第2話/透明なプロローグ

去年、所属する事務所から作られたアイドルグループ【CLOVER/クローバー】は平均年齢17.75歳の4人グループだ。


藍田みのり/Aida Minori(19歳)チームカラー黄色・リーダー

松本 梨乃/Matsumoto Rino(19歳)チームカラー黄緑

友永由香里/Tomonaga Yukari(17歳・高校2年)チームカラー水色・二番手

上野 美香/Ueno Mika(16歳・高校1年)チームカラーピンク・センター


私はグループのリーダーとして日々、他のメンバーを引っ張り、CLOVERをトップアイドルにするべく頑張っている。





ここでもう少し、私が所属する(地下)アイドルについて説明するね。私がどんな生活をしているか知ってほしいが本音だ。


私は主に週4でファーストフード店のバイトをし、アイドルの仕事がない日にバイトのシフトを入れお金を稼いでいる。

側から見たら大学生が大学に通いながらするバイトのように見えるけど、私は大学に通ってないし、アイドルをするために働いている。


これでも私は恵まれている。実家暮らしだから週4のバイトで暮らしていけ、一人暮らしだったらとてもじゃないけど無理だ。

私はお母さんに反対されてもなったアイドルの仕事をやり続けるために、アイドルの仕事がない日は朝から晩までバイトをしている。


そんなアイドルの仕事は自分がどれだけ頑張っても報われないことがある。

歌やダンスを頑張っても、リーダーとして頑張っても注目されなきゃ意味がなく、頑張ったから認められるとは限らない不条理があり、矛盾と戦う世界がアイドルだ。



【アイドルの世界は残酷なんだよ】



この言葉はトップアイドルになった人の言葉で、私もアイドルになり、やっと言葉の意味が分かり、残酷な世界だと知った。

自分がどれだけ頑張っていても常に順位と闘い、簡単に勝ち組と負け組に分けられる。


これはどのアイドルグループも一緒で人気アイドルグループもメンバーによって一軍・二軍などの扱いをされる。

人気ある者と人気がない者。前者はテレビに出られ、後者は存在するだけ。


流石に言い過ぎかな…。後者はライブや何かしらやっているが正解だ。

だからこそ、アイドルをやるには心が強くないと心が病み、アイドルとしての自分が死んでしまう。勿論、ファンも同じだ。



CLOVERの人気順は最年少の美香が一番で二番目は由香里。私と梨乃は三番手と四番手をウロウロしている。

私が他のみんなより一番頑張っているのに…なんて、考えても意味がない。アイドルも世の中も競争で勝った者が勝者だ。


私はいつも端っこで歌い踊りながら、いつかセンターに立ちたいと願う。

歌には自信ある。でも、メインパートを歌うのはセンターの美香でこれが格差社会。

やっと夢を掴んだのに、夢が私を息苦しくさせる。上手く呼吸をさせてくれない。


◆どれだけ頑張っても変わらない立ち位置

◆頑張っても変わらない現実…


憧れていたアイドルになれたのに、小さい頃に夢見ていたアイドルとしての活動は私の小さい頃のアイドル像を崩す。

何で私はセンターになれないの?と、何で美香がセンターなの?と愚痴を言う日々。


光り輝く、憧れのアイドルのリアルは残酷で私を惨めにさせる。


人気の格差は残酷だ。アイドルになる子は自分の容姿に自信を持つ子が多い。自分をブスだと思いアイドルになる子なんていない。

もし、いたとしたら一番あざとい子だ。みんな輝きたいからアイドルになる。


みんな意気揚々とアイドルになり、現実を突きつけられる。自分よりランクの高いアイドル予備軍なんて沢山いるのだ。

アイドルになって自分のランクを思い知り、同期のメンバーや先輩の可愛さに落ち込む。


だけど、容姿の格差で人気の順位が決まるわけではなく、一軍に行けるわけではない。

アイドルにとって顔は確かに重要だけど、別に一番綺麗で可愛くなくてもいい。


最初は顔の可愛さで注目し、好きになる人が多いけど、それはグループのファンになる入り口でしかない。

グループを知っていくうちにいつのまにか応援したい子に【推し変】していく。


だから、顔はもちろん重要だけど一番重要なのは自分のファンになってくれた人をどれだけ推し変させないかだ。



ファンの数は人気の証だ。ファンの声援の多さがアイドルを興奮させ、気持ちを昂らせ、アイドルとしての活力になる。

私にはこんなにもファンがいるという芸能人としてのプライドになるのだ。


だからこそ、人気格差が際立つ。人気を掴まないと大きなステージで光り輝けない。

私のいる地下は暗い。ライトアップされていても、すぐに壁が見える。

ステージからファンが持つメンバーカラーのグッズやタオルがよく見える。


前に一度、友達の美沙に推し変について話したことがある。その時、何で新規のファンや推し増しを作ろうとしないのって言われた。


そんなの地下に来れば分かるよ。大手のグループと違ってライト層はほぼ皆無で新規のファンなんて簡単に出来ない。

コアなファンばかりで、推しに対する熱量が高く、だからこそ…自分のファンを決して離してはいけない。





この話は私がアイドルとして成り上がる物語だ。私が望むアイドルになりたくて、必死に夢を掴み、人気のアイドルグループを目指す私とCLOVERのヒストリー。


◇アイドルは儚い夢だ


女の子はアイドルをやれる期間が短い。だから、ファンは短い夢の時間を夢中で応援し、その一瞬一瞬を目に焼き付けようとする。


◆永遠なんてない。

◆永遠がないからこそ、夢中にさせてくれる期間を追いかける。


夢中になれるものがある人は人生を謳歌している。だって、私がそうだから。アイドルは私の人生の一部になる。

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