第71話/王子様=恋愛?

久しぶりに読む漫画本は楽しく、熱中してあっという間に読み終わってしまった。小学生の頃はよく少女漫画を読んでいたけど、中学生の時に大人ぶりたくて小説を読むようになり、活字の面白さにハマった。


小説は漫画とは違い文字しかないから頭の中で物語の映像を作るのが楽しくて好きだけど、漫画は絵があるからこそ内容のイメージが掴みやすい。

この子が…私がオーディションを受ける鮎川早月。髪は私より短く後ろで結んでいる。


ベッドの上に座りながら本を片手に自分の髪を触る。今より短い髪型にするとどんな感じになるのだろう?

私は鮎川早月みたいになれるだろうか?髪色も今より落ち着いた色に染めるからきっと私のイメージは変わるはずだ。



鮎川早月(あゆかわ さつき)

17歳(高校2年生)

バスケ部のエースでハンバーグが好き

久保田凛(三番手の役)の友達で、森田翔平(主人公)の幼馴染



ヒロインの佐藤小春とは主人公との繋がりで話すようになり、小春を見守る存在になる。

そして、佐藤小春がクラスメイトから虐めに遭いそうな時に助け、仲良くなる。鮎川早月は四番手の役だけど、かなり目立つ立ち位置におり人気が高いキャラだ。


演技経験のない私はこの役を掴めるかな…。きっとヒロイン同様この役のオーディションも倍率の高い戦いになる。

梨乃は凄い。初めてのオーディションでヒロイン役を勝ち取るなんて凄すぎる。


私は更に鮎川早月を調べるためにSNSで検索をすると、原作ファンが早月が好きすぎてめちゃくちゃ語っている人がいた。

そして、佐藤小春と鮎川早月のことを熱く語っているファンが多く、2人は漫画の中で人気のあるコンビみたいだ。


あゆかわさつき(鮎川早月)×さとうこはる(佐藤小春)で《あゆはる》と言うコンビ名もあり人気の高さを窺わせる。

名字と名前をとったコンビ名。私と梨乃もみのりのってコンビ名があるし、コンビ名を付いた2人は相乗効果で人気が出やすい。


だけど、コンビって何だろうっていつも思う。私は梨乃と同い年で、一緒に過ごすことが多く仲が良いから写真をよく撮っていた。

それをSNSに載せて、ファンの間でいつの間にかみのりのってコンビ名が出来て呼ばれるようになり浸透していった。


もし、私は鮎川早月役を勝ち取ったら梨乃とのコンビ名があゆはるって呼ばれるかもしれないなって大きな夢を見る。

漫画では四番手の役だからドラマでは目立たないかもしれないけど、私はどんな役でもいいから勝ち取りたい。


私はグループでも四番手…


笑いが込み上げてくる。グループでの四番手はあんなに嫌なのに、ドラマの四番手になりたいと反対のことを思っている。

鮎川早月を沢山研究してなりきってみせる。やっと私にもチャンスが舞い降りてきたんだ。必ずチャンスを掴まなきゃ…


と思っていたら私の携帯が揺れる。画面には美沙の名前が表示され出ると「みのりー」と甘えた声で私の名前を呼ぶ。


「美沙、私の首に付けたでしょ」


「あっ、バレた」


「当たり前でしょ」


「でも、軽く付けただけだからすぐに消えるって。それまではコンシーラーで隠してね」


美沙は悪ぶれることなく反省をしていない。でも、私も本気で怒ってはいない。

流石にライブの日だったら困るけど、今日はレッスンだけの日だったからだ。


「あっ、そうだ。美沙は彼女はちょっと変わっているって本を知ってる?」


「知ってるよー。持ってるし」


「そうなんだ」


「急にどうしたの?みのりは漫画本を読まないのに」


「面白そうだったから読んでみた」


「そうなんだー!私ね、早月が好きなんだ」


まさか、美沙は早月が好きとは。早口で早月がどれだけ重要なキャラか説明され、美沙の早月に対しての熱い想いが伝わってくる。


「私ね、小春が一番心を開いているのは主人公の翔平じゃなくて早月だと思うんだ」


「そうなの?」


「アイドルの話だと翔平と話が合うけど、ピンチの時に現れるのは早月だし、一緒にハンバーグを食べる話が好きで何度も読み返した」


「あぁ、あの話ね」


小春がアイドルのライブ帰りに偶然早月と出会い、お腹を空かせた早月が小春を誘い初めて2人で食事をする話だ。

この時、小春は断ろうとするけど早月が世界一美味しいハンバーグのお店だよと言い、早月の親が経営するお店に連れ行く。


ハンバーグを食べた小春が初めてアイドル以外のことで笑顔を見せる。


「小春がね、可愛いの。ハンバーグを美味しそうに食べて、それを嬉しそうに見つめる早月も最高だし。普通さ、主人公とヒロインが恋愛に発展していく話が多いのに、この漫画は小春と早月が距離を縮めるの。主人公はアイドル仲間的な感じで。設定が面白いよね」


「そうなの?」


「えー!みのり、ちゃんと漫画読んだー?」


「読んだけど…私的には小春と早月が仲良くなって青春だなって感じて」


「それはそうだけど、絶対小春は早月に恋心抱いてるよ。だって、王子様だもん」


「王子様…」


読み手によって感じ方が違うと知り驚いた。私には小春と早月が友達にしか思えなかったし、王子様と言われてもピンとこない。

それに、小春が早月のことを王子様と思っていてもそこに恋愛要素が入るとは限らない。


王子様=恋愛

これって普通なの?

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