第143話/恋は宙模様

吉田夏樹.side


午前中はみんなで歌番組の歌とダンスレッスンをし、午後からみのりは高橋君との映画のポスター撮影と衣装合わせだった。

それから映画に向けた取材を受け、みのりを駅まで送り、事務所でスケジュールの管理や事務処理をしたあとに私も帰路に着いた。


流石に疲れが溜まってくる。でも、ここで弱音は吐けない。今が頑張りどきだからだ。

シャワーを浴びたあと、冷蔵庫から缶ビールを取り出し飲みながらソファーに座る。

明日の予定は…朝からドラマの撮影があり、そしてもうすぐクランクアップする。


忙しいと時間が過ぎるのが早く、1日があっという間に終わっていく。


6月になったら色んな音楽番組に出る予定でしばらくはグループとしての活動をし、6月後半からみのりは映画の撮影に入る。美香は雑誌の撮影などが入っており由香里は念願だったグラビア撮影した雑誌が発売される。


順調に進んではいるけど、何が起こるかわからないのが芸能界だ。気を引き締めないと。

テレビの前に置いてある時計を見ると時間は0時を過ぎており、そろそろ夕ご飯を食べないとアルコールだけでは胃を痛める。


冷蔵庫の中にあるもので適当に何か作り食べようと思い立ち上がる。目玉焼きでいいかなって思いながら冷蔵庫を開けると卵が1つもなく、中に入っているのはお酒だけだった。

独身26歳、仕事が最高に楽しいと思っている私の冷蔵庫の中身はこんなものだ。


だけど、流石にお腹が空き、棚から出したカップラーメンを作るためにお湯を沸かす。とりあえず胃に何か入ればいい。

お湯が沸くまで私はまたソファーに座りビールを飲む。仕事終わりに飲むビールは私の小さな幸せだ。


簡単に食べれるカップラーメンを作った人は天才だ。やっとお腹が満たされた。


恋愛とは無縁の時間を過ごしている私はだけど幸せで、毎日充実している。

私は恋愛に対しドライみたいで、みのりと似ている。恋愛が絶対に一番にならないし、きっとこれからもなることはない。


いつか結婚はしたいけど、まだ先でいい。きっと、お母さんに似たくないからかな。26歳の私に結婚、結婚としか言わない母親。

お母さんは結婚=幸せだと思い込んでいる。仕事なんて結婚したら辞めるんだからと言われたし。いや、辞めないし!!!


お母さんは一生の仕事にしたいと思う仕事に出会えていないから結婚を押し付ける。私は仕事が楽しくて一生続けたい。

きっと、私とお母さんは相容れない。考え方が対照的でまるでみのりと梨乃だね。


みのりは仕事人間で…

梨乃は恋愛に傾いている。


きっと対照的だから梨乃はみのりに惹かれたのかもしれない。人間は自分にない物を持っている人に惹かれる傾向にある。


みのりと森川愛ちゃんは似た物同士かな。森川愛ちゃんとみのりの仲の良さを見ていると安心するし疲れも癒される。

森川愛ちゃんはみのりが等身大でいられる存在だし、何より2人の笑顔が可愛い。


でも、きっと梨乃は森川愛ちゃんを敵視している。全ての人がライバルになるせいで。

恋って…本当、面倒だね。仕事の方が楽しいのに恋に溺れる人は後を経たない。


梨乃みたいに…

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