第25話 大海獣は知ってても、それだけじゃ…。
「その船頭はどなた?」
小船が声の届くところにきて、メグは真っ先にクボに目を留めた。
黒狐との取り合わせは少々妙に感じなくもないが、互いに脅しも脅されてもいない様子なのはわかる。頭巾の下の黒狐の眉間だって険しくない。だから敵ではない協力者なのだろうとメグは判断した。
一方のクボは身分ありげな若い女に「ようこそはじめまして、協力に感謝します」といきなり朗らかに礼を言われ、自分の他に誰かいるのかと周囲を確かめてから、やっと深々と頭を下げた。
「こちらのお方が未姫様だ」黒狐が明かした。それを聞き、クボの小さめの目が最大限に見開かれた。まさか、大国の姫当人からにこやかに出迎えられるとは想像だにしなかったからだ。「お気になさらず。さあ、こちらの船へどうぞ」あくまで親しく声をかけられ、なにか大掛かりな罠にかかったのではないかと周囲を見回したが、近づいてくるのは若い女ばかり。おまけにそろって、邪気がない。
操舵輪の前にいたお福は、子供並みの体の大きさなのに、きっちり身に合った装甲服をまとったクボに目をとめた。軍服をきた小グマなんて曲馬団の出し物みたいだが、立ち振る舞いはキビキビして隙がなく、どう見ても本職の軍人、それも一般兵より練度の高い下士官相当に思えてならない。それにこの生き物には、どこかで見覚えがあった。
そこで確かめに行くことにした。
「えー、貴官とは前にお会いしましたかね。江津の海軍?黒狐のお友だち?」そう聞いてから、小グマが本来は萌軍屈指の特殊部隊とされる妖法衆付属機動団、それも最精鋭の一番隊所属だと知るや絶句した。
だが、すぐに彼女はクボの目の光に気づいた。「おや。さっきの妖術使いよりは話がわかりそうね。少なくともあれよりずっと知的だわ」と言った。
「ウラ地方の湖水族の出です。天涯の乱のあと獣人にされ、兵となったそうです」
黒狐の説明に、「ああ」とお福はいったん口を開いてから、納得したようにうなずいた。「湖水族だからこその毛並みですか。しかし、まあ、大変でしたね」
参州から遠く、冷涼なウラ地方には湖水族「エンバー」と呼び慣わされる種族が住み暮らしていた。
熊にも海狸にも似た外観と文明化を好まない独特の風習、高い知能を合わせ持った湖水族は、意思の疎通の多くを微弱なテレパシーで行うなどの珍しい習性でも知られていた。同時に念をもって外部に強烈に干渉する行為、すなわち呪術や妖術に対する耐性・順応性についても唯一無二の存在だった。
生物を再構成する術式の際、被験体が耐えきれずに死ぬのは珍しくない。だが、湖水族を核とすれば、複雑かつ高負荷の施術が可能となり、知能も肉体も優れた理想の妖物に近づける。ために術師の間では複数の生物を合成した妖魔獣や、人とけものと妖術のハイブリッドたる獣人を生み出す絶好の素体として珍重され、どの国でも厳しく禁じられているにもかかわらず、ヤミで湖水族を妖物化する例が絶えない。
なかでも二十年近く前、ウラ地方を巻き込む紛争の起こった際には、有名無名の術師が混乱する同地へ競って潜入し、湖水族を集落ごと拉致したり一族の手が加わった樹木・鉱物を呪物製造用に大量奪取したりの事件が頻発した。
当時、萌の国も豪胆斎も公式には一切湖水族への干渉はないと言明したが、その後同国の妖獣軍団の指揮系統がめざましく強化され、不可能とされた妖魔獣兵による水上戦を行う実験部隊が創設されたとの噂があった。
「この方が生き証人ですか」孔雪のつぶやきに、クボは少し悲しげにうなずいた。
メグは、出航前に買い込んだ食べ物を熱心にクボへ勧めた。当初は遠慮がちだったクボだったが、長く潮風に吹かれてよほど喉が乾いていたのか、水とりんご、そして栗を選んで受け取り、丁寧に礼をした。
「栗、そのまま食べてもらえるの」
クボは恭しくうなずいた。口元にシワがよったのは笑みのようだ。
「それはよかった。ねっ、栗って結構役に立つでしょう」
「武器にもなりましたし」とお蘭が言った。「あの赤い影の女、どうしたかな」
美歌がメグの耳元で聞いた。「お着替えでも差し上げたいと思うのですが、こちらの方はその、どちらでしょうか。装甲兵だし鍛えてそうだし…でもやっぱり、お福さまも水兵だったしたな、とか考えて結論が出なくて」
そのとき、メグと美歌の頭に言葉が浮かんだ。
(妖術師ミゲルは種族を問わずとにかく雌、女が好きでした。なのでわたしが配属されました)
クボの念話だった。「えっ、じゃあ、あなたやっぱり女の子?」
クボはうなずいた。まぶたをパチパチさせたのは照れのためらしい。
「これは失礼いたしました。でも、そんな鎧を着込んでるから、てっきり」
(わたしの種族の男は体も小さく、荒っぽい仕事には適しません)
との言葉がまた頭に浮かんだ。(だから、却って大きな獣と合成されてしまうことがあります。わたしはまだ、ましな方ともいえます。少なくとも意識と意志は奪われませんでしたから)
「そう。わたくしたちって、甘いわね」メグたちは小柄なクボの歩んできた厳しい道のりを想像し、しょんぼりとしてしまった。
(余計なことをいいました。愚痴をこぼす機会が滅多になく)
「いいのよ、いいのよ。じゃんじゃんこぼして。それにしてもこの船、ますます、女ばっかりになったなあ。長老のお福さまを筆頭に七福女神の船だね。おまけのオス狐が約一匹」お蘭が言って、みなが笑った。
クボに見分け方を教わり、船にしつこく付き纏う化けクラゲの始末に行った黒狐が戻ってきた。水中に潜んだ群れの心臓部にあたる個体をモリで突くと、沢山いたクラゲの色が次第に濁り、蔓のように複雑に絡みあった足がみるみる生気を失った。
「こういう化け物が、一番厄介かもしれません」黒狐はお福に言った。
「まったく。どう育てどう運ぶのかさっぱり分からぬが、これを狭い湾内に巻かれでもしたら大ごとです。あとで江津にも対策を知らせるべきかも」
そしてお福は、黒狐が借りたクボの小型船を手早く曳航できるようにしつつ、「司令船のトドメをどうします」と聞いた。「術師も妖魔もまだ生きていて、きれいに逃げるにはもう少し手間をかけないと」
「近づいてさえいただければ、私が挨拶に行きます」黒狐は言った。「そういえば、この船はすごいですな。遠くからは滲んで見えるし、追跡すれば、追うのを止めようって声がどこかから聞こえます。クラゲに付き纏われたのは、相手が急がず漂ってるだけなのと、声を理解する頭がないせいでしょう」
「ほう」孔雪が関心を示した。「急接近する相手に精神攻撃までやってくれるのですか。メグ様の馬車を仕立てるとしたら、ぜひ搭載したい技術ですね」
「船による私への精神干渉は、乗船させた覚えがあったようで軽く済みましたが、クボ曹長はかなりうろたえていましたよ。まあ、一番うろたえていたのは公女とすぐお目通りし、直に言葉が交わせると知った時でした。萌では、あの身分だと国主の直視すら許されないとか。私など問答無用で叩き出される」
「藤は国主自ら、やあやあと雑兵のもとへおしゃべりにおいでになる落ち着きのない国柄ですから。これはこれでいろいろあってね。それはさておき、例の不愉快な術師は……」とまで言ってお福は小さく息を吐いた。
「愚問でした。あなたが元気に戻ったのなら、結果はひとつ。海の魚たちも、餌が増えたとさぞ喜んでいるでしょう」孔雪もうんうんとうなずいている。
「ところで、あの兵はどうするつもりですか」
「ここで解放してもいいと考えます。戻しても、豪胆斎の得になることは、自分からしないだろうし。心から忠誠を誓っていたのでは、まったくなさそうです」
「それより、下手に帰隊させたら罪に問われるのではありませんか、妖術師というのはそういう連中でしょう。ひとまず共に行動したらどうですか」
笑い声がして、振り向いたお福の口元も微かに笑った。視線の先には、クボらと明るく食べ物を囲むメグの姿があった。
「あなたさまの口からその意見が出るとは、嬉しいですな」
「私だって鬼や蛇ではありません。慇懃な死神に比べればはるかに慈悲深い」
「それはどうも」
「実は私も昔、湖水族とわずかながら関わりがありました。よそごととは思えないのよ」そうお福は明かした。
「ただ、心配がないわけではないですね」孔雪が言った。「本人が自覚していなくても、豪胆斎のごとき陰険を煮詰めた連中の元からきたのですから、こっそり良からぬ術式を施された疑い、例えば遠隔操作の呪を埋め込まれた可能性があります。クボさんは一般兵とは違う獣人・妖魔兵、それも特殊部隊の下士官級。だとすれば育成に相当な手間と費用がかかっているはずですし」
(これがそうです)クボの念話が割って入った。お福たちのそばにきて、肩あてを外して自分の首すじを見せた。付け根近くに、言われないとわからないほどのこぶがある。
(勝手にお話に割り込み、申し訳ありません)と謝ってからクボは説明した。
(首の左右には宝珠が埋め込まれています。普段はなにもないのですが、術師が一定距離に近づけば、これを通じてわたしを操ったり痛めつけたりできます)
「あっ、やっぱり豪胆斎の系統は接近操作が基本なのですね」自説が補強されたと思ったのか、孔雪は嬉しそうだ。「術師によっては刺青とか紋章とか、あるいは心臓に妖毛を結んだりして配下を遠隔支配するのがいるそうですが、趣は違いますね。なんというか、懲罰好きといおうか」
(ええ。戦闘において勢いや流れを重視する豪胆斎一派は、妖魔や獣人にその場の判断を大胆に任せたりします。その代わり、見逃せない失敗や命令違反のあった場合、使役係の術師がやってきて、処分されます)
「うあー、なるほど」メグもきて、クボの示す痕を目にしながら腕を組んだ。「いろいろやり方があるんだ。怖いな。我が藤の国はどうだったかな」
「藤はそんないやらしい慣習、毛ほどもありません。そこだけは自慢できます。それとメグ様、腕は組むものではないと何度申しましたら」
「はーい、ごめんなさい。でも、とりあえず今は大丈夫なの、クボさん?」
(さきほど黒狐氏が、わたしを使役する立場にあった妖術師の呪具を壊してくれました。この身の生殺与奪は奴が握っていたのです。おかげで、ずっとあった頭痛が消えました)
「これってすぐ取り出せる?」メグが黒狐に尋ねた。
「船の上ですからな。揺れない場所に行ってからごく小さく切り開き、きちんと化膿止めなどの後処理をする方が、結局は手短かと思います。えー、首を刎ねるのとはわけが違います。ずっと難しい」
「ええっ、そうなの?」
「そうですよ、たぶん」
「では掛け値なしで本心をお聞かせ下さい」孔雪がクボに聞いた。「あなたは今後、どうしたいですか」
すぐさまクボはうなずいた。(できれば当面は同行させていただき、そのあとは故郷に戻る手を考えたいと思います。こんな姿になってしまいましたから、子供の時のような緑の中での暮らしには戻れませんが、萌に帰投するよりはるかにましです。比較になりません。軍にいて唯一良かったのは、ひとり自給自足で暮らす術が身についたことです。帰郷さえできれば、なんとかなると考えます)
お福が繰り返しうなずいた。
「ご家族とかは、いらっしゃらないの」
(両親が一緒に萌に囚われ、それもあってわたしは軍務についたのですが、ミゲルの隊に配属された前後にどちらも亡くなりました。ですから、わたしを軍につなげておく軛は無いといえばもう無いのです。それに)クボはふいに沈黙した。
「それに、なあに?」
(少なくとも父については、容態が急変したのを、ミゲルが医者に命じて放置させたと見ています。わたしの里心を失くさせ、頼る相手を自分へと変えさせようとしたのでしょう。彼はそういう下劣な男でした。正直申しましてあの妖術師を退治いただいたのを、とても嬉しく思っています)
「突然に連れてこられて、お困りと思わないではなかったのだけど」
(いいえ。殺されても仕方ないのに、ここにいる皆さんは全員、初対面からわたしに一切手荒な扱いをなさらなかった。感謝しています)
海上に新たな動きがあり、お福は船の操縦に戻った。
敵の司令船はまだ漂流状態にあるが、大イカと装甲哨戒艇の戦闘が佳境に入ったらしく、さっきから派手な爆発音が連続して聞こえてくる。
クボが皆に伝えた。
(取り急ぎ、わたしの知ることをお伝えします。イカとガッキーと呼ぶ海魔のほかにもう一匹「倉健」とミゲルが呼んでいた海魔がいます。これは萌の妖法衆が育てた海魔のうち最大級の呪物です。司令船には術師が三人いて、うち一人は倉健の専任と聞きましたが、詳しいことは機密扱いでした。今回は実地試験を兼ねて連れて来たのですが、同時に海魔に後ろ向きな萌の国サラア国主と用人衆への示威の意味合いもあると思われます)
「倉健ちゃんって、どんな外観?」
(鯨だとか桁外れの金魚だとかいろいろ言われますが、常に海中を移動していて、実はわたしもはっきり確かめていません。ただしこの近くに潜んでいるのは間違いない。正確な位置のつかめないのは、ほかの海魔ほど細かく操作できないせいもあります。産み育てた術師を食べてしまったそうですから)
「へえー、大ぐらいのわがままだなんて、とんでもないな」
(敵に回すとかなり危険です。刃物でどうこうできる大きさではなく、逃げるよりないかと。ミゲルが他国に侵入してなお余裕を見せていたのも、倉健がいたせいかもしれません)
「ガッキーでもたいがい大きいのになあ」メグが言うと孔雪は、
「大海魔の噂は本当だったのですね。こういう場合こそ、逃げるが勝ちで。では、逃走を再開しましょう」
「ねえ、君が好きで斬りまくってる訳じゃないのは理解してるけど」爆雷を抱えたお蘭がにやにやしながら、綱や手鍵を準備中の黒狐に言った。「たまにはきちんと感謝してくれる相手がいて良かったね。それも女性よ、カワイイし」
「お福さまの死神扱いが少々つらい」
「あら、そう。でもクボさんまで斬らなかったのは、さすが冷静な剣客」
「伊達男と斬り合う直前」黒狐は言った。「僕の二つ名は妖糸遣いだ、と奴がうそぶく記憶の断片が頭に閃いた。使い魔を封じた瓶を自慢げに披露する姿とかも」
「クボさんがこっそり教えてくれたの?」
「ああ。ミゲルの攻撃を落ち着いてさばけたのは、ありったけの感応力を振るって彼女が念話してきた結果だ。伊達男に気付かれたら、まず殺される危険な行為だよな」
「よほど、ムカついてたのかな」
「あとから聞いたら、偵察艇の少年兵相手に無意味な虐殺をやらかしたのが許せなかったそうだ。それで連れてきた。どなたかに似てると思わないか」
メグたちの妖精艇がふたたび起動したのがわかったらしく、哨戒艇との戦闘からガッキーこと特大のトビウオとミノカサゴのあいの子みたいなのが離脱し、司令船を目掛けて直進してくるのが見えた。水面から飛び上がり滑空してから、また泳ぐ。すばらしく早く、瞬く間に接近してくる。
「全速前進」お福が船に命じた。
「お福さま、爆雷に着火準備完了」孔雪が叫んだ。
「よろしい、着火しなさい。まず、あの個性的な魚を大人しくさせます」迎え撃つ形でメグたちの妖精艇は進む。
トゲだらけの巨大魚は、水面を飛び跳ねるように司令船に、そしてメグたちの船に近づいてくる。みるみる距離が詰まる。「爆雷破裂まであといくつ?」
「あと八十っ」美歌が答えた。
お福は水面をジャンプし続ける魚の前方で船を大きく回り込ませた。彼女が帆につながる縄を力一杯引くと、船体が傾いた。
ガッキーのいかつい顔が、いままさに船体を飛び越そうとしている。
「ひいー」メグは思わず悲鳴を上げた。
「お蘭っ」
「あいよ、お忘れ物が三つ」お蘭が大きく両手を振って、また身を伏せた。
水しぶきが上がってガッキーは船を飛び越す形で着水した。蛸壷みたいな爆雷を計三個、投げたはずだが魚体のどこにも見あたらない。
しばらくするとくぐもった音がして、そのあとびりびりと周囲の空気が震え、なにかが次々と海へと飛び込む音が続いた。
ちぎれ飛んだ化け魚の身体が海に投げ出されているのだ。
「あらガッキー、最後の食事は爆雷だったのねえ」
「大口開けてるからよ」
「仲良くなりたかったけど、これでは無理。わたしたちを恨まないでね」
女たちが見ていると、腹のあたりから引きちぎれた大きな魚の体が波に沈んでいった。上空をさっそく鳥たちが舞っている。
「回収して食料にするのは、やめておきましょうか」孔雪が独り言を言った。
「よし、次はもう一度、司令船」お福は顔色一つ変えず、船をまるで単座のカヌーでもあるかのように軽々と操る。クボがあぜんとした顔をしている。
「船長、あと一発しか爆雷がありませぬ」と黒狐が言うと、お福がにべもなく答えた。
「なら無駄にしないよう、あなたが持って乗り込みなさい」
「うひっ、獣人づかいの荒さよ」
海の先ではさっきのイカの化け物と装甲哨戒艇がまだ戦い続けている。どうやらイカは重い傷を負い、動きが徐々に鈍りつつあるようだ。
司令船は応急処置したのか、そろそろと動いている。
「しゃあない、行って参りますか」黒狐が立ち上がったところ、
「まって」メグが声をかけた。「沖が、変よ」
海の真ん中が不自然に盛り上がりつつあった。水中から無数の泡が、あとからあとから盛り上がってくる。
島が隆起するように水面が割れ、黒い壁が目の前に浮かびつつあった。お福は「急発進」と一声叫んで異常事態から脱出を図った。風も止んでいるのに帆がいっぱいにふくらみ、メグたちの船は離脱しはじめた。
「あれはなに」船尾に移動したメグが見ているうちに、海面がもりあがり、うねった。ばかげたほど大きな魚影なのがようやく理解できた。
「鯨?」「あれが倉健ちゃん?うっそおー」
海を切り裂くようにして、巨大な魚の顔が水面にちらっと見えた。すぐに水しぶきがあがり、渦が巻き起こる。
予想を超えた状況に、お福は慌てて船をさらに進め、影響圏から離脱させようとした。島が隆起するように水が盛り上がり、水しぶきを吐き出す魚の頭部が海に浮かびあがった。
「なんだこりゃ」肝の太いお蘭が茫然となった。
「お魚だわよ、ねえ」ぽかんとした顔で美歌がつぶやいた。
「あれが噂の……」メグが指差すと厳しい顔つきのクボがうなずいた。
装甲哨戒艇を丸呑みできそうな巨大な口が開き、咆哮が四周に轟いた。空にいた海鳥が逃げていった。大きな魚というより、海を行く巨大な獣のようだった。一同はしばらく、その恐ろしくも珍しい姿をじっと見つめた。
「捕まえて見せ物にしたら、ずいぶんお金がとれるね」
「その前に餌代で破産すると思うの」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます