”の文字が明滅している。


「これでどうかな?」

「きたきた、受諾っと」


 薫の父である武彦の声とともに、薫のステータス画面左上には、キサラギ・カオルの名前とHPとMPだろう2つのゲージが表示された。

 その下に、キサラギ・タケヒコの名前とHPとMPだろう2つのゲージが表示された。どうやら、年齢は表示されないようだ。


 薫は、試しに父の名前をクリックした。結果、父のステータスがより詳しく表示された。



   キサラギ・タケヒコ(41)


 【種族】 新人族

 【Lv】 1

 【職業】 魔技侍ランク1

 【状態】 健康

 ・HP  55/55

 ・MP  50/50

 ・腕力  25

 ・頑丈  20

 ・器用  20

 ・俊敏  20

 ・賢力  25

 ・精神力 20

 ・運   15


 【スキル】

 ・刀術レベル1

 ・剣術レベル1

 ・魔力弾レベル1

 ・火弾レベル1

 ・HP上昇レベル1

 ・MP上昇レベル1

 ・腕力上昇レベル1

 ・頑丈上昇レベル1

 ・器用上昇レベル1

 ・俊敏上昇レベル1

 ・賢力上昇レベル1

 ・精神力上昇レベル1

 ・運上昇レベル1

 ・物理耐性レベル1


 【固有スキル】

 ・魔刀解放レベル1


 【所有スキルポイント】 0P



 父親は、スキルポイントをすべて使用していた。思い切りがいいなと、薫は思った。


 薫は、母親と弟も同様にパーティーへとさそう。



   キサラギ・ミク(40)


 【種族】 新人族

 【Lv】 1

 【職業】 尼闘兵ランク1

 【状態】 健康

 ・HP  55/55

 ・MP  55/55

 ・腕力  25

 ・頑丈  25

 ・器用  18

 ・俊敏  18

 ・賢力  25

 ・精神力 25

 ・運   18


 【スキル】

 ・長刀レベル1

 ・物攻上昇レベル1

 ・単体回復レベル1

 ・複数回復レベル1

 ・HP上昇レベル1

 ・MP上昇レベル1

 ・腕力上昇レベル1

 ・頑丈上昇レベル1

 ・器用上昇レベル1

 ・俊敏上昇レベル1

 ・賢力上昇レベル1

 ・精神力上昇レベル1

 ・運上昇レベル1

 ・物理耐性レベル1


 【固有スキル】

 ・複合結界レベル1


 【所有スキルポイント】 0P




   キサラギ・ハルト(14)


 【種族】 新人族

 【Lv】 1

 【職業】 魔物使いランク1

 【状態】 健康

 ・HP  40/40

 ・MP  50/50

 ・腕力  15

 ・頑丈  15

 ・器用  9

 ・俊敏  9

 ・賢力  20

 ・精神力 20

 ・運   15


 【スキル】

 ・鞭術レベル1

 ・魔物調教レベル1

 ・手加減レベル1

 ・従魔召喚レベル1

 ・HP上昇レベル1

 ・MP上昇レベル1

 ・腕力上昇レベル1

 ・頑丈上昇レベル1

 ・賢力上昇レベル1

 ・精神力上昇レベル1

 ・運上昇レベル1


 【固有スキル】

 ・魔物魅了レベル1


 【所有スキルポイント】 3P



 母親も、父親同様に、スキルポイントをすべて使用していた。やはり、似た者夫婦なのか?

 弟は、3ポイントを残していた。両親と違って、慎重派のようだ。ただ、薫的には、両親の方針に賛成していたりする。


 それぞれが、家族全員のステータスを確認している。

 弟の職業である魔物使い以外は、初めて耳にする職業ばかりであった。

 何となくこうだろうなと、ざっくりと予想したそれぞれであるが、あくまで予想である。


 父親は、腕力と賢力が高い。おそらく、物理攻撃力と魔法攻撃力と思われる。アタッカーである。

 母親は、全体的にステータスが高い。攻撃も回復もこなせるオールラウンダーといえる。

 弟のステータスは、両親と比べると見劣りするものの、従魔を手に入れてからが魔物使いの本領発揮となるのだろう。

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