第105話/驚きのイマジネーション
ドラマの影響力は絶大で嬉しさもありつつ現実を思い知る。きっと、メジャーデビューだけじゃこんなにも集客力は上がらなかった。
人気漫画が原作で人気アイドルの高橋君が主役で、人気若手女優の森川さんが出演するドラマに梨乃と私が出るからこその影響力。
今日、ライブに来てくれた新規のお客さんは佐藤小春と鮎川早月を演じるアイドルがどんな女の子か見に来ているはずだ。
変わっていく状況に戸惑い、胸を弾ませながらレッスン着に着替えストレッチをする。
今日は私にとってメジャーデビューの発表と同じぐらい大切な日だ。今まで応援してきてくれたファンにやっと直接ドラマの報告ができるし想像以上の反応があり嬉しい。
美香や由香里も今の状況が分かっており、気合を入れている。この波に乗ってみせると、必ず売れてやると気迫を感じる。
私も負けられないし、この波に必ず乗り、アイドルとして女優として飛躍したい。
「ふぅ、やっと抽選が終わった」
「よっちゃん。お疲れさま」
「みのり、ありがとうね。だけど、かなりの人が抽選に漏れて帰ることになったから勿体無かったわ。あっ、あと今日のチェキ会中止にするから。この人数はとても捌けないし」
よっちゃんが悔しそうな顔をする。当然だ。今回、抽選に漏れた人がまた来てくれたらいいけど次も来るかなんて分からない。
それにしても…チェキ会が中止になるなんて。まさかのことで驚いた。
「さぁ、みんな!気合入れて頑張ってね!新規のお客さんが沢山来ているからアピールするチャンスだよ。このチャンスを掴もう」
よっちゃんが私達を鼓舞する。私達はこのチャンスを掴まないといけない。
地下アイドルには滅多に新規のファンは来ない。今日は新規のファンを掴むチャンスの日…そして、ランクアップする日なのだ。
最終リハを終え、みんなでMCの打ち合わせをする。今日はリーダーの私がメインで話すことになっており、しっかり頭の中で話の内容を組み立てる。
緊張してきた。いつものライブだけど、いつものファンより新規のお客さんが多い。
だからこそ、失敗が許されないし今日は新規のお客さんに色々とチェックされる日だ。
別に今日だけの判断で決まるわけではないけど、アイドルCLOVERの真価を問われる日である。それに、アイドル好きではない人達からのジャッジほど怖いものはない。
楽屋の外からゾロゾロと大量の足音が聞こえてきた。もうすぐライブが始まり、新しいお客さん達と対峙する。
久しぶりの緊張感。いつも見慣れたファン以外の人が沢山いるライブは一番最初のライブ以来になる。
あの頃のライブを思い出す。めちゃくちゃ緊張して、楽しいって感情より不安が大きくてMCも声がずっと上擦っていた。
今日はあの頃より成長した自分でいたい。成長した姿を感じたいし、成長していなければダメだ。今日、CLOVERは更に進化する。
「さぁ、みんな準備は出来たわね!今日は大きな戦場よ!打ち勝ってきなさい!」
よっちゃんの鼓舞に私達は気合を入れる。今日は初めてみんなで輪になり、手を重ねてみんなで気合を入れた。
ステージに向かう途中、私は緊張している梨乃に「楽しもう」と声を掛ける。
梨乃が「うん」と言いながらやっと笑顔を見せてくれた。今日はみんなが輝く日。
私は梨乃のダンスが楽しみだ。きっと、今日初めて梨乃のダンスを見た人は圧倒され驚くはずだ。それほど、梨乃とダンスはギャップがあり魅入ってしまう。
ステージ裏でも分かる沢山の人の熱気。今まで聞いたことのない沢山の話し声が聞こえ、別世界に来たみたいだ。
私達を応援してくれているファンの人達の声援が聞こえる。この声援はどの声よりも大きく、私達のボルテージを上げてくれる。
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