第166話/ゼロ距離の私達
谷口美沙.side
今日、久しぶりにみのりに会い、沢山話し、沢山戯れあった。こんなにも戯れあったのは高校生の時以来かな?
あの時は私が常にみのりに引っ付き、みのりに触れていた。離れたくなかったから。
みのりは私の前ではいつも無邪気で、子供みたいで可愛いから私も子供になる。
今もみのりは私に甘えるように引っ付き、近い距離で話している私達。でも、私も今日は甘えん坊でみのりに引っ付いている。
みのりの腕の中は温かく、私の大好きな場所だ。笑うと目が細くなるみのりの目が大好きで、永遠に見ていたい。
みのり、覚えてる?みのりが私に色をくれたの。みのりの一言が私の世界をパステルカラーにしてくれたんだよ。
「美沙の隣がいい」
みのりにとって何気ない言葉だったかもしれない。だけど、あまりにも一緒にいる私達に対し冗談混じりのクレームが入った時、みのりが全く気にせず言ってくれた言葉。
あの日からみのりは私のオアシスでもあり、世界で一番好きな人になった。
みのりは私がしてほしいことをしてくれる。みのりが私をギュッと抱きしめてくれた。
私達の距離は今にもキスができそうな距離だけど、動揺もしなければ驚くこともない。
これが私達にとって普通の距離だから(私の場合はみのりせいだけど)
今日はみのりの温もりと匂いを沢山感じられて今まで我慢をしてきたことが報われる。
ただ、今日は本当に距離が近くてみのりがめちゃくちゃ甘えてくるからドキドキする。
今は服を着ているから、まだ落ち着いていられるけどお風呂でこんな風に甘えられたら流石に照れてしまうそうだ。
あっ、、首にチクっと痛みが走った。
私の首元にはみのりの唇があり…キスマークを付けられたことが分かった。
「この前の仕返し」
「なにそれー」
ニカっと笑うみのりは子供みたいで、まさかみのりに仕返しをされるとは思わなくて驚いたけど「へへ」と笑うみのりが可愛い。
私もまた…って思ったけど、思いとどまる。みのりは今、人気アイドルだし今現在、映画の撮影中だと言っていた。
「あっ、みのり。映画の撮影はどんな感じ?ドラマとは違うの?」
「変わらないよ。撮影期間が短いぐらい」
「そうなんだ」
「うん」
みのりが出演する《さんかくパシオン》はお母さんが全巻購入済みで私も早速読んだ。
みのりが演じる上坂未来は可愛い女の子で、きっとみのりの可愛い部分が生かされる。
映画を楽しみにしているけど、恋愛漫画だからキスシーンがあり…もう、みのりはキスシーンを演じたのかな?
みのりはどんなキスをするのかな?一度、私からしたことはあるけど、あれは一方的なキスだったから違うし。
「キスシーンある?」
「うん。もう、撮り終わったよ」
「そうなんだ」
あっけらかんに撮り終わったよと言うみのりはやっぱりみのりで、何事にも動じない。
緊張したーとか言うかなって思っていたけど、みのりは仕事と割り切っているみたいだ。
「映画、楽しみにしてるね」
「ありがとう」
このフニャと笑うみのりの顔を見ると、みのりと毎日会いたい気持ちを抑えきれなくなるよ。せっかく、我慢をしているのに。
この憎たらしい笑顔を手のひらで潰す。タコさんみたいな顔になったけど可愛い。
もうすぐ、夜中の2時を回ろうとしているのに私達はまだまだ戯れあう。
今日は沢山互いを充電したいから、私達は1ミリも離れず戯れあう。
これが私達にとって普通の行為。高校生の時から私達はこの距離だった。
みのりに沢山、抱きつかれ
みのりの笑顔を間近で沢山見て
みのりに沢山、可愛いと言われて
みのりに沢山、甘えられ
みのりと私の仲にはパーソナルスペースがない。だからこそ、近い距離でいる。
勿論、最初は私にもパーソナルスペースがあったよ。でも、みのりが壊してしまった。緊張や不安を全て壊し、私を変えた。
だならこそ、女の子とこんな風に戯れ合うのはみのりだけでみのりとしか出来ない。
みのりは相手を狂わす女の子。私の中の普通をおかしくされた私は元に戻れない。
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