第63話 夏休みその二

 想美は黄昏ていた。

 黒く誇らしげな瞳から短い黒髪が光り輝く。

 

 想美は何か考え事をしているのか俺が隣に座ってもどこかを向いて上の空だ。


 俺はそんな想美に二つ返事で話しかけた。


「どうしたんだこんなところで?」


「いたんだ……どうして?」


「ちょっと気になってな」


「そうなんだ……私の居場所はここにあるのかなって……」


「お前はもう俺たちの仲間だろ? 水臭いな」


「まだ日が浅いけど……」


「そんなの関係ないな」


 海はどんよりとしているが静かで青々と凛としている。

 空はまだ暗く冷やりとした感覚に襲われる。

 今は季節は夏だが海の冷たさは誰よりもわかるだろう。

 矛盾のある世界で私は一人ぼっちだった。

 忘れられないことがある。

 でもそれは君一人の器では測りきれない。

 約束を守れないのは貴方だけではない。

 執念を燃やして世界を一人の力だけで乗り越えて見せようと思う貴方は全てを取り戻したい。


 私は何をしたいんだろう。

 この世界では何を目指す?


 家の仕来りなんてとうの昔に期限切れだ。

 だから立派な魔術師になるのはごめんだ。

 でも魔術師になって世界を変革したいと言う望みもある。

 だから私は魔術師になりて探索者になった。


 想美はこうなりたいと願う自分を捨てようとしていた。

 そしてただの一人遊びをしていたいと考えていた。


 拓朗はそんな想美の子供じみた生き方を変えようとしていた。


 だからそんな想美を旅行に誘ったのだ。


 拓朗はこんな暗い状況を打倒しようとした。

 想美の手を引く。


「ちょっと海で遊ぼうぜ!」


「ちょちょっと……なんだよいきなり……私はあんたなんかまだ信用してないんだからな」


「いいじゃねえか!! ほらほら水が気持ちいいぜ」


 俺は想美の頭のもやもやを知らない。

 だが想美が何かに悩まされているのはわかる。

 だから俺は俺なりのやり方でやってやる。


 そしてそのまま宿に戻った。


 

 朝になるとみんな朝ごはんを食べて、ちょっと休んで、みんなで海に出かけた。

 

 そんな時に俺は浜辺で休憩していた。

 なんだろう気分が悪い、少し休憩だ。

 寝不足からか少し浜辺で寝ることに。

 ビーチパラソルの下で優雅に昼寝と言うところだ。


「大丈夫かご主人」


「大丈夫ですか主」


「大丈夫なのか拓朗」


 マリンにアルマにアグニスが話しかけてくる。


「こういう時は飯に限る」


「さっき食べただろ」


「じゃあおやつですね」


 五月蠅い奴らだ腹も特に減ってないよ。


「拓朗水鉄砲だよ~~」


「気分が悪いのか? 拓朗はしょうがないな~」


 スランとマイカが話しかけてきた。


 そういえばスランとマイカの良い経験を積ますためにこの海に来たのだった。

 マリンとアルマとアグニスもレベルアップをして貰わないといけない。

 

 スランも強くなったとはいえ、まだまだ弱い。

 この前エビルマージスライムモードという変色技を覚えさせたが、まだ使いこなせてない。

 マイカはかなりポテンシャルがある。

 人間状態での戦闘方法も学ばしている。

 基本的に魔法と体術を使わしている。

 体術は俺も我流なのでアグニスとかに教えてもらっている。


 アグニスはなんだかんだ言って剣術のスペシャリストで体術も上手い。

 

 リスティでもいいがまあ彼女も未熟だろ。

 魔王とか言ってるがまだポテンシャルが発展途上だ。

 どこがとは言わないがそこも発展途上だと思われる。


 とにかくだ! 少し元気が出た。


 俺は飯を食べて、海岸線上に出かけた。




 見つけた。


 天然のダンジョンだ。

 スランがなにこれ~とか言ってる。

 マイカも拓朗はこういうことも得意かしらね~とか言ってる。


 マリンがご主人はこういうことも出来るんだねとか言ってる。

 

 とにかく離れ小島に水面スケートで来たが地下に潜るタイプのダンジョンを見つけるとは思わなかった。


 こっそり攻略するとしますか。


 中は洞窟のように暗いが圧迫感は無く広いようだ。

 階層は無く中は縦横無尽に広がっている。

 しかし水たまりのように生い茂っている海のような水面から何かを匂わせる空気を感じる。


 すると水面から魚のようなものが飛び出した。


「デビルフィッシュだ!!」


 アグニスが叫ぶ。

 

 直ぐに戦闘態勢に移る俺達はデビルフィッシュを撃退しようとする。


 デビルフィッシュは空中を彷徨う魚型のモンスターだ。

 鋭利な牙を持つ魚型モンスターだがそれでも手ごわい相手のようだ。


 アグニスが棘色の闘気を籠めて剣を握る。

 緋色の楔を刃に乗せて瞬撃の歩行に移る。

 集団のデビルフィッシュを一瞬のうちに斬り伏せる。

 一体こちらに来た。

 アルマゲルが魔本を召喚する。

 そして一言。

「獄焔(ヘルバァスト)」


 小さいが獄炎の焔が悪魔の魚を焼く。

 アルマゲルはキリッとした小顔で笑みを浮かべる。


「大したことないな……」


「油断するなよ」


「主、私を侮っているな」


 その後、デビルフィッシュばかり出る中、金剛亀が現れた。


 回転しつつ体当たりを仕掛けてくる。


「マリン!! ここはお前がやれ!!」


「承知!! ご主人!! てやぁーーーーーー!!!」


 マリンが極大の水魔法を放つ。

 水雷斬魔帝円真だ。


 とにかく強力な魔法だ。

 マリンの水魔法だけは本当にむちゃくちゃだ。

 なぜか大爆発を起こす。

 水なのに。

 そして水魔法しか使えないのに応用力がある。

 水で龍を作ったりするしなんだこいつ。

 マリンは可愛くて強い奴だからいい奴だ。

 


 マイカが人間形体でヒットアンドウェイな戦法を取っている。

 蹴りばかりつかうなこの娘。

 キックキックキック。

 パンチも使う。

 スライムらしく粘性な形態で有りえない状態で蹴りを喰らわす。

 女王魔法で女王クール狂女王とかいう魔法でクールになればなるほど魔力が上がり肉体能力が上がる魔法らしい。

 

 とまあそんな感じで……スランはいつも通り酸砲撃を撃ちまくってモンスターたちを溶かしてるぞ。


 そんな感じで最奥まで来た。

 

 湖だな。


 なんか巨大なものの気配を感じる。

 来るぞ……いったい何が来るんだ!?

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