星、満ちる

佐藤すべからく

第一章

第1話

 暖炉の中で火花がパチパチと鳴っている。木の温かみを感じる椅子に黒猫が揺られている。青い小さな星がちりばめられたパッチワークの毛布。


 陶器のように白い窓辺の机の上で、女の子の金髪の短い髪が揺らめく。黒猫の名前をアスター、女の子の名前をスメラギミチル。


「この本、面白いねミチル。最後なんか僕泣いちゃったよ」


 とアスターはまだ夢のまどろみの中にいる。この世界は犬も猫も人の言葉を話す。


「あー、それ失敗作」


 ミチルがふさふさと頭を掻きながら次の原稿に手を出す。


「えー、失敗作とか言わないでよ」


 アスターは前足でその本をポフポフとたたいた。


「失敗作は失敗作。次ぎ、次」

「えー」


 アスターはふてくされたように長い尻尾を動かした。それでもアスターはその後姿が好きだった。ピンクの鼻で楽しい歌を歌う。

 窓の外はほのかに灯る灯篭が踊り街を照らしていた。

 しばらくしてミチルはようやく背伸びをして、後ろを振り返った。アスターの顔を見てニッと笑う。


 アスターが言った。


「ねえ、アシュガのところへ行こうよ」

「いいよ、アシュガ元気かな」

「きっと元気だよ」


 ミチルとアスターはそれぞれの大きさのポンチョを羽織った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る