第15話 姉の持つ鐘、兎の守り手
翌日、まだ昼になる前に行われた会食は、海燕公と嫡男がいまだ行方知れずという前提のため、メグほどの身分の客を迎えるにしては、時間はごく短く内容も控えめだった。
それでも、祭儀のため半年近く粗食を続けてきた彼女にとっては目のチカチカするほどのご馳走だった。概して江津の国はカラフルな食器を使うが、そこに盛られた料理も色とりどりである。お国柄からごちそうは海産物が中心だった。
末席にはお福、お蘭、美歌、そして孔雪も座っている。彼女らも館では、メグに付き合わされて野菜の煮付けみたいなものばかり食べていたから、大きな魚を取り分けてもらいながら、すました顔を保持するのに苦心していた。食後の菓子になると、自制心の強い彼女らもそろって目が激しく揺れ動く。先日の街道の駄菓子とは、味はともかく、見た目の華やかさが違う。
江津の国の主であり姉の夫、美里公セイモンは豊かな栗色の髪を頭に乗せたほっそり長身の男である。女たちの様子を見てとると、「菓子でよければいくらでもおかわりをしておくれ。厨房も喜ぶ」そう言ってにっこりした。
顔立ちはすっきりして穏やか、気質も温和だとされているが、他国との交渉ごとに際しては、なみなみならぬ手腕を発揮すると言われる。また立場の弱い者にも目配りがきき、身分の上下を問わず領民からの人気は高いそうだ。
メグにとっては他国の君主のうち最も見慣れた人物であり、さほどの緊張はなかったし、相手もうちとけた様子で話しかけてきた。
父と兄については直接話題にはしなかったが、代わりとして公開したメグの逃避行の話は、出席者や会食を支える家臣団に受けに受けた。
飲ませたのは毒でなく強い酒に変更しておいたが、相手の決起集会を利用して広間に閉じ込めて逃げたと語ったところ、群臣に大喜びされて拍手までもらった。美里公からも、「裏切り者どもの機先を制して逃げ得たとは。その勇気、その機転、さすが奥の妹だね」とのお言葉があった。美良野の方は苦笑していた。
メグが消えたと知る前に出されたと思しき内藤洞山からの書状には、沢木の子息の努力によって未姫もまた無事こちらに合流する運びである、ご心配に及ばない云々と、いろいろ都合のいい事が書いてあったそうだった。
会食がお開きになる直前、美里公はメグに対し言った。
「その後、内藤からはなにもない。心配していた内戦が起きたという報告もない。見込みのない希望を持たせたら、その後の悲しさが増すと思って言わなかったが、もしかしたら、ほんとうに海燕公と太郎殿が逃げ延びたとも考えられる。当分はこの国で休まれて、霧が少し晴れるのを待たれたらどうかな」
会食が終わると、公は臨時の国防会議があると退出した。内藤と萌があまりにも何も仕掛けてこず、その底意を検討するのだという。姉もそれに従い、先に部屋を出た。
すると案の定、数名の実務責任者クラスと見られる人々と、この前の女内務卿がメグ主従に近づいてきた。いちおう美歌とお蘭に話しかける体裁だったが、意識はメグにあるのはすぐわかった。
いつも感情の読み取りにくい孔雪が、(そらきた)という表情になっている。
「わたしの臣に特別に鐘を見せてくれるそうですね」メグは自分から尋ねた。
「は、はい。そのつもりでございます」
「ならば私も同道してよいですか。長い間目にしておらず、懐かしい」
「もちろんにございます」
控えていた内務卿の部下が小走りになってどこかへ消えた。
姉の所有だった歌う鐘の姉妹品、通称「兎の守り手」の置かれた祭壇は、政庁と領主の執務エリアをつなぐ長い廊下にある。派手好きの国だけあり、上は吹き抜け、手前には果樹の森のジオラマのように飾られた祭壇があり、市民ホールの一隅というより展示のための特別な聖堂に思える。
今日は特別に人払いをしてあるが、いつもはただの領民であっても、そばに近づいての見学が可能となっていて、晴れた日は役所にきた人々が、これを観てからむかいの庭園に腰をかけ弁当をつかったりするそうだった。
中央にガラスでつくられた立派な大ウサギが置かれ、それに護られるかのように姉のお守りは安置されてあった。兎の鐘は、未と同様に金属と水晶を組み合わせてあり、形としては樹木を抽象化したような姿をしている。三つの守り手を重ねた際の土台にあたり、大きくて風格がある。これとメグの鐘、次姉の鐘を組み合わせると父の所有の鐘と照応する形になるが、実際のところ雰囲気はかなり異なる。
この祭壇は姉の輿入れに合わせて築かれた。完成した直後にはメグもここへ招かれたことがある。当時は大ウサギを取り巻くように小ウサギが何羽も何羽もいて、まだ子供だったメグを喜ばせてくれた。記憶に残った映像には、はしゃぐ妹を見守るなんとも幸福そうな若夫婦と、それを取り巻くどこか怖い顔をしたお付きの衆の姿があった。
当時の情景の意味については、あとになって母が少しだけ解説してくれた。
憧れの人との恋を実らせた美里公と、尊敬してやまない人物の親戚となれたその父の男二人が幸福の絶頂にあったのに対し、その母であり正室であり城の奥向きを束ねた人物と彼女の実家はそうではなかった。かなりの温度差があったという。「面子」という曖昧かつ厄介な言葉の存在をメグが知ったのも、姉の婚姻からだった。参州指折りの名門である母親の実家が長年温め、準備していた縁組を美里公父子がむざむざ断ったため、面子が壊滅的に破壊されたそうだった。
そんなことを思い出していたら、考え込む彼女の姿を気にしてか、係の人間から小声で説明があった。どうやら姪っ子に目をつけられ、子ウサギの一部が壊されたため他は引っ込めたらしい。
「実は」新任の紺野内務卿がメグの傍に立って言った。
「この鐘が先日、急に鳴り始めまして」
「ほう、そうですか」優秀な諜報員であるところの美歌から聞いているので、驚きはなかった。もちろん姉の兎の鐘にも音を出すためのしくみなどない。
「わたしの鐘が、最近鳴ったかどうかを知りたいのですか?」
逆にメグに問われ、紺野は恐縮してみせた。
「いえ、そのような……しかし、参考までに」
「残念ながら、うんともすんとも言いませんでした。持ち主に似て、ずぼらなのです」
「はは、そのようなことを」
「気になるようですから、出しましょう」そう言ってメグは腰につけたケースからさっさと鐘を取り出して見せた。
小さく歓声が起こったが、メグの「未の鐘」は、見ようによれば、田舎の土産物屋に売られているやぼったい装飾品みたいなものである。
目にしたほとんどの人間は、「なんだ、小さいな」と感想を抱くはずだ。
「よければ触れても構いませんよ」とメグに言われて、ハッとなった紺野だったが、すぐに「ストヴェ」と短く呼んだ。
奥から灰色の服を着た若いのか年寄りかわからない人物が出てきた。静かな身ごなしで素早く動く。女か男かも判然としないが、骨格からすると女性のようだった。それもかなり若く、メグともそんなに離れてはいないだろう。
「あちらの孔雪みたいなものですか」お福がぼそっと言った。
ストヴェはわざわざ手袋をはめて口元に布をかけ、うやうやしく礼をすると祭壇の上にメグのお守りを置いてのち、ためすがめつ見た。
そのうち、なにか言いたげに視線をメグと紺野に向けたので、
「いいですよ。打っても、齧っても」と、メグは言った。紺野が大袈裟に頭を下げたが、ストヴェは遠慮もなく、細い樹の棒を勢いよく当てた。コツン、と音がしただけで殷々ともふるふるとも鳴らなかった。姉の鐘にはメグも触れた経験があり、叩くとよく反響するのは知っていた。納得したような顔を上げたストヴェが、紺野をチラッと見た。すると紺野が「恐縮でございますが、しばらくの間だけご辛抱ください」と言った。
ストヴェはいったん祭壇に戻したお守りに軽く触れながら背筋を伸ばすと、なにかぶつぶつ呟きはじめた。紺野たちは息を飲むような顔つきをしてその姿を見つめている。
今度は孔雪が近くにやってきて、物言いたげに突っ立っている。メグは列を離れて彼女の口元に耳を寄せた。
「黒狐が、あの女はヌイイの流れをくむ術者だろうと。以前に古老から聞いた特徴と符合するので、私も彼の見解を支持します」
「あ、そうか。そういうことね」
メグはすぐに意味を理解し、離れた場所に控えている黒狐に軽くうなずいて見せた。
ヌイイとは西方にあった小さな国の名称である。古くは精緻な工芸品で知られ、その後宝石の加工に使う工具や加工装置、そしてもっと大きな動力機械まで手掛けるなど非常に工業技術の発達した国だった。同時に多数の錬金術師、占い師、妖術使いを輩出したことでも有名であり、双樹とも発祥が同じという説があった。すべて過去形なのは、70年ほど前に起こった大地震をきっかけに、国そのものが分散消滅してしまったからだ。その地震も妖術の結果という説もあるが、真相はいまだ不明である。
ヌイイの術者の技術のうち特に有名なのは観の目、すなわち真贋や出処、あるいは強み弱みまで、いろんな対象をあらゆる角度から「見抜く」術だ。
とりわけ古典籍から遺物、宝石や美術工芸品の鑑定には定評があり、めくらましの術を見破りたい時はヌイイの術者を呼べと言われた。「見者大学」という立派な学校もあったと伝わる。
いまストヴェが懸命に取り組んでいるのは、さまざまな言語による多種多様な呪文を片っ端から試す解錠術だろう。用意したたくさんの鍵をいちいち鍵穴に挿し、どれが正しいを調べるのと同じ理屈である。メグのお守りについて、隠された意味の有無や、あるいは密かに術が施された呪物でないかを調べているわけだ。
次々とストヴェの唱える呪文がかすかに耳に届くが、メグの理解できるのはその半分にも届かない。おまけに自分で使いこなせるとは、あの若さでいったいどれほど勉強しているのだろうと感心する。
一方、メグのすぐ後ろにいるお福は険しく不満げな顔をしている。おそらく孔雪との会話が聞こえたのだ。ストヴェの行為は公女の持ち物を値踏みするにひとしく、無礼極まりないと言いたいわけである。メグはお福に片目をつむって見せた。
ひととおり呪文を試したらしいストヴェの額には、汗が浮いている。
最後に彼女は鞄から小皿を取り出し、お守りの前に置いた。そして瓶から液体を皿に注ぎ、別の小瓶から香油らしきものを数滴垂らし、手でしばらくぱたぱたとあおいでから皿をじっと見つつ繰り返し角度を変えた。いわゆる水鏡の術である。水晶などをのぞき見て過去や未来を見ようとするのとねらいは同じだ。かなり簡易な方法の気がするが、おそらく宝飾品を現地で素早く鑑定するために編み出された技術なのだろう。
横のお福はまだムスッとした顔をしているが、メグにとっては調べられる不快感より、ストヴェの術に対する好奇心の方がはるかに大きかった。
ふむ、という顔をしてストヴェはひとまず検査キットを片付けた。そして、紺野に短く話しかけ、布で自分の顔や手を拭ったのち、うやうやしくメグにお守りを返却にきた。
メグは笑顔になって、「もうよろしいか」と、受け取ると、ストヴェが呟くように言った。
「まことに古いものにございますね」か細く弱々しい声だった。
「ええ、父母の結婚に合わせて一から新しく作らせたのではなく、双樹にあった古い時代の品を分けたり組み合わせたりして形作ったと聞いています。兎の守り手もそうだと教えられていますが、間違いはありませんか」
「はい。お言葉の通りかと」
ストヴェは意を決したかのように、灰色の瞳を向けてメグの眼を見た。声と違って視線は強かったが、すぐに伏せた。
「あなたは……」メグが言葉をかけようとしたとき、
「おば、うええええー」と、悲鳴のような子供の声が吹き抜けに響きわたった。
「うひゃっ」メグは肩をすくめた。姪っ子のセイラ・彩芽の登場である。美良野の方と大ぜいの侍女たち、彩芽の兄である流星も恥ずかしそうな笑顔を見せている。その場にいた男女が一斉にかしこまった。
「遅くなりました。おや、アルオーラ。わが臣たちの好奇心に、さっそく付き合ってくれたのですね」
「はい。お役に立てて光栄です。ただし、わたしもこの鐘も、それ自体にあまり芸はないことが知れ渡ってしまいました」
「まあ。でも所詮、道具は道具ですからね」
「はい」
「ねえ、おばうえの未の鐘を調べていたの?」
「よく知ってるわね」そうメグが言うと、「うふふ、実はねえ……」彩芽がなにかを言いかけ、それを察した側近たちが、慌て顔をして彼女の発言を制しようとした。
「少々、お待ちを」「その話はまた、あとでお願いいたしたく」
「なあに、失礼ですね」彩芽がふくれると、
「いえ、そうはおっしゃいましても」紺野など、もう首筋から汗を流している。おそらく、例の鐘の真贋問題についての会話を、聞かれてしまっていたのだろう。
「ならば」若々しい少年の声が響いた。「今度は母上に試していただいたらどうだい。兎の鐘にどんな力があるのかを」嫡男である流星が妹に向かって言っているのだった。
「ふーん、なにしていただくの」
「兎の鐘は調和と共感のしるしといつも母上はおっしゃっているだろう。だからここで鐘を鳴らしていただければ、みんな楽しい気分になって仲良くなれるんだよ」
「なんだ、それだけ?」
「だめなのかい。素敵なことだよ」
「太郎おじさまは教えてくれたわ」彩芽は腰に手をあて、顎をそらすように言った。
「あの鐘、本当はすごいのよ。鯤って大きな魚を呼んで、空を滝に、海を陸に、そして陸を海にしてくれるんですって、それはもう、すっごいことになるそうよ」
「そこまでやると、迷惑する人がおおぜい出るのじゃないのかな」
「そうかなあ。お城の前が海になったら、楽しいじゃない」
話がおかしな方向に行ったが、紺野とうしろに控えるストヴェはまだ身を竦めている。人間爆弾のような気まま王女様には、彼女らであっても抗しがたいということか。すると、美良野の方がつと前に出てきて、
「太郎どのがそのようなことを申していましたか」と、聞いた。
「はい、母上さま」
「それはただのお話と思っておきなさい。夜、寝る前に読むような話」と言ってメグの方を向くと、「太郎のことですが」と語り始めた。
どことなく悲しげだ。「あれはいっとき、私たち女姉妹が得た鐘を、欲しがって欲しがって、仕方なかったの」
「本当ですか」初耳だったのでメグは驚いた。「でも……」
「そう。いずれ父上の歌う鐘は、太郎の所有になるはずでしたからね。私も辰もあなたもそれぞれ守り手たる鐘を受け継ぎ、神事をこなし、そのための領地もあちこちに持っています。確かにあれよりは自由だったし、旅に出たり趣味に時間を費やし、文句も言われませんでした。しかしそれは、すべて太郎が父上を嗣ぎ、国を継ぐことの代わりのようなものです。私たちが祈りを継ぐために、さまざまな見聞や訓練は欠かせませんし」
メグはだまってうなずいた。
「けれど、あれはわたしたち姉妹を羨み兎、辰、未の鐘をほしがりました。あなたはまだ幼くわからなかったでしょうけど、一度など灘の方様をたいそう困らせたこともあったのですよ。双樹の国に伝わる伝説や、わたくしの亡き母の里に伝わるおとぎ話を鵜呑みにして、魔法を習わせろとね」
「魔法、をですか……」
「ええ。歳とともに落ち着いたと思っていましたが、我が娘にまでこんなことを吹き込んでいるとはね。例の堀内豪胆斎に興味を抱き、調べさせていたこともあったようね」
「えっ、それはあまり趣味がよくないように思います」
「わたしもそう思います。太郎については、無事であることを願ってやみません。ですがときどき、あれがそのまま参州の盟主になるのはいかがなものか、などと余計なことを考えたりもするのですよ」そう言って美良野の方は、
「この話はこれぐらいにしましょう。そうそう彩芽」
「はあーい、はい」
「鐘が、どんなことができるかを知りたいのですね。では、たまには見せましょう」
その場にいた群臣も、多くが驚いた顔になった。
「これは妖術師の使うべきものではありません。個人の願いを叶えるのではなく、大勢の心を安らげるためのものですから。しかし」
彼女は眼を瞑り、宙に向けて何かを唱えると、開目して安置された自らの鐘にそっと手を触れ、なでるような仕草をした。そしてまた、眼を瞑って天に向かって低い声で歌った。姉のこんな姿を見るのは、メグにとっても実に久しぶりだ。
次第に、彼女の声に導かれるように、鐘の音というより草原を渡る風のような音が周囲に広がった。それはだんだん優しく感じられ、春を迎えたような穏やかな気分をそこに居合わせた人々に与えた。屋内なのに広い花の園にいるような感覚。そして、
「おおっ」窓の近くにいた人々が歓声を上げた。さっきまで晴れていた空に、いつのまにか白い雲がかかって、柔らかな雨がかさかさと音を立てて庭園を埋めた草花を濡らしていたからだ。祭壇の周囲にどよめきが広がった。強面の警備兵が、口を開けたまま空を見上げている。このところ空気が乾いていたらしく、白い花が濡れたさまが実に瑞々しく感じられた。
「お母様、すてき……」彩芽は感激したような声を出し、流星も眼を丸くしている。ストヴェですら、驚きを隠せない表情をしていた。いや、彼女が一番驚いている。
人間の心や体に干渉する妖術はめずらしくもない。だが、目眩しならともかく、何の準備も道具や材料もなく、いきなり自然に影響を及ぼす術というのは極めて難しいことを本職である彼女はよくわかっているのだ。
「雨が降りましたか。久しぶりね」美良野の方自身、雨が降ったのをやや奇異と感じているようだ。
「お、おば上」「はいはい、なんです」いきなり素っ頓狂な声がメグに問いかけた。彩芽だった。「おば上は、雨を降らせたりはできるのですか?ねえ、できるなら是非やってみてください」
「それがねえ、ぜんぜんできないの」
「ええー、そうなんだ」
「叔母上の、ご謙遜ではないのか」おずおずと流星が尋ねた。
「いいえ、残念ながら。わたしにできるのは、雨が多すぎないよう、少なすぎないよう、お祈りをするだけ。こんなすごいことは真似ごとすらできません」
「念のために言っておくと」術を終えた美良野の方は言った。「わたしも雨乞いをしたつもりはありません。おそらく、このところ空が乾いていて、水気が足りないと天が思われたためでしょう。これ彩芽」
「はい」
「お前がもし、このようなことを為したいのなら、今のようにわがままばかりではなりません。これは、天と人に対し、素直に感謝する気持ちを持ち続けることが可能にしているのですからね」
「……はい」
メグは姉の口ぶりに感心していた。彼女の知っていた姉は、さまざまな面で抜群の能力を示しはしたが、圭角があった。彼女の追求する理想を分からず、従わぬ人間に対しいつもいらいらしていた。それが今日は、機転まできかせて娘に優しく道を説いている。子供を持ったせいか、それとも一国を支える存在としての自覚が彼女を成長させたのか。
とにかくメグは、鐘を鳴らしたり雨を降らせたりするより、姉の見せた成熟した大人の言動に、感じ入ってしまった。
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