第3話
宙舟は驚くスピードで空を進行していた。
「トモル、ちょっと速いよ」
「ごめん、急いでいるんだ」
つかまってと腰に手を当てさせて、トモルは麻のシャツを掴ませた。
「ふふ、良い匂い」
それはトモルの生まれ故郷の香りがした。
「クリセンマムまであとどのくらい?」
「ああ、もう少し」
トモルはロープを操って帆の向きを変えた。舟は一気に傾いた。
「落ちる、落ちるってば」
「大丈夫、僕につかまってれば」
ミチルはトモルの腰をぎゅっと抱いた。閉じた目をうっすら開けると宙船が星のように点々と堤防に留まっているのが見えた。みるみると広がる広大な砂漠。高くそびえる砂の塔。これはかってミチルが夢見た砂の国。宙舟の舟乗り達が生活する古代から伝わる大国。
「あれがクリセンマム!」
「ああ、そうだよミチル。ミチルのことは昔からみんなに伝えている」
「えーなんかくすぐったい」
トモルは急に真剣な顔になった。
「ミチル、約束は覚えているかい、大きくなったらクリセンマムの后妃にさせるって。あれ嘘じゃないからな」
「・・・・・・うん」
舟はクリセンマムに滑るように着陸した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます