第34話 スペインリーグ第2節 レヴェル対チーナ 試合前

『皆さん、こんばんわ。今日はスペインリーグ第2節レヴェル対チーナの対戦の解説は私、神崎信介と毎度お馴染み浅沼さんですー』

『よろしくお願いします。神崎さんが本当に解説するんですね……』

『まぁ、番組では色々と言いましたけど高梨アナウンサーの代打ですよ。代打』

『そうですか……今回のチーナ戦は赤井選手はベンチなんですね』

『ええ、クック監督の赤井選手をベンチに下げさせると言うのは浅沼さんはどんな意図があるとお考えですか?』

『そうですね……赤井選手が不調なのか、それともチーナの出方を見る為だと思います』

『ほおほお……私、神崎は赤井選手の体力の問題だと思うんですよね……』

『体力ですか?』

『ええ、赤井選手は前回得点に絡んできたんですけどほとんど守備してなかったじゃないですか』

『まぁ、センターフォワードですし、カウンターを狙ってたというのもありますけど前線の維持に徹してましたね』

『ええ、そして最初はアシストに徹したじゃないですか』

『後半は自分で点数決めに行ってましたけど前半はアシストに徹してましたね』

『ええ、だから体力の問題だと思うんですよね』

『あぁ……そうですね。神崎さんに言われて気づきましたけど赤井選手は体力が少ないってクック監督が契約会見の時に言ってましたね』

『だから、それが関わってるんじゃないかなと言うのがサッカーファンからの意見です』

『神崎さん、俺よりも解説上手くありません?』

『日本代表の浅沼さんには敵いませんよ。ビギナーズラックみたいな物ですよ。それに赤井選手とは友人ですしね』

『そうですか……では、メンバー発表をしていきましょう』

『まずはレヴェル。FWはパブロ一人、MFにターロス………次にチーナです。私の番組でも紹介しました。カープはRWG。そして………となります。レヴェルは5-4-1。チーナは4-3-3の配置となっています。浅沼さん、注目の選手は誰でしょうか?』

『やはりチーナのカープですかね。彼はチーナを一部リーグに上げたスーパースターですからね。ただ、やはり赤井選手がいつピッチに出るかも注目です』

『前回のオリンピア戦では攻め込まれてましたから今日のレヴェルのディフェンスは大丈夫ですかね』

『ええ、そこも含めて注目です。まもなく試合が開始します』

「マジでスタメン落ちかよ……」

「まぁ落ち着け赤井。お前には絶対に後半から出てもらうぞ。もしかしたら前半の40分辺りかも知れないが」

「了解です。今はチームを応援してます」

「ああ」

監督との雑談を終え、俺はベンチへ。

今からチーナと試合を始めるチームメイトに目を向けているとチーナにいる男に目が止まった。

そいつは俺が一応知っている奴で監督がディフェンス陣に警戒しろと散々行っていた人物、カープだ。

まぁ、カープなのだが……俺とナルダは一緒に試合をした経験がある。そう、あのダニエル主催のお披露目試合だ。あの試合の時、調子に乗って10点決めたけど俺が点数決めるたびにカープは絡んできた。「おい、今のはなんだ?どうやったらその位置でボールが蹴れる?」とか、「赤井、お前やべぇよ!!たかだかアンダーに呼ばれるぐらいの若い選手しか集まってねぇけどその点数はあんまりだ!!」と敵チームなのに散々絡んできやがった。

連絡先?男の連絡先なんているかよ……。

試合前まで絡んできたかね。カープ。

そう、あれは軽くスタジアム走るかとピッチに出た時、急に横からカープに抱きつかれたのだ。

「おい、赤井!お前やっぱりスゲェよ!!オリンピアからハットトリックって本当にやべぇ!!なぁ、今日は試合出るよな?俺めちゃくちゃ楽しみにしてたんだよ!」

「ああ。出るよ、出るから離れてくれ」

「おお、すまねぇ」

そう言ってカープは離れる。

「試合前に相手選手と話していいのか?」

「まぁ、まだ前半戦だしな。優勝争いでもしてる時なら誰かからブチ切れられるけど」

「へぇ……」

「まぁ、今日楽しみにしてるぜ!!!」

とカープは去っていった。

のだが、カープのせいで集中が途切れてしまい結局アップで走るのはナルダとかが走るときと一緒になったんだよな。

カープの面倒くささを思い出している内に試合の始まる合図となるホイッスルがスタジアムに響き渡る。

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